根回しからの。家族になろうよ。
さて。私はアンちゃんに連れられて王宮の菜園にきていた。
この中で働くひとはほとんどがお庭番なんだという。
「顔合わせをしておきたいのヨ。若い子たちとね。
暇な時、食堂でご飯食べさせてやりたいし、
あとは、警備もかねてね?何人か離れに住み込ませるつもりよ、いいかしら。」
「あっ、はい。世話はしなくていいのよね?」
「モチのロンよう!食事だって王妃様たちが来ないとき、時々でいいのよっ!
逆に使ってやってちょうだいな!」
モチのロン。王妃様の口癖うつってるね。
そこに、わらわらゾロゾロと忍びたちが出てきた。
「レイカ姉さんですか。おっす、宜しくっす!」
「本当に実在したんですね、このバーサーカーの相手なんて。」
「結構可愛いじゃないですか。どうやって騙したんですか。」
スパコーン!
アンちゃんが頭を叩いていく。
全部で男女合わせて10人くらいだ。みんな10代後半だ。
軽口を叩きながらもアンちゃんを見る目は時々恐れがある。
みんな声をそろえて、
「「「よろしくお願いします!!!」」」
良い挨拶だ。
「アッ、ハイこちらそこ宜しくね。」
するとそこへ、
「おや、コレがアンディの連れ合いかね。」
ヒゲを蓄えて髪も伸ばしたモサモサした人が現れた。
「アルバートさん♡
そうなの。籍はまだいれてないけど。きゃっ♡」
この人はお庭番ではなく本職で野菜を育てているのだという。
「私は元々風来坊でね。ここ何年かはここに世話になってるよ。」
風来坊。モロボシ・ダ○っすか。
その後、ランド兄さんのところへ行った。
第三騎士団の詰所だ。
「邪魔するわヨ!」
いきなりドアをあけるアンちゃん。
「あ、アンディ殿っ!?」
皆に緊張が走る。そうか、アンちゃんは伝説の人だった。
「オマエは平気な顔をしていたけどな、ヤー・シチさん達と一緒でなかなか言葉を交わせない人なんだ!
こないだは第一と第二が多忙だったからエリーフラワー様のところにいったけど、我々第三騎士団では
ふつうお呼びがかからなくて行けないんだよ。」
と、2番目のランド兄が言っていた。
その、ランド兄が目の前で固まっている。
「あら、お久しぶりね?ランドさん?」
「はいいいいい。まったくもってその通りでござんす。」
また、言葉が変になってるよ。
「ちょっと、この子借りるわね?いいね、第三騎士団隊長?」
「もちろんです!!このランドが役に立つなら、擦りきれるまでお使い下さいっ!」
何をだ。
「ここね。」
アンちゃんからお城の騎士団本部第一会議室に連れていかれた。
「こっち来たの初めて。」
「あ、同じでござるでござる。」
「もう、お待ちです。」
え?侍従長。なんでここに?
「アンディです。入ります。ランド・モルドールさんとレイカ嬢をお連れしました。」
「やあ、すまないね。」
アラン王太子様だった。
隣にヤー・シチ夫妻もいる。
和やかな雰囲気だ。
「我が国の若鷹様にご挨拶申し上げます。」
もうあれから、若鷹でいいよ、と言ってもらえたのだ。ラッキー!
「お、同じく、も、申し上げます。」
ランド兄は土下座した。
あ。私は、腰を折っただけだった。
マズイかな。
アンちゃんはニコニコしてるから、ま、いいか。
「皆、かけてくれ。お忍びだから気をつかうな。
何、今日は我が側近のアンディと妹さんの婚儀についてだがね。」
え?、えええ?
「まず身内である兄ぎみに許可をとね。親代わりという感じでだな。
そちらのご領地はちょっと遠いから。」
昔私が通学してたときは王都の別邸に母といたけど。
今、みんな領地に引っ込んでるのよ。
(ランド兄は兵舎に住んでる)
王太子様がウチに来たらパニックですう。
「私たちはOKですので。」
それでヤー・シチ夫妻がいたのか。
「は、はい!ももももちろんでございます!」
「それでは、そちらのご両親には話を通しておいてくれ。では。」
風のように去っていった。
なんだったの。今の。
「あら、ランドさん、腰がぬけちゃったの?」
「すみません、何がなんだか?夢??ねえ、何??」
「脅かしてすみませんね。貴族のお嬢様とウチのアンディだと反対されるんじゃないか、と、アランさまが気をつかってくださったの。」
オー・ギンさん。
問題はそこではないと思うのよ。
「ごめんねえ。アラン様の空き時間にあわせたから。まだプロポーズもしてなかったのに。」
そう、それよ!なんかあちこち顔つなぎしてたけど、まず、それよね。
「この馬鹿たれっ!!」
ヤー・シチ夫妻にゲンコツをくらう、アンちゃん。
これか、オー・ギンさんが何か言ってませんでしたかってやつか。
「だってえ。最近色々あって。エラ姫の警護とか、セバスチャンの騒動とか。」
「あ、そうか。おまえセバスチャンさんとはどうなったんだ。」
わあ、一連の騒動を知らんのか。
そして何でここでその爆弾を落とすんだ。
「それは何ですか?ランドさん?」
ひい。オネエ言葉封印だ。
「私とレイカに会いにきて、私をお兄さん呼ばわりして、公開プロポーズ。
…あ、レイカはキッパリバッサリ断ってました、よ、」
アンちゃんから、漂う殺気に震え始めるランド兄。
「アイツ、お兄さんにまで根回しを。」
おや、お兄さん呼ばわりになったようだ。
キッ!とこちらを向き直るアンちゃん。
「お嬢!いや、レイカさん!」
「はい!」
「結婚しましょう!」
「アッ、ハイ。」
どっとはらい。
または、とっぺんはらりのぷう、っことで。
ホント。結婚は勢いが必要だよね。