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閑話 バレンタインも楽しいもので

「ウヌが好きなの受け取れぃ!」「貴様そこまで我の事をっ」と、チョコを異性なり同性なりに送り付ける喧嘩祭り。

いわゆるバレンタインデー。

ひゅぅ、リア充どもはまたもやゲームに入っても来ないぜフーハハハァ。

今晩はお楽しみなんですねチョコレートプレイ?

遊びなれた友人から「それ系」ローションとかもあるって聞いた気がするなぁ何その泥んこプレイ?

・・・ふぅ。


「そんなわけで、カカオ99%を自作して齧りつつゲームをしているのであった、まる」

独り言を垂れ流しながら、ゲーム内ではチャカチャカと冷えた大理石の上でチョコレートを練るメリウ。


99%めっ、市場から消えてなければこんな苦労はっ・・・いや、地味に海外メーカーとかなら作ってるらしいんだけどね。

ぶっちゃけると高いので、市販の手作りセットで糞不味いカカオ塊を作成したわけだ。

口寂しい時にカリコリやるのが最高、超不味い。

不味い不味い言いながら煙草を吸う連中の気持ちが分かるような気がしなくもない。


「メリっち、うーっす。 って、今日は何作ってんの」

上半身裸で汗だく。

木刀を肩に担いだ侍組リーダーが、ゲーム内でチョコ練ってる自分に声をかけてきた。

うっわ、臭いはしないけど汗クサッ!


「リア充どもも入ってこないし、暇つぶしにチョコ系調理練習してたらついにテンパリングを極めてしまった・・・」

ザッハトルテの高品質品がザクザクできて面白くなってるのさ、と続けるメリウ。

みれば簡易作業台の後ろに置かれた大テーブルの上に、黒塗りのホールケーキがみっちりと。

みちっ、みちっ。


「なぁ、同じデザインのシンプルなモノが大量にあるって光景さ・・・地味に気持ち悪くねぇ?」

「さっきから自分が後ろ振り返ってないのが答えだろう・・・」

リーダーの質問にメリウが嫌々答える。

なんだかんだでグロいもの事件から成長の見られないメリウであった。


「でも、ゲーム内とはいえ食べ物を粗末にするのはいけない。 と、言うわけで・・・ちょいと手伝え」

余りに絵ズラが臭うので<洗濯>魔法でリーダーを消臭除菌。

ちっ、本体は滅菌できなかったか、ボソリとメリウが呟き。


「菌呼ばわりとか・・・。 まぁ、日課の訓練終わったし良いけどよ」

基本付き合いのいい男であるリーダーが、二つ返事で引き受けてくれた。

うっし、箱詰め要因ゲットだ、と小さくガッツポーズなメリウ。


そんなこんなで。

結構な量のチョコレートケーキを。

男二人がチマチマと箱詰めする光景が、しばし世界の目を汚した。




<塔>で繰り広げられる「これ・・・受け取ってください!」「えっ、お、おれに!?」なシチュエーション共。

周囲から「チッ」「チッ」「チッ」「あー、あの娘中身野郎」「おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」「おめでとさん!」「男の娘! そういうのもあるのかウェヘヘ」・・・清々しいまでの非モテ共め。

そんなイベント時通常運転の町並みに。

ガララッと響く、木製車輪の轍音。


「作りすぎた・・・食べてくだしあ・・・」

満面の笑みで、しかし声に元気なく。

目についた端から道行く人にチョコレートケーキ入りの箱を押しつけて回るメリウ・・・というよりおメ子さん。

フランク屋の時に使ったエプロン一枚姿なので、絵面はエロぅぃ。

箱詰めの際にシンプルチョコケーキブラクラを喰らったので元気がないのは、まぁそのうち治るだろう。

で、この困ったおメ子さん。

老若男女区別なく。

ただひたすらに、作っちゃったチョコケーキを押しつけ続ける。

あ、ちなみに箱には「お食べ下さい。 粗末にしたらロストするまで触手に襲われます」と書いてあったりする・・・恐怖。

「え、あ」「あ、いつもどうも」「・・・ふぅ。」「ふぅ。」「ふぅ。」「あ、メリっさんもうちょっと生クリーム増量してくだしあ」

にこやかに客のリクエストにこたえつつ。

・・・ちと痴ロリンを甘やかしすぎたか、と思ったりもするが。

チョコケーキ満載の大八車は、リーダー牽引のもと<塔>を縦横無尽に駆け抜けるのだった。


「いやぁ、配った配った」

大八車が空になるまで、リーダーは走り続けた。

途中からなんだか楽しくなってしまったあたり、根っからの体育会系なのかもしれぬ。

荷物を揺らさぬ鋭角ドリフトが安定してきた辺りで、ヒュゥー、とメリウが口笛吹くのもやむなしか。


「おつかれさまー、結構長い時間かかっちゃったね」

付きあわせてすまなかったー、とおメ子さん土下座。


「ちょ、やめてっ!? 具体的に言うと御胸の谷間チラとかがエロ過ぎるのでっ」

「見せてんのよ」

「素で狂ってんじゃねぇ」

「ハイレベル紳士は土下座時自分の背後から視姦するぞ?」

「お巡りさんそいつ埋めようぜ!」

わいぎゃい。

とまぁ、野郎二人で騒いでいると。


「あああ、まにあわなかったぁぁぁあ」

ずざざざざざぁぁぁ、と、石畳を削ぐ勢いで足ブレーキを仕掛けた女一人。

泥と煤に汚れた前掛けをそのままに。

メリウとリーダーの前をわずかに行き過ぎて、止まる。


「あ、焼き物さんチーッス」

「姐さんチーッス」

<塔>の名物クラフターの一角「焼き物のお姉さん」。

あっれ、初対面の時はこんなじゃなかったような・・・と、遠い目をするメリウ。

朱に交われば赤くなる。


「じゃぁね、おつかれさま・・・」

すっごくガッカリした様子で。

登場即時退場しようとする焼き物さん・・・ってまてや。


「いやいやいやいや、結局何しに来たのよ姐さん」

リーダーが慌てて制止。

よしそこだ、事故と言って脇の下からこう、ガっと!


「ガッと・・・なに?」

羽交い絞め的に退場を邪魔された焼き物さんが、胡乱な目でメリウを睨めつけ。

即時「おπ揉め!」と答えるメリウも、流石にブレない。


「・・・おふぅ。 ワタシ コンナトコロデ モマレチャウノネ」

「揉まないから安心してやー」

「何故揉まぬ!」

「何故キレる!」

実は安定のリーダー弄りであった。


「「いえーい! テンプレー!」」

「お前ら物作り共って仲良過ぎねぇ?」

キャッキャとハイタッチするメリウと焼き物さんを半目で見つつ、リーダーがため息。


「で、焼き物さんってば・・・欲しいのはこれ?」

愉快時空につながっていると噂の<無限袋>から、にゅっと出した黒い物体。

それは、カカオを原料に作成される・・・


「やたー! 窯に引きこもってたら無差別チョコケーキ配付に気づかなかったのよー」

スッと手渡された、カカオ99%をおもむろに貪る焼き物のお姉さん。

コポゥ、と、変な音させて、焼き物さんの口から噴出するチョコレートブレス。

ああ、キャラクターの味覚耐性鍛えてないと、まずい物喰ったときこうなるんだったよねー。

エフッ、エフッとむせる焼き物さんのキャラクター。

地味に作り込まれてて、やけにリアル。

モーションの作り手のコダワリを感じさせる。

ハラショー。


その後、メリウは涙目の焼き物さんに無言でローキックされ続け。

骨の折れる乾いた音が響いた辺りで「あの、よかったら、これ・・・」と。

差し出したケーキ箱の御利益で。

何とか解放されたのだった。


「今日はこの位にしてやろう」

むふぅー、と満足げにその場で箱の中身を貪る焼き物さんが。

こぽぅ、と、再びカカオ99%を吹き出すのは、まぁ、テンプレと言う奴で。


零れたカカオ99%は、その後スタッフ(粘体)が美味しくいただきました。




ちなみに、おメ子印のザッハトルテ。

食べるとしばらくの時間キャラクターの御胸が膨れる愉快効果があったりしまして。(開発陣の正気を疑う。 良いぞもっとやれ)

後日、メリウは痴ロリン他数名に「チョコレートケーキ食べたいなぁ チラッ チラッ」とか絡まれる羽目になるのだが。

蛇足である。


繰り返しネタで弄ったお詫びにガッツリとケーキを贈った焼き物さんから「胸、大きくなりすぎて作業するのに邪魔なんだけど」とクレームがつくのも、また蛇足。


「チッ」(痴ロリン、他数名の持たざる者同盟・談)

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