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最終クエストも楽しいもので 2

「ねぇ、君たち・・・特殊クエスト、しない?」


掲示板に参加者募集を貼って<塔>メンツを誘うこと十数分。

延々と掲示板前でアンインスト○ルを歌いながら待ったいつもの面子の前に黒山の人だかり。


「はーい、募集から丁度16分27秒52経ちましたので締め切りまーす」

超中途半端じゃねぇか、と周囲からツッコミを受けながらメリウが腕でバッテンマークを作る。


今回のターゲットは遥か西の海の底。

いつもの面子が最初に発見した<西方の希望>である。

募集にクエストのあらまし、先に終わらせた北のクエストの感想なども添付していたので装備や技量に不安のある住人は来てない模様だ。


「んじゃ、皆ゲート前集合ねー」

シオンの言葉に「あいよー」「了解」「俺、ゲート使うのはじめてなんだけど」「なぁに、すぐ慣れるから力抜けよ」「フヒっ」「ひとまず正座な?」・・・うん、平気そうだね。


「一応引率位はしますかねぇ・・・自信のない人達はウチらについて来て下さいー。 まずは<飛行>します」

言うなり宙に舞うジオに「持ってねぇよ!」「ごめん、徒歩でよろしく」「むしろ運んでくれ」等々の声が上がったりもした。

ああ、多人数行動ってこういうのがメンドイよねぇ・・・。


「えーっと、ひとまず黙って貴様等ー。 まずこの国の首都近くのゲート前集合~ 歩きとかしかない人は5分後の乗合馬車とか使ってー。 ついたら説明するけど一応ゲートの使い方はhttp://〇〇☓☓参照して~」

後困ったらチャットチャンネル<塔の住人>に書きこんでねー、と、レザードが声を張る。

ワイワイ、ガヤガヤ・・・とその声を聞いてるのか聞いてないのか分からない困った連中もいるようなので。

レザードがそこ目掛けて跳躍し、肉混じりのクレーターを作成し静かにさせた。


「あー、ちょっと事故で何人か間引・・・静かにしてもらったけど、他に質問ないなら出発ねー」

濡れた体から水滴を払う犬のように体を震わせ汚物を周囲に振り払いつつ、超笑顔で言うレザードに、周囲は黙って頷くしか無かった。




一発かまされてマッハライダー → 即時蘇生させられた連中も静かになり、滞りなくゲートでの移動を完了させた<塔>レイド。

さぁ叫べ、目の前の光景に。


うーーーーみーーーー!


さぁ、海水浴の時間です。

正確には潜水だけどね、と、皆を二本の列にして順次<水中呼吸>をかけていくジオとメリウ。

海底のあの場所への引率はシオンとレザードに任せ、魔法係の二人は最後に殿で現地到着の予定である。

傍から見ると凄い人数の入水自殺に見えなくもない。

その異様な光景に「なぁ、何やってんの?」と聞いてくるサーファー等もいた。


「ああ、ちょっとした太○治ごっこです」

これ以上人数増えられても収拾つかなくなって困るので、ひとまず茶を濁すメリウ。

まぁ、どう見てもダイビングをする格好じゃない重武装な連中がレミングスよろしく群れをなして海に消えて行くので怪しすぎるのだが。

「あ、そうなんだ」と、興味を無くしたようにサーフィンに戻る彼に小さく頭を下げ、メリウはジオと共に<水中呼吸>をかけ続けた。


「・・・っと、よし。 これで最後ですな」

パン、と手をたたき二人纏めて<全究回復>するジオ。

あんがとー、と礼を言うメリウに、にゅっとサムズアップして。


「「じゃ、いこか」」

二人揃って潜水開始。




扉をくぐると、そこはすでに地獄のようなもので。

すでに戦端が開かれていた・・・おいぃ、なんで始まってるのー?


「誰かー、状況説明ー、ぷりーずー」

入口近くまで這い出てきていた悪魔っぽいもの(小型)を切り伏せつつメリウが叫ぶ。

その声に周囲から「扉を開けたらいきなりこれだったー!」「ひとまず灰の旦那と空の槍は真ん中のデッカイのに向かったぜー」「うおおー、誰か回復しちくりークリクリー」「おいこいつまだ余裕あるぞトドメは任せろ」「そこは俺が」「お前らだけにはいいカッコさせないぜ!」「ちょー!?」など、要らん情報も混じって聞こえてきた。


「情報多謝。 ああ、あと怪我人は入口近くまで来れば回復しますぞー!」

早速ジオが周囲に癒しをばら撒きだす。

ん、今回は二人がかりで回復に回らなくてもどうにかなるか。

地味に練度高くなったなぁ<塔>の連中もー。


「じゃ、ココはジオにおまかせ。 自分はシオン達を追うわー」

<飛行>含む永久化魔法を全開放し、メリウが弾丸のように地下空洞中心部を目指す。


「ホイホイ、いってらっしゃいー・・・そこの人はやくこっちに来る! イキロイキロー!!」

周囲に光の雨を降らせ続けながら、ジオはヒラヒラと手を振った。




地下空洞中央部。

相変わらず相討つ天使っぽいもの(大型)と悪魔っぽいの(大型)。

シオンはレザードに先駆けて悪魔(大)を攻撃し。


ガチン、と、弾かれた。


「!?」

最初から殺りに行くつもりだったので<重剣>を放ったのだが、それがあっさり弾かれた。

えええー、なんぞこれー。

シオンは絶句するしか無く。

かつ全力で撃った秘奥義の消耗でその場にしゃがみ込む。


「ちょ、シオンのアレがはじかれるって・・・」

今まさにジャンプしようとしていたレザードが二の足を踏んでその場に留まる。

シオンと同じく即時処理を思い描いていただけに、背後から迫り来る無数の悪魔(小)を処理せずにスピード重視で駆け抜けここまで来たため、このままだと無防備なシオンが美味しくレ○プされてしまう。


<ヒトゴトキノ コウゲキナゾ ワレノカラダニハ ツウジヌ>


あとからヌフー、と鼻息が聞こえた気がしたので、もしかしたら中身(GM)入り。

くそぅ、超悔しい、ってかお前ら毎回のように中入って遊んでるけど、ゲーム運営一般の業務はやってるのかと小一時間問いただしたい。

ひとまずレザードに守られながら呻くシオンのもとに、宙から飛来する光の掌。

着弾。

oops、と、シオンが地面に叩きつけられた。


「おまたせぃー。 扉開けたら即地獄だったって?」

倒れ伏すシオンの上に降り立つメリウ。

その光景を醒めた目で見つつ、レザードが周囲に群がっていた悪魔(小)を<悪魔喰い十文字>で薙ぎ払う。

流石長物、遠心力は伊達じゃないぜ!


「ああ、で、いきなり乱戦開始。 一応あっちは侍組とか癒し組に任せて俺らはこの前みたいにそこのデカイの殺りに来たんだけど」

シオンの<重剣>弾かれてさ、と、苦笑いするレザード。

で、いい加減どいてやれ? と促されて渋々シオンの上から降りるメリウ。

おいぃ、わざとか。


「うわぁ、どうしたもんかね・・・シオンの雷神剣でも効かないとすると、並の武器じゃまず効かないってことだしなぁ」

ってか重剣、雷精剣で斬ったんでしょ? ってことは、魔法もダメってことじゃね?


「よっこいしょー、っと。 おうそうそう。 雷精重剣が弾かれた。 後、回復ありがとう。 そして踏んでくれてサヨウナラ」

立ち上がったシオンの回転蹴りがメリウの頭頂にHIT、ふははは単純物理は自分に効かぬぞーげふぅ、なにぃ!? いつの間に靴が魔法の一品にっ!?

馬鹿が頭を割られた。


<小さきものよ、彼らの外装には同列の存在武装でなくては傷もつかない>


そんな天使(大)からの言葉に、外装だの存在武装だの、そんな初耳な固有名称言われてもわかりませんがな、と、三人揃って嫌な顔して困ったポーズをしてみる。

イラッとする気配が感じられたが、ねぇ?


<ええい、面倒なっ。 そこのオチビな槍使いっ。 お前の悪魔を取り込んだ槍なら平気だ、殺れっ!>


うわぁ、沸点低いなコイツー。

嫌な笑顔の肩すくめポーズからお互いアイコンタクト。


「なんだかわからんけど・・・んじゃ、行ってくるわー」

言うなり、またもや天使を踏み台にして高く飛ぶレザード。

オチビと呼ばれたのが癪だったのか、必要ないくらいに顔のあたりで小刻みにステップ踏んでいたのが印象的。

あ、槍の石突をわざとらしく目にぶち込んだ。

びくん、と天使が悶絶した・・・ように見えたけどきっと気のせいだよね、うん。


さぁて、では待機組の二人は空の槍の着弾を待つとしグチャァ。

着弾はええよ。


「あー、ただいまー。 普通に頭潰してきたー」

この前は腕切断して天使に美味しいところ持っていかれたんで、今度はいきなりトドメ狙ったゼィー、というご無体なレザードに、シオンとメリウが指さして大笑い。

あー、そういや北のクエストのは天使が割った頭の中から本体っぽいのが出てきたもんねー・・・。

でも今、目の前の悪魔(大)には・・・無いなぁ、頭。

あ、悪魔(大)の体が崩れだした。

悪魔(大)の<外の人>が、天使の言ってた外装ってやつなのかー。

そんな感想を抱きつつ。

三人は顔を見合わせて。

ひとまずは勝鬨をあげますか。


「「「ざまぁwwwwwwwww」」」

m9(^Д^)プギャー、と崩れていく悪魔に向かって挑発三昧。

密かに、仕事を奪われて呆然とする天使へのザマァ分も含まれているけど、まぁ分からないよきっと。

ちらぁ。

分からない分からない。

ちらぁ。


<・・・イラッ>


さて、なぜか天使さんがイラついてらっしゃるようなので、撤退しましょうかねぇ・・・まだ後方で戦闘が続いてるみたいだし。


<いいもんいいもん、もう天界帰る。 ほれ、報酬だ好きにしろー>


すっごい投げやりに天使(大)の体が光の玉になって分解していく。

地面に散らばる光の玉・・・<繭>・・・が積もっていくのを確認しつつ。


「この<繭>とやら、どう使うんだよ・・・」

光の中、どこぞやへ去ろうとしていた天使の中の人、天使(小)に尋ねてみるシオン。


<長く使ってる武器防具にくっつけてみれー。 愛用品の付喪神度が一定以上なら悪魔とか天使とかと戦える存在武装発現の鍵になるー>

んじゃねー、と、手を振り去っていく天使(小)。


「お答えいただきありがとう・・・でも、なんという軽さか・・・」

GMってあんなんばっかなのかなぁ、と、よく自分が説教食らう真面目そうなGMさん大変だろうなぁ内部粛清、と、メリウが独りごち。


「いや、地味にまたテロだったんじゃね、今の」

そんなシオンのツッコミに、ああ、かも、と頷くメリウ。

有り得すぎて困る。

あと、あの人仕事クビにならないのは何でだろう、と、地味に気になる。


「なぁなぁ、北のと違って、あの野郎穴塞いで行かなかったっぽいんだけど・・・どうしたもんだ?」

レザードが北で拾ったものと今拾った両方の<繭>を<悪魔喰い十文字>にくっつけながら言った。

黒い槍に光の玉が二つ。

じゃっく はず あ ばっと あんど つー ぼーるず 。

・・・深い意味はないよ?

無いけど痴ロリン辺りには見せないようにしよう、とレザードは思った。

絶対「レザードさんの黒光りしたサードフットが逞しく」とか口走りかねない。

流石に知り合いを壁に生やしたくは、ない。


「まぁ、ひとまずは・・・無限湧きっぽい雑魚しのぎながら様子見じゃね?」

変化無いようだったらGMコールとかも考えようか、とメリウ。

言いながら<右曲りのダンディ>に<繭>を押し当ててみると、するりと<繭>が消えた。

ああ、この前のはダンディが繭を食ったから消えたように見えたのかぁ、と、謎が氷解。

そしてふと「あ、別に同じ物にくっつける必要はなかったんじゃ・・・」とか気づくが時すでに遅し。


「うぬぅ、雷神剣に<繭>くっつかねぇ・・・もうちょいと使い込まないとダメなのか・・・」

シオンがぐったりとした口調で吐き出し。


ひとまず、天界とやらに去ったお馬鹿が自分の不始末に気がつくまでの1時間。

<塔>レイドは戦い続けるハメとなった。




「では解散、お疲れ様でしたー」

シオンの号令で、おつかれさまでしたー、と各々拾った<繭>片手に現地解散な<塔>レイド。

出口付近で<水中呼吸>待ちの列が発生するも、手際よくかけられる魔法に、順次その列は減っていく。


「さてっと。 んじゃ、暇つぶしに現状わかったことの整理でもするかね?」

そんな帰り道行列を眺めながら、シオンは隣に居るレザードに話しかけた。


「だな。 第一に、このクエスト、時間経過するごとに状況悪くなる」

ようやく塞がれて只の地下空洞になったその場を見回して、レザードがシオンに顔を向けた。

発見当初はせいぜい床のひび割れから悪魔(小)の眼光が無数に見える程度だったのが、今回はすでに這い出てきていた。


「ん。 で、その二、このクエストは、特殊な武器なしだとクリア不可能」

なんという糞、と、吐き捨てるシオン。

たまたまレザードが特殊クエストのクリアで強化された武器を持っていたから何とかなった、という鬼仕様。

天使(大)にGMが入ってたのは、もしそういう武器なしの連中ばっかだったときに幾つか先渡しで<繭>配るつもりだったのかなぁ、などと妄想はできるけど。


「ういうい、で、3。 クエスト報酬<繭>でその他の人もクリア可能になる」

でも、それも隠しパラメータが溜まった武器防具がないとどうにもならないみたいだしなぁ、とシオン。

なんというクリアさせる気のないクエスト設定なのだろうか。


「っと、そんなとこかね、今は」

繭二つを飲み込んで光と闇を併せ持ち無敵に見える<悪魔喰い十文字>を手で弄びつつ、レザード。

で、どうやって使うんだろねこれ?

<繭>くっつけばもう効果あるのか?


「どうだろなー、ワチキは出来れば雷神剣にくっつけたいんで様子見したいからなんとも実験しようがないしなぁ」

付喪神度、とか言ってたっけあの天使ー、ってことは、道具大切に扱うとどうこう~なのかねぇ、と、ひとまずお手入れモーションで雷神剣を磨きだすシオン。

さーてどうだろねー・・・まだだめかぁ・・・ふきふき。


「んー、わからんなぁ・・・何か説明書とか無いもんか」

槍をいじり倒していたレザードが早くもギブアップ。

他になにか言ってなかったかなあのクソ天使~、と、地面をゴロゴロしだす。


そんなだらけた時間も過ぎ、いつしか空洞内に居るのもいつもの面子のみとなり。


「んじゃ、ひとまず帰るとしますかー」

「「「はーい」」」




そんなこんなで、本日はここまで。

おつかれさまでしたっ。


最近朝夕寒くなって来ました、体調など崩されませんようお気をつけて。 ノシ

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