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手当たり次第も楽しいもので 3

町の入口付近は、地味に死亡者が多い戦場である。

イベントで町が焼かれている、というわけでなく、クエスト帰りの瀕死キャラが戻る早々力尽きるという世紀末っぷりが、日常茶飯である。

長いクエストなどなら今晩一晩村長の家で休んでいってください・・・的なものもあるのだが。


余談だが、無駄に広大なマップと無駄に凝ったフラグで展開する多岐に渡るクエストのせいか、下手な製品版よりプレイ人数が多いであろうベータテスター達は世界に分散していた。

スタート地点も多地域多数、国の首都などを除けば、ひとつの街に常駐するパーティが10組に満たないというのも珍しくない。

シオン率いる<いつものメンツ>が現在拠点としている町は、大体15パーティ程の人員が常駐している。

1パーティ4~6人程度、ソロプレイヤーなども含めれば7~80名ほどが、袖摺り合う面々である。

このゲームにおいて平均未満程度の町。

それが現状である。


では、話を戻す。

そんな町の入口は、現在死にかけの怪我人で溢れていた。

ここ数日、全体的に簡易な敵を相手とするクエストが減ってきているため、今までの「先制攻撃出来ればそれほど被害を出さずに勝てる」という流れが覆されてきているのだ。

クエストを受けてみれば見たことのない強敵や対応不可能な大群との遭遇。

なんとか逃げ切るも、回復役が殺られていたり、そもそも回復手段を持たずにゴリ押していたので応急手当スキルも無く出血などの継続ダメージで終わるプレイヤーも居るようだ。

そんな、なんとか帰りついたプレイヤーを死なせないようにしたい、と、町に集った自称癒し系たちが立ち上がった。

称して、辻ヒール友の会。

活動は暇なときに入口に待機し、死にかけのPCを見かけたら即時魔法や医療スキルで死なない程度に癒す事。

合言葉は、


「イキロ」


で、長々と説明してきて何が言いたいのかといえば。

集合待ちで暇を持て余してしまったジオとメリウが、回復魔法修行を兼ねて辻ヒール友の会活動をしてるよーってことだ。


「イキロ」

親指を、にゅっと上へ。 ←ここまでマクロ


辻ヒールを開始して30分、すでに10人程度の死にかけを、ミイラの成り損ない程度に癒している二人がいた。

魔法の素養的に回復魔法である白魔法にプラスを持つジオとメリウである。

辻ヒール現在、MP消費を抑えて多人数に処置をする、という魔法設定オプションにしているので、無条件で魔法威力が上がる素養が心底ありがたい。

素養なしの場合、回復魔法の振り幅の関係で成功しても回復数値0ということは稀に良くあるのだ。(byブ□ントさん)


「今日も大漁ですな~」

先ほどの決定成功で魔法のレベルをあげることに成功したパーティの癒し系坊さん、ジオがホクホク顔でメリウに話しかける。


「そだねー」

最下級の回復魔法修行中なメリウが、適当に相づちを打つ。

現在その回復魔法レベルが3。

限界レベル6まで、まだまだ遠い。

横に広く育とうキャンペーンの一環として、素養補正のおかげで最大値が出てくれればPCの三割程度のHP回復が約束されるのが大きかったためジオに師匠になってもらい、修行期間ポイント1を使って覚えたのだ。


「早く範囲回復魔法とか覚えたいものですなー」


「ああ、あれば便利だよねー。 でもどう考えてもβテストの期間じゃ無理なんですががが」


「だねー、そもそもウチの神様じゃ覚えられもしないですし」


「あー、そっちは遠い未来に自分が何とかする方向で行くよー。 なんで、坊さんは是非ともこの前の白い手魔法の上位互換を覚えてこっちに流してくだされ」


ニヤリ、と、お互いがイイ顔をする。

まぁ、現状だと製品版にキャラクターを引き継げるかどうかも分かってないのですがねー。

夢は見たいじゃないですか、ねぇ?

そんなこんなの未来への妄想は、新たに現れた血まみれパーティからの


「ヘルプ」


の、言葉に中断される。

うなづき合い、二人は詠唱開始。


「「イキロ」」

にゅっ




「ああ、そういえばどうでもいいことなんだが・・・イケメンズ全滅したらしいねー」

辻ヒール組が一息ついた辺りで揃ったいつものメンツ、出会い頭にレザードがそんなことを言い出した。

掲示板で愉快に活躍していた特種外見持ち、イケメンズ。

その名称からもわかるように、救いようのないバカどもである。 ←褒め言葉

活動内容はメンバー確保及びナンパ。

斜め下アイドルとして、それなりの人気者だった。

かくいうレザードも特種外見持ちのため、いつエンカウントして勧誘されるかガクブルしていたようだが。


「はて、連中って戦わずにアイドル(笑)してたんじゃなかったっけ?」

ボリボリとハッピーターンかじりつつ、シオン。

今日は先日の報酬を分配したら即落ちるそうな。


「PK・・・でもされたんですかな?」

小首をかしげつつ、ジオ。

巨体の小首かしげって、かわいくな・・・・い・・・・。


「んーにゃ、なんかファン(笑)から遺跡の地図とやら貰って、戦闘スキル無しで挑んだらしい。 で、取り巻きともども結構な人数だったんで調子こいて致命フラグ立ててヘラヘラ遊んでたらしいんだわ。 で、下らないことで致命失敗しちゃったらしくて、すんごいのが来ちゃったらしい。 なんてーか、メリウが襲われた熊みたいなの十数匹」


「チャ、チャランボ食らったのか・・・しかも集団。 そりゃ死ねる」

ってか、なんでこのゲームコミカルにガチ殺しに来るんだろう。

他の勇者たち(自分でフラグ立てたおバカ及びバグの被害者達)の報告だと、致命失敗の執行者は、熊の他にも王道の竜とか一つ目巨人、果てはなんか生物兵器っぽいものまで多岐にわたっているらしい。

逃げ切れないとほぼ全滅という酷さだ。

なんだこのゲーム。

ああ、今更過ぎる感想だけど。


「で、連中とその取り巻き全滅、酷すぎるんで生き返らせろーと運営に抗議」


「・・・はぁ」


「運営はガチスルー、完」


「なんとも香ばしい話だこと・・・いや、ゲームの方もひどいはひどいんだけどね?」

それにしたってフラグのオンオフは自己責任だしねぇ・・・バグの時は死んじゃったキャラ復活とかあったみたいだけど。


「中の人がお子様多くなったんだねぇ、最近特に思うわ」

深いため息混じりにシオン。

お気に入りだったゲームが、しばらくぶりに復帰してみれば初心者叩きと上から目線の押し付けルールを強要されてゲームが楽しめない空気にされていた、と前に言ってたねー。


「一応18禁なんだけどねぇ、このゲーム」

たまに、あからさまな小学生とかいるしなぁ・・・料理とかするなよ、夢に出るぞ!


「こういうのは、一概に歳では測れませんからね。 おこちゃまな大人なんて掃いて捨てるほどいますし」

頭脳は子供! 体は大人! ・・・只のダメな人だったよ・・・


「うん、俺が振っといてなんだけど、やめようこの話。 政治と宗教レベルのダメ話だった、ごめん」


「うい、自分も同意」


「そだね、さっさとこの前の山分けして今日は落ちよう」


「そうですな。 せっかくゲームで遊んでるのにダウナー入るのはもったいないですしな」


キチ○イに蓋、触れるな構うなというお話だったとさ。



さて始まりました、報酬争奪戦。

前回山賊に襲われた村を救え、という感じのクエストだったわけですが、パーティが着いたときには村は全滅、総勢10名の山賊を逃がすな!的な流れと相成りました。

一行は隠密で山賊集団に奇襲をかけ4人ほど間引くことに成功しますが、ここで二手からの追撃がかかり、単騎強そうなボスにはシオンが。

残りを他三人が、という形に落ち着きます。

で、各個撃破。

シオンはボスが持っていた魔法の剣を入手、他三人は山賊達から換金アイテムなどを剥いで入手。

後はクリア報酬としてNPC村長から渡されたいくつかの物品。

以上が、今回の報酬である。


「で、長ったらしくなったけど、金は等分で良いとして。 わちきはこの魔法剣貰っていいんだよね?」


「ういうい、それはシオンのものでしょう。 ウチらが貰っても金に変わって魔法とかスキルに化けますし」


「そそ、シオンぶっちゃけ自分らの決戦兵器なんだから、もっと尖ってもいいくらいだし」


「でもシオン引きいいよなー、魔法の物品2連続だよなー」


「うん、だから、ちーっと皆に悪いから、わちき今回は金と剣だけでってことで、残りは三人で分けてくれ~。 んじゃ、今日は落ちやす。 おやすみー」

シオン、ログアウト。


「ありゃ、早いな。 お疲れ様ー」


「おやすみー」


「おやすみなさいませー」



と、いうわけで、三人の前には報酬箱。

中身を確認、物品は6つ。

一つは刀・・・メリウが挙手。

一つは星型の手裏剣・・・投擲技能持ちのレザードが挙手。

一つは巻物・・・黒魔法の飛行、素養持ちのメリウが一応挙手。

一つは兜・・・ジオが挙手。

最後の二つは・・・見覚えのある、サイコロ。

全員が挙手。


「とりあえず、自分は刀とサイコロ、次点で魔法なんだけど・・・坊さんはたしか神様の魔法以外は覚えちゃ駄目なんだっけ?」


「そうですなー。 一応抜け道はあるみたいなんですが、現状は覚える気がありません」


「俺は魔法は要らないかなー、手裏剣は確保として、後はサイコロほしいな」


「ではウチは兜確保で、あとはサイコロ狙いですな・・・」


「ふむ、んじゃ自分はサイコロから降り。 刀と巻物もらうわさ」


<魔法の刀+2を手に入れた>

<黒魔法:飛行を手に入れた>



「了解、んじゃジオと俺でサイコロタイムだな。 よっと」


<魔法の手裏剣+2を手に入れた>

<能力上昇:器用+3>



「おお、ピンポイントで器用上昇とかラッキーですな・・・ホイッと」


<特殊クエストアイテム:妖精の兜を手に入れた>

<魔法の小手+2を手に入れた>



「なんというか・・・+1の物品スキップでいきなり+2だったねぇ・・・」


「そうですな・・・クエストのインフレが進みすぎたってことでしょうかね」


「ってことは、地味に生き残れて運が良かったってことか俺ら」


うへぇ、イキテテヨカッタ。


「さて、ジオが胡散臭いアイテム引き当てたみたいだし、次回集合の時はいよいよ死ぬのかなー」


「ちょっ」


「ひとまずは全員揃ってから、ですかね、これは・・・兜の説明文見るに、ちと根が深そうです」


「え、怖いなそれ・・・なんて書いてあんの・・・」


「ふふふ・・・それは次回のお楽しみ・・・では、落ちます ノシ」


「あ、おやすみーって逃げんなー」


「・・・俺も、寝とくわ。 おやすみー」


「うん、おつかれ・・・おやすみー」


辻ヒールに始まり、愚痴を経由の分配で本日終了。

お疲れさまでした。






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