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金の亡者も楽しいもので 3

またの名をダンジョンエクスプローラー(超名作)。

さぁ、今回もサクッと一階層分攻略してやるぜフゥハハハハァー。

・・・と、息巻いて。

いつものメンツが挑んだ通称名古屋迷宮第五層。

そこで待ち受けていた恐るべき現実。


「逃げろ逃げろ、どうにもならねぇ!」

辛うじて<十文字>をサンドカッターで巻きつけ回収したレザードが一目散に第四層への階段を目指す。


「今までの階層が天国だっただけかっ、クソッ! なんて時代だっ」

慢心してた、と悔しげに敵に背を向けるシオン。


「これは・・・色々と練り直さねばなりませんね」

息も絶え絶えに呻き、自分達を一蹴した相手の姿を今一度、と振り返るジオ。


「早く逃げてー! 時間稼ぎもそろそろツライっ」

メリウは連射するような頻度で自身を<全究回復>をしつつ、ベヒモスに変身した自分を丸々飲み込み消化吸収せんとする、この階層唯一にして最大の敵を何とか阻んでいる。


「もういいですぞ! そのままおとなしく死・・・じゃなかった、脱出を!」

レザード、シオンが階段を駆け上がり、続くジオが声を張り上げた。


「あいよぅー」

やばー、ギリギリ間にあったっ。 と、メリウは即座に変身を切ると階段前へ<瞬間移動>。

待っていてくれたジオと肩を並べて四階層へ逃げ延びた。


第五階層、単一ボスエリア。

一層ぶちぬきワンフロアに単体で待ち受ける威容。

その正体は。


<ぷるぷるっ、ボクわるいスライム! 貴様等を阻む者なり・・・>


まさに魔王の如き存在。

ベヒモスを飲み込むレベルの。

すごい、でかい、スライム。

某コンピュータRPGのせいで、最弱ー、とかカワイイー、なんて誤解を受けたアレ。

しかしてその実態は。

通常攻撃は効き目が薄く、速度も地味に侮れず、基本的には焼き尽くすしか無いという難物。

ああ、身内にもいるから貴様等種族のウザさは分かるけどさ・・・。

単純物量が洒落にならないと、どうしようもないなこれ・・・しんぷる、いず、べすと、とは言ったものだ。


いつものメンツ、辛うじて逃走成功。




さてどうしたものか。

逃げ延びた先、四階層ボスエリアにて車座になって作戦会議の図。

ちなみに階層ボスは上階層から侵入しないと復活しないようで、ボスぬっ殺し続けてウメェ、ウメェ・・・できない仕様であるようで。


「さて、単に金儲けついでで迷宮攻略しようとしていたワチキ等の前に、天罰のごとく相性最悪の障害が立ちふさがったわけだが」

シオンが、どうしたもんかなー、と頭を抱えてボヤく。

剣攻撃範囲内の敵なら切断し尽くして消滅レベルに出来るんだがなぁ、とも。


「正直、メリウ殺し切る為に取る予定の魔法とかを早めに入手せねば、と決意を新たにした位だなぁ」

レザードが回収した<十文字>が無事かどうか確認しつつ言い。

即死効果のある魔法とかも考えるべきかなぁ、と思案顔。


「ふむー、広範囲殲滅系魔法しか攻略法がないとすると、現状では詰んでますねぇ」

<爆炎壁>クラスでは若干足りませんねぇ、とジオ。

あと三人くらいいれば、どうにか出来るかもしれないが。

しかし今更皆して覚えるくらいなら、一個ドデカイの覚えてブッ散らしたほうが良いでしょうしねぇ、訓練ポイントとか金的に考えて、と続ける。

ちなみに読み方は「かねてき」であって「きんてき」ではない。

更に言うなら、男限定即死技<金的>は、存在する。

こわっ、キュッとなっちゃう。


「自分はまだ金が足らなくてどうにもならないし・・・あと、サラっと殺害予告されてるのだが」

メリウは残金、銀貨三枚の財布を覗き込んで溜息。

中途半端すぎるので銀貨を無限袋へ放流し、残金0にリセットリセット。

あとは、レザードと目を合わせないようにする。

あとは・・・次に取る予定の魔法はどちらかと言えば防御系だし。

戦とは、勝つことよりも負けぬこと。


そこまで話して、んー、まぁ、と。

やることが決まったようなもので。


「「「「延々と四階層周回して金の亡者になろうぜぇ」」」」


ひとまず五階層のことは、棚に上げた。

金がっ・・・ほしいっ・・・

ネットゲームに良くある光景。

「気楽に回せる所で小金を稼ぐ」が、展開された。




何度目かの四階層ボスを手加減奥義にて一蹴したシオンが、残心を経て雷神剣を鞘に収める。

最初は怒龍爆砕重剣、略して<重剣>で派手に<消して>しまい、素材剥ぎ取り不可にして皆に非難されたため、仕方なしに不完全燃焼戦闘をするハメになっている。


「つまらない・・・が、目的は金だ・・・。 だがつまらない・・・」

シオンがブツブツと、金と爽快感の狭間で揺れている。


「あえて奥義使わず戦ってみるってのはどうよ?」

コツコツ鍛えた<分身>で既に四ツ身までを使いこなすレザードが気軽に言う。

東西南北と分身を配して敵を囲むのを<四門>と呼ぶのが懐かしすぎてメリウあたりが悶絶していた。

ねぇ、朱雀飛ぶの朱雀?

きゃー、玄武さん超頭突き!


「いや、何が悲しくて鍛え上げた成果を封印しないとイカンのよ?」

鍛えても使えないなんて、マゾすぎね? と、口をアヒルにするシオン。


「まぁまぁ。 ひとまず酷い速度で周回してるんで、ボス素材の剥ぎ取り物売却益も馬鹿にできませんし・・・今は我慢、です」

あとは恐ろしい量の宝箱が手に入ってますし、この中に希望が詰まってるかもしれません・・・と、ジオ。


「地味に無限袋が人数分揃った辺りが今回の収穫って思っても、充分美味しいと思うけどね・・・」

だからもう我慢しきれなくなったら、ブッ散らしてもいいんじゃよ? とメリウ。

正直、回復と永久化によるサポートくらいしかしていないので、メリウ自身は既に飽きを超越して悟りを開いている。

おお、これがチャクラの導き・・・とか呻き出してるレベルでもうヤバい。

以前の酒造業ハムスターレベルに迫る勢い。


「んー、ってか、今日はもうイイ時間じゃね? ひとまず俺はキリ良いからここらで落ちようと思うんだけど」

レザードが欠伸を噛み殺しつつ皆に宣言。

ああ、そう言われてみれば、もう日付またいでるね。


「あー、確かに。 延々と作業チックにやってたから時間感覚無くなってたや」

んじゃここらで解散としますか、と、シオンが皆に問い。


「「「あーい」」」

異議なーし、と皆揃って同意し。


後日、各人の無限袋の中に乱雑に突っ込まれた拾得物を精査することとなった。




日付変わっていつものメンツハウス内。

一階丸テーブルに山と積まれた拾得物。

剣だ槍だ盾だ鎧だ巻物だ・・・その他、うん、いっぱい。


「うん、おっぱびちゃぁ」

メリウ、床の模様に。


「学べよ、そろそろ・・・」

適当にテーブルから手に取った未鑑定の鈍器っぽい棒を赤く染めて、レザード。

何事もなかったように汚れたまま未鑑定山に放り投げないように。


「いや、そろそろお前もスルーを学べよ」

至極あっさり仲間を殺害するレザードに、シオン苦笑い。


「レザード、GJ。 ほーれほれほれ<蘇生>~」

ジオ、超嬉しそう。

本来ジオが取る予定だった<絶対魔法遮断>をメリウに取らせて、自分は趣味を優先した結果がこれである。

いや、悪くない選択なんだけどさ・・・なんだこの胸のモヤモヤは。


「ふぅ、そろそろ自分、ギャグキャラって称号つくんじゃね、とか思うわ」

当たらねど遠からじ、な事を呟きつつメリウ復活。

あと十回も死ねばそれが判明するのだが、それはまだ二日後の話で。


と、いつもの茶番を終え、皆が襟を正す。

さて、お待ちかねの鑑定タイムと行こうか!


「んじゃ、片っぱしから鑑定してくねー」

言うなり、メリウはテーブルの上の山を切り崩し出す。

コツコツと「丸くなっていった」結果、NPCレベルの鑑定が可能になったのだ。


「ほいさ、んじゃウチもお手伝いっと」

当たり前のように鑑定を手伝い出すジオ。

この坊さんも、地味なスキルを狙って極めている感もある。

むしろシーフ系スキルは一日の長あり、である。

大泥棒ならぬ僧泥棒という感じ。


みるみるうちに精査されていく未鑑定物達。

売り払うラインのものは適当に、順繰り皆の無限袋に消えて行く。

そしてテーブルに残ったものは、鑑定されかつ、売り払わないレベルの物品。


新たなる、力である。


テーブルに残ったもの、それは。


「・・・勝ったな」

何故かレザードの背後に立ち、腰の後ろで手を組んだシオンが呟く。


「ああ」

テーブルに両肘をつき、手を組んで口元を隠すようにそれに顔をのせたレザードが、ニヤリ、と笑み。


「「司令ゴッコはいいから」」

結構な数量の鑑定をこなした二人が、疲労困憊気味にツッコみ。


あつらえたように、四つの巻物が、テーブル上に残っていた。




魔王スライムをいつものメンツが討伐するのは、実にその一月後であった。

魔法の訓練、地味だしキツイのぅ・・・。


「ふむ。 これでようやくメリウを殺し尽くせる時が来たか」

「ちょっ」


そんなこんなで、今回はこれまで。


「「「「乙」」」」


「・・・π(ボソッ)びちゃぁ」


「「「・・・」」」


長閑な日常ですね?

では、またそのうちに~ ノシ

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