強制終了は悲しいもので
キリよく50話エンドっ。 おお、すごい偶然。
ククク、計算どおりっ(偶然って言ったじゃねぇか)
その時、皆は思っていた。
ああ、次は地獄開拓編かなぁ、と。
地獄の生き残りを色々導け、的な種族開放クエストを完了させ。
ふふふ、明日実装されたらちょっと<悪魔喰い>さんで新キャラ作っちゃう? とか言いあってたその日。
いつものように、おつかれ、また明日、と手を振って別れたその場所に。
もう、戻れないとは。
流石に誰も予想していない事態だった。
おかしい。
帰宅後、飯風呂済ませてさぁゲームだ、とアイコンをダブルクリックしたのだが。
反応が、ない。
「ん? なんかウィルスでも踏んだかな?」
無反応というのは胡散臭かろう、と、ウィルスチェックを行う。
その間に俺は酒を買い出しに言ってきたりもした。
で、それも終わり、結果異常なし。
「んんん? なんぞこれ?」
ひとまずボイスチャットにログイン。
珍しく皆、居た。
早速自分のログインを確認したのか、会議通話に招待を受けた。
「おはろー」
「おつかれー」
「ばんわー」
「おいすー」
挨拶が流れる中、彼らの背後から聞こえてくるキータッチ音。
「で、現状は皆同じなんかね?」
クライアントすら無反応なんだけど、と俺が言うのを待っていたかの様に。
「うん、自分らもそう。 そして、どうやらそれは」
メリウが言いよどむように声をつまらせ。
「ゲームプレイヤー全員が、クライアントすら動かない状態だってさ」
掲示板やら知り合いへの連絡やらで纏めた情報がそれだ、と、シオンが引き継いで言い切った。
「って、何があった? ゲームの公式HPとかはどうなってんの?」
俺はひとまずゲームの公式HPへアクセス。
404・・・接続失敗・・・検索にもかからない・・・キャッシュすら、ない・・・!?
なんだこれ?
「どういうことだろ? これ・・・」
メンツ全員に、ピコッとチャット送信するメリウ。
どこかのニュースまとめサイトのアドレスのようで、皆が開くとそこには。
「ビル一つ、消失?」
昨日まであったそこそこの大きさを持つビルが、いつのまにやら消えていた、というニュースであった。
しかもその場に残された空き地には、草がうっそうと生い茂り。
まるで。
「まるでそんなビルなんか最初からなかったかのようだ、と」
オカルトですねぇ、と。
ジオが何気なくそのビルの所在地を目にし。
目を、剥いた。
「おいおいおいおい、ここの住所‥‥‥」
シオンも気づいたようで。
「んー、なんぞー」
俺だけが、取り残された。
なんだっての、そんな関係ないビルが消えたって・・・あ。
関係、ある、のか?
住所・・・ああ。
そういう、ことか。
ぶるっと、背筋になにか冷たいものが走った気が、した。
その寒気の正体は。
ああ、本当にオカルトだな、というのを口にして形にするようにシオンが言った。
「ゲーム運営の住所、そこだったよね」
それからしばらくは、そのオカルト話が持て囃されもしたが。
人の話題持続性などたかが知れたもので。
年月で言うなら1年もたずに。
この話題は、風化した。
マニアックなゲームが、会社ともども消失した。
それだけの、話し。
数年ほどもこのゲームにのめり込んだ、プレイヤー当人たち以外にとっては。
と、いっても。
精度の高い情報収集など望むべくもなく。
せいぜいが知り合いPC達とオンライン・オフラインで意見交換する、程度のもので収まってしまい。
気がつけば、一人、また一人と、そんな集会から離脱していった。
こうして、ありえない事件は、ああ、不思議だね、で方付いてしまう形で。
世間に取り残されること1年ほど。
ゲーム消失から2年ほどで、PC達による事実探索は瓦解した。
こうして、こんなこともあるんだねぇ、と言った感のオカルト話として忘れ去られ。
それぞれは新しいゲームなり趣味なりを見つけ。
気がつけば、忘れていた。
夢中になったゲームがあったこと。
自分の分身を育てて、仲間内で自慢し合ったこと。
また明日、と、再会を誓った場所があったこと。
全部。
そんなこんなで、俺達は。
適当に探した、適当なゲームを。
適当に楽しむことで、日常の暇つぶしと、した。
だけど不思議と、MMOだけはしなかった。
なぜかは、忘れてしまった。
何か、あった気もした。
楽しさをかみしめて、色々はっちゃけた記憶は、ある。
でも。
なぜか。
まるで、何かに思い出すのを邪魔されているかの如く。
楽しかったはずのゲームの名前すら、思い出せなくなっていった。
言いようのない悲しさが、胸を刺す。
しかしそれも、いつしか消えて。
日常生活の雑多さに、かき消されていった。
そして、そんな俺達が数年後。
珍しく揃ってカラオケなんぞをやった帰り。
オカルトに巻き込まれるハメになるとは思わなかった訳で。
→異世界っぽいもの(仮)へ、続くっ!
世は、理不尽に満ちてるな、と。
「色々あった俺達」は、振り返って思うわけでして。
「何やってるん、レザード?」
メリウが謎金属棒片手に生徒たちを追いかけつつ、声をかけてきた。
木漏れ日の淡い、暖かな午後。
俺は手にしたメモ帳を胸ポケットにしまい込んで。
「昔のことを、思い出してただけさ」
色々あって、今があるんだよなぁ、と。
そんな感傷にふけった俺に、メリウはニヤリと笑って。
「まぁ、お爺さんったら。 お昼はもう食べましたよ?」
メリウが笑って走り去る。
うるせぇボケてねぇよ!
あと貴様も同い年だろうがこの中身ジジイめ。
遠くから「げぇ、先生復帰速いよ!」「もう少し、その、手心を、と言うか」「痛くなけりゃ覚えないだろお前ら?」「痛くしてやる・・・と。 フヒヒ、いただきっ」「おいそこの粛女?」・・・色々騒がしいのが聞こえてきたが。
「なべて世は事もなし、だ」
受け持ち授業もない本日午後。
俺はその場で横になって。
寝てしまうことに、した。
そんなこんなで。
ひとまずこれにて。
ネトゲっぽいもの(仮)終了っ。
長らく駄文に付き合って頂いた皆様に、感謝を。
ではでは「おつかれさまでしたっ」 ノシ
p.s.
後は不定期・時系列無視等で、追加話がある・・・かもしれませぬので「完結」はしませぬ。 ではっ