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最終クエストも楽しいもので 3

時間経過で状況悪化という情報を手に入れたいつものメンツwith<塔>レイド。

すわ、これ以上変な状況になられてたまるか、とばかりに翌日即時行動開始。


「今度は中央国ねー、では現地集合」

前回と同じ轍を踏まぬために、チャットチャンネルで発言するレザード。

いつものメンツはすでに現地入り、城の門前で待機状態であった。


「結局、他の<希望>クリア者からも<繭>情報は在りませんでしたなぁ」

ジオが魔法の篭手+2、命名<プラズマガントレット>左右に内包されて輝く<繭>を見つつ言った。

長く使った武器はこの両腕、と、自分に<繭>を同化させようとして果たせなかった代替案がここにある。


「そもそも、ワチキらみたいに<希望>ハシゴしてる連中が居ないというだけなのかもしれんがなー」

普通はその地域根城にする連中とかが周囲集めてやる感じなんだろうしなぁ、と、シオン。


「そう考えると<繭>って複数個持つのは想定されてなかったりしてねー」

でも、それだったら「もう所持していますー」みたいなメッセージ出てたのはなんだろねー、と、メリウ。


「ん、ああ、あのメッセージな。 たしか二個目を拾おうとしたら出たのは・・・「この<繭>は、すでに所持しています」・・・とかだったぜ」

この、っていう言い回しが気になってて覚えてるんだけどね、と、レザードが応える。

その回答に、他三人が同様の反応を返した。

「「「この」」」

つまりは「コレではない<繭>」という物がある、ということ。


「「「ってことは、つまり・・・場所で<繭>の種類が違って。 最大五個まで持てるって意味か?」」」

同じ場所の<繭>は一つまでしか持てないが。

別の場所の<繭>なら別腹、というわけか。


「・・・でも結局、使い方分からないと集めても意味ないがなー」

盛り上がってきたァ、という感じのテンションに、レザードが水をさした。

ブーブー、夢がねぇぞぅ~、と、避難を浴びるが涼しい顔で口笛吹いてたりするぜこの格闘家と言う名の分身槍使い。


「まぁ、どうせ今回真っ先に<繭>つけた武器でデカイの殴りに行くわけですけどねぇ」

ただ単に属性ついて攻撃可能になる、程度の効果かもしれませんからね、と夢のないことを自分で言い出すジオ。


「一番有りそうで一番つまらないことを言いおったわ・・・」

昨夜から休日の貴重な睡眠時間をすり減らして延々と雷神剣をお手入れし続け、つい今しがた<繭>とくっつけたシオンが、あまりのロマンのなさに呻く。

そんなんだったらワチキは即時寝る、とまで言い出す始末。


「まままま、落ち着きー。 西のアレ天使も言ってたじゃん? なんちゃら装備の鍵になる、とか」

きっと何がしかのブツを召喚するみたいな感じになったりするんじゃない、と、自分の持つ<繭>2つ入り謎の棒状物体をコスっているメリウ。

先端の握りこぶし大の物体下部を指でつつき「まぁ、カリ高ですのねカリダカールラリー」とか言い出したので流石にレザードに即時粛清されてジオに<蘇生>されるいつも通りのテンプレ。


「なんというか、日常的に死んで生き返るってのを目の当たりにしてると感覚死んでくるな」

もはや感情も動かぬ様で、シオンは一瞥だけくれてそっぽを向き。

続々と集まってくるレイド面子に手を上げて会釈などを開始したりしている。


「ん、あと10分くらいでみんな揃いそうだね」

<塔>チャンネルを見て、みんな馬借りられたってさ、と伝えてくるレザードの声に、いつものメンツの表情も流石に引き締まり。


かくして、三箇所の<希望>クエスト、開始。




城の最深部を地下へ、地下へ。

見慣れた扉を前衛戦闘力重視メンツが開け、後衛に回復系集団が付く。

軋み一つなく開いた扉の向こう、相変わらずな地下空洞。

そして相変わらずな、相討ち天使&悪魔。

以上。


「・・・あっれ、今回は雑魚居ないんかね」

周囲を見回し、構えは解かずにレザードが呟いた。


「見た感じ、床面の亀裂もさほど広がっていませんね。 時折小型悪魔の赤い眼光っぽいのがちらつく程度で実害なさそうですな」

ある意味好都合、とばかりにズンズン前衛を追い抜いて中央部分に向けて歩き出すジオ。


「おいぃ、油断しすぎじゃね? ワチキも行くけどさ」

それを追ってシオンが走りだし。


「なぜ坊さんは全力でフラグを立てに行くのだろう」

それらを追ってメリウが<飛行>し。


「お前らっ・・・って、俺も行くか」

レザードも構えを解いて、駆け出した。


「アレ、走るの?」「おいおい、いきなり競争ですか・・・勝つのは俺だがなっ」「おおっと、私を忘れてもらっちゃ困るぜ?」「お前らが茶番やってる間に連中はもう着いたみたいだがな?」・・・<塔>の面子も平壌運転のようで。


何の障害もなく。

<塔>レイドは中央部へと歩を進めた。


<小さきものたちよ、よくぞここまでたどり着きました>


頭上から天使の声がした。

あっれ、案外余裕な口調かね・・・?


<現在私と、この悪魔は互いに互いを封印し合っている状態です。 このまま放置すれば私が動けぬ間に足元の世界・・・地獄から悪魔の群れが溢れ出す事でしょう>


そして天使が語りだす、昔々のお話。


はるか遠い過去。

人はあらたなる力・・・魔力を発見。

一人の研究者が力を求める余り暴走を起こし<悪魔>となり。

魂の力である魔力を食うため<悪魔>は世界の半分を飲み込み。

それに対抗するために、残された人々は自らを兵器化し<天使>となった。

戦えぬ者達を地獄と化した地上から隔離するため<天使>たちは空を覆いつくし。

今のこの大地が出来て、地獄は封じられた。

地獄では<悪魔>を筆頭に数体の大型悪魔に魔力を集結、今の大地・・・<蓋の世界>を貫く攻撃を開始。

貫かれ砕かれようとしていた<蓋の世界>を守るため<天使>達も力を集結、数体の大天使となって大型悪魔と相討ち。

そして<悪魔>自らが<蓋の世界>を破壊せんとしたそのタイミングで。

大天使たちに仕込まれていた機能が発動、東西南北中央の五点を結んだ世界規模の結界が発生し<悪魔>の完全侵攻を封じ込めるに至った・・・そうな。


<そして現在。 分身とは言え<悪魔>の侵入を許してしまい結界の崩壊が起こりました>


「ああ、イベント最後の・・・<人型悪魔>だったっけ。 いたいた」

そういえばそんなのも居たなぁ、と懐かしんで手を打つシオン。


「ふーむ、今までこんな説明ありましたっけ・・・?」

ジオが小首をかしげ。


「似たようなのはあったかもしれんけど、聞き流した気もする」

レザードがあくびを噛み殺して答え。

世界観なんて追いかけてないんじゃボケェー、というダメユーザーっぷりは彼だけでないが。


「そしてそもそも、北のは何度も失敗して時間経ってたし。 西のも放置して時間経過してたからね。 実際はあったんだろうけど聞きそびれてたってセンも」

あるんじゃないかね、と、メリウ。

ああ、それはありそうだ、と周囲もうなづき。

今回は珍しく、静かに話を聞こうということになった。


<来るべき<悪魔>との決戦に向けた準備をせねばなりません>

<そこで、小さきもの達・・・貴方がたにお願いがあるのです>

<私を封じているこの悪魔を振り払うための助力をお願いしたい>

<ただ、この悪魔に対抗するには特殊な力が必要となります>

<その力を授けるには、自分の分身と呼べる程身近な物品が必要です>

<もし、それらをお持ちでないなら。 今はまだこの悪魔を打ち倒すことは叶いません>


「ああ、そういう流れなんだね、やっぱ」

例外武器である<悪魔喰い十文字>を地面について一息つくレザード。

ふむ、ちゃんと早めに話聞いておけばどうにかなったのか、コレ。


「で、流れ的に準備ができたら<繭>もらって大天使の外の人分解、みんなで<繭>つけて大きい悪魔をグチャァ、っとしちゃえ、っていうクエストだったんだな」

なるほどなー、と、シオンが微動だにしない大型悪魔を見上げ。


「ふむ。 初見で回れ右したのが謎の発生原因、とは」

やるせませんなー、と、ジオ。

しかも、クエスト見つからなくても時間経過とかしたんじゃないか、という疑念も消えないし。


「結構鬼畜な埋め込みだよなぁ、このクエスト。 いまさらだけどね」

ゲーム的にマゾ、性質的に鬼畜かぁ、と、本当に今更ながらの呟きを漏らすメリウ。


<自分の分身たる物品をお持ちならば。 この<繭>をそれに重ねて・・・>


「おお、ついに<繭>の使用法が明らかに」

思わずその場に正座するメリウ。

周囲もザワめき出し「どうするよ、俺、ずっと使ってた剥ぎ取りナイフとかにくっつけちゃったんだが」「お前はまだいい、俺なんて装備しっぱなしですっかり忘れてたメリケンサックしか<繭>に合わなかったんだぜ・・・」「気に入らなかった焼き物割る用のハンマーだった私の席は?」「ワテは洒落でパンツにくるんで遊んどったら、くっついちゃって離れのぅなったんやが」「お前が・・・ナンバーワンだ・・・」うん、色々な人間模様だなぁ(棒読み)


<・・・その物品の名前を「叫んで」下さい。 きっと長く愛用する品には命名されていると思いますので>

<また<繭>の安全機構としまして、左手で<繭>と合わせた部分を撫でて起動状態にしないと名前を叫んでも反応しませんので、お気をつけて>


それが説明の最後だったのだろうか、大天使の(外の人の)羽だけが分解を始め、数十個ほどの<繭>となる。

クエストの流れとしては、コレを初めての<繭>として愛用品に合わせて。

VS大型悪魔へとなだれ込む、という流れなのか。


「んじゃひとまず<繭>拾おうか皆」

シオンの号令で、わらわらーっと<繭>の山へ皆が殺到。


かくして<塔>メンツは二つ目の。

いつものメンツは三つ目の<繭>、GETだぜー。




脳内に駆け巡る、覇王大系リュー○イト、パラディンクラスチェンジ時のBGM。

でっ↑でっ↓でー→  でっ↑でっ↓でー→  でっ↑でっ↓でー↑ ちゃららららららららららら~

メリウは早速三つ目の<繭>を<右曲りのダンディ>に吸わせると。

ナデェ、と、左手で先端突起物を撫で付ける。

今まで防御用として左手装備にしていたのが災いして、この簡単な行動を試していなかったのが悔やまれる。

撫で付けられた<右曲りのダンディ>の先端部から、ブワッと光が漏れ出す。

そして。

くぱぁ、とまるで皮がズルムケるがごとくに表面金属がシャフト方面に滑り落ち・・・まぁ卑猥カメさんこんにちは。

現れるのは平面に様々な模様を写す・・・ディスプレイ?


<繭:起動しますか?>


シンプルなメッセージが、点滅していた。

メリウは小さく頷いて。


さぁ叫べ!


「<右曲りのダンディ>!!!」


瞬間、劇的な変化が起きる。

<右曲りのダンディ>柄尻から針状の光が突き出て、あろうことか空中に突き刺さった。

変化はそれから目まぐるしく起き、突き刺された空間を中心に蜘蛛の巣のごとく周囲に舞い散る光の線、線、線。


「・・・ワイヤーフレーム・・・?」

ハリボテ内側の骨組み、とでも言えばわかりやすいか。

いつの間にか、自分の体が浮き上がっている。

目の前には<右曲りのダンディ>、周囲は狭い箱部屋の如き形状に変化し。


「コク・・・ピット?」

メリウは思わず呟き。

外から見ているレザードの呟きを確かめるように、光の線が形作る物を内側から見た。

それは、自分自身を腹のあたりに飲み込む巨大な人型。

体長は少なく見積もって5mを超える程度。

展開しきったワイヤフレームを追うように、足や手の爪先から外面が貼られ出していく。


<繭:天使外装 展開装着完了>


コクピット内、座るメリウの目の前に突き立つ操縦桿<右曲りのダンディ>。

握りの部分にあるディスプレイが、天使外装というロボットの展開終了を告げていた。


こうして、メリウを飲み込んだ光線の群れは。

白く輝く天使形状を模した、いうなれば大型ロボット? パワードスーツ?となり。

かなり高くなった視点から周囲を見下ろし、メリウは小首をかしげ。


「こんなん、でましたけどー」

おおおおおおおお、と湧く周囲の声に、中の人は苦笑するしか無かった。




そして、十数分後。

動けぬ悪魔の処理を終えた<塔>レイドは解散し。

おいおい、これ「ロボット物っぽいの」いけね? とか言いながら、いつものメンツはその場をあとにした。




と、言う訳で今回はここまでっ。

「「「「おつかれさまでしたっ」」」」

寒さ厳しくなっております今日この頃、空気の乾燥も鬼のように厳しいのでレッツ加湿加湿! ノシ


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