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脇道遊びも楽しいもので 2

鈍器生活が幾分日常化したある日のこと。

<塔>にて鉄球メイスを二本装備して悪魔神官ごっこに興じていたいつものメンツに、お声がかかる。


「なに、やってるんだい・・・・?」

鉄鉱石を山と積み、その上にゴザ引いて痴ロリンを乗っけた大八車を引いて歩くサブリーダーその人であった。


「「「「いや、お前こそなにやってるんだよ?」」」」

仮面に白ローブ、両手には鈍器という普通きわまりない格好の四人が、総出でツッコんだ。


「えーと、言葉選ぶけど普通さんに謝れゴミども」

今現在、一番視点の高い痴ロリンが、さらにツッコんだ。


「痴ロリンの分際で常識的にツッコんだぞ・・・?」

ざわっ・・・ざわっ・・・と、口で擬音を出しつつシオンが慄く。

そしてそのツッコむという単語に目を輝かせる痴ロリンまじ粛女(粛清されるべきレベルの腐女子、の略。 最近彼女についた渾名)。


「いや、普通にツッコみ待ちだったじゃねぇか俺ら」

一番ノリノリにベギラマベギラマ叫んで駆け回っていたレザードが即時バラす。

いや、確かにそうなんだけど、もうちょいロールプレイというものをだな・・・。

あと鈍器で殴るのはベギラマじゃねぇよ。


「きっと鉄コン先生のやおい新刊でも買いそびれて気が立ってるんだよ痴ロリン」

鉄コン先生は、どマイナーな無機物やおい作家。

確か新刊題名が「エッフェル塔×凱旋門 ~通り抜けてスカイツリー! ああ、次はブルジュドバイね~」だったっけ? などとうろ覚えの(だってどうでもよかったんだもの)本の題名を思い出しつつ、メリウ。

そういやこの前言ってた「カーペット×畳」は面白かった?


「あのぅ、ウチが実は上半身裸のボディペイントだということについてのツッコミはまだですかのぅ?」

皆に意図的にスルーされていることに気づかぬジオが、恐る恐るといった感で手を挙げ。


「えーと、つまり、どういうことだってばよ?」

ついていけぬサブリーダーの呟きが、むなしく場に散った。




かくかくしかじか。

まるまるまうまうま。

じゅげむじゅげむごこうのすりきれー。

オレサマオマエ、マルカジリ。


「おk、把握」

流石痴ロリン、頭が柔らかくて助かる。


「えーと、えと、なんだと?」

対してトエトってるサブリーダーは脳が硬化しているようだ。


「つまり、鈍器ってイイ武器なのにイメージ悪くね? だから、こうして流行らせてみようかなぁ、と」

行動を起こしたわけだ、とシオン。


「ツッコミ待ちだぞ?」

左右のメイスでアメリカンクラッカーしつつ、レザード。


「痴ロリン、今のレザードのセリフは強気受けじゃないからな? だからそのスケッチブックは、しまおう?」

ほら、ほら、サブリーダーの表情が消えていってるから・・・・ハリーハリー! と、メリウ。


「あのぅ、ペイント・・・」

ジオさんはそこに座ってて。


「鈍器、ねぇ。 なんでそんな話になったのさ・・・」

そして何故布教活動で悪魔神官ごっことかやってるんだ、と、当たり前にツッコミくれるサブリーダーまじ常識人。


「鈍器最強説提唱→最近暇だったし鈍器使いも見当たらないんで自分達で証明だ→両手に武器持つのは基本だよね→悪魔神官になった←イマココ」

そんなメリウの説明に「いや、その理屈はおかしい特に最後」と即時ダメ出しが入る。


「えーっと、結局悪魔神官ごっこって、どういう遊びなの?」

痴ロリンが何かをスケッチブックに描き込みつつ尋ねてくる。

たまに向く視線はレザードとシオンに向けられて・・・。


「「そのスケブは没収な」」

それに気がついたシオンとレザード両氏により、粛女の邪悪な企みは頓挫した。

ああっ、返し「あとで説教な」ゴメンナサイ、と痴ロリンがサブリーダーにゲンコツ食らう。


「地味に上手いな、ありがとう。 最悪の気分だ」

奪ったスケッチブックに描かれたイラストを回し見しつつ言うシオン。


「コレが粛女の実力か・・・」

普通の漫画書けばいいのに、と、レザード。


「普通の漫画なんて何が楽しいんですか! やおいこそ至高! あ、ちょ、サブリーダー様、私の首はそんな方まで回転しませぬ」

いやぁ、侍 組 は い つ も な か よ し だ な ぁ 。


「で、悪魔神官ごっこについてkwsk」

痴ロリン、怖いから180度後ろ向いた頭部直してから聞いてきて?

ああ、コレは失礼ミチミチミチ。

グロっ。

いつものメンツ、超ドン引き。




悪魔神官ごっこ。

某有名RPG第二弾(納期きつくてバランス調整適当になったというアレ、復活の呪文長すぎなんじゃ!)に出てくる棘メイス二刀流(二槌流?)の邪神神官の真似をして迂遠に鈍器の素敵さをアピールする崇高な目的を持つ只の通り魔。

彼らに遭遇したPCは無差別に決闘をふっかけられ(決闘を断ると彼らはそのまま居なくなるが)、決闘を受けると「ちゃらららららら~」というアカペラ四重奏BGMの流れる中、悪魔神官A~Dが襲いかかりテクニカルな鈍器攻撃に晒される素敵ユーザーイベントである。


「悪魔神官Aはいかづちの杖を使った!(雷精招来・・・ぼそっ)」

「悪魔神官Bは空高くジャンプした!(えーっと、急降下連続攻撃・・・10発くらいでいいか?)」

「悪魔神官Cは攻撃を待ち構えている!(カウンタアッー! 誘い受けっ)」

「悪魔神官Dは仲間を呼んだ! ベヒモスが現れた! 悪魔神官Dは踏み潰された!(という脳内設定の変身)」


「あれ、鈍器使ってないのが混じってない?」

サブリーダーが小首をかしげて狂人の言い分を検分しようとするが果たせず。

あとメリッさんは町中でデカイのに変身するな縊るぞ? 「ゴメンナサイ」。


「上記はイメージです。 実際の製品と異なる場合があります」

ひとまず小さな声で注釈を入れるシオン。

悪魔神官ごっこ開始一発目から「いかづちの杖」と言い出した男は格が違った。

セ○コ、それ鈍器ちゃう。 雷神剣や。

ちなみに最初の犠牲者は侍組のリーダー。

通りがかったがうぬの不運よ・・・。


「何キチガイに轢かれてんだアイツは・・・」

サブリーダーが苦悩した。


「受けても受けなくても実害はなく、ただ鈍器が印象に残るという、まさに悪魔の発想・・・ウチは自分の才能が怖いッ」

発案者よりにもよってお前か聖職者。

そしてどう考えても「ああ、またお前らか」「お前らでなかったらどうしようかと」とか言われてるに決まっている。


「面白そう・・・鈍器と服の予備ありますか?」

痴ロリンが仲間にしてほしそうにこちらを見ている。

仲間にしますか?

>はい

いいえ




最終的に、悪魔神官団は20名を超える規模となった。

で、最後はやはり内部分裂を果たし血みどろのバトルロイヤルに発展。


見物客が集まる大盛況。


「なぁ、鈍器って強くね?」

「ああ、そして、限りなくテクニカルに使ってるのが理解できるにもかかわらず、何だあの凄惨さは」

「斬った突いたの結果残る死体の現実離れした派手さがなくて、おおまかに原型留めて力なく横たわる死体がリアルすぎて引くな」

「集団が鈍器で武装して襲いかかる様のシュールさが酷すぎる件について」

「このゲームは残酷な描写があります。 お子様はやるんじゃねぇトラウマになるぞ?」


「やぁ、君たち。 ゲーム、しない? バスター!」

そんな野次馬の群れに飛び込んでPKを開始する若干名の悪魔神官も出始めて。


「「「「げぇ、本当の通り魔が現れたっ」」」」

既に決闘なにそれ美味しいの状態ゆえの飛び火であった。

いやぁ、心臓鈍器鈍器だね?(ドキドキだねとでも言いてぇのか?)




そんな涙ぐましい努力の甲斐あり。


<塔>において鈍器は禁忌になった。


「「「「「あっれ? どこで間違えたんだろう?」」」」」


「最初からだと思う。 あと痴ロリンは説教するからこっちに戻ってくるように」

「最近サブリーダーすら名前で呼んでくれなくなった件について」


今日も、<塔>は平和でした。




そんなこんなで、今日はここまで。

また、そのうちにっ。

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