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特殊クエストも楽しいもので 4

滅ぶはずの血は残り。

しかし失われたものは多く。

かろうじて若干数を救い騎士称号を得た敗北者達は、決意する。


「「「「復讐戦だっ」」」」」


あの頃の四人と思うなよっ!




再びやって参りました通称妖精王国。

ビタイチ妖精なんていないがな。

さてさて、同じ感じでクエスト消化していく感じになるのかな・・・面倒な。


<騎士の皆様、どうかお助けを>


「あっれ? あ、前提条件とかが変わってるから流れが違うのか」

未来で得た称号が過去で通用するとか、ちと面白いねぇ、とメリウ。


「でも、なんかやることはさほど変わらなさそうな雰囲気なんだが」

前回の朧気な記憶を掘り起こして、あれこれなんてデジャブ、なんて言っているシオン。

大人げなく<雷神剣>抜くのはどうかとも思うが。


「あーあー、なんかこんな感じだったね。 で、もう騎士の位は持ってるし・・・お貴族狩りからで良いってことだよ、な?」

獰猛に笑うレザード。

でもその両手のサンドカッターは、正直、人に使って良いブツじゃないと思うんだ。


「まぁまぁ、皆の衆。 ここは人道的に、穏便にですね」

お貴族の取り巻きNPCの首をへし折り肥だめにシュートしながらジオ。

いや、穏便って穏やかに便に沈めるって意味じゃないぞ?


「結局はゴミ掃除なんだから、巻いていこうぜ~」

ひゃっはー、お貴族様は消毒だー、と、モヒカンカツラをかぶって躍りかかるシオン。

それでいいのか剣聖様・・・?


そんなこんなで必殺仕事人チックにサクサククエストを進めるいつものメンツ。

・・・最初のお仕置きが過剰すぎると地下牢行きだったのは、正直芸が細かいな、とは思った。




そしてやってくる、運命の夜。

来る方向も時間も、分かりきっている。

最初の被害者が出る前から連中の出現位置近くに陣取り、情け容赦ない前準備に余念のないいつものメンツ。


「えーっと、ひとまずこことそことあそこには入らないでね。 ぶっちゃけ死ぬから」

分かりやすくペンキで地面にエリアを区切りつつメリウが皆に注意を促した。

連中五名の進路予想から、かなりの広範囲に致命的な罠を張り巡らせている。

どんな罠を張ったかすら言わない辺り「絶対にろくでもないレベルだ」と、つきあいの長いメンツが無言で同意した。

頼まれても、はいらねぇ。

誰かが芝居じみた口調で、吐き捨てた。


「さて、ではそろそろ時間ですので、最終確認です」

ポン、とジオが手をたたき、皆野注目を集めて続ける。


「まず、シオン。 前衛全てを抹殺してください」

ジオお得意の、超丸投げだった。

それを受けて、非難でなく苦笑いを浮かべたシオンは、ただ一言。


「承知」

シオンはすでに剣を抜き、奴れi・・・メリウに永久化させた数種の魔法を解放している。


「で、次、メリウ。 敵首領の魔法を使用不能にして下さい」

先日覚えたアレでね、と、悪い顔をするジオ。

それを受けて、凄まじく渋い顔をするメリウ。


「ああ、分かってはいたけど・・・そのつもりで覚えたんだけど・・・あああやり直すのがめんどくさいいい!」

永久化がぁぁぁぁ、とのたうち回るメリウを、ひとまず面倒なので皆がスルー。


「で、メリウの働き次第なんですが。 成功すれば最早相手は<魔法使いではありません>ので、レザード」

サムズアップのジオの親指が。

ぎぎぎぎ、と、首を横切り。

ぎゅりっと切れよく、地面を向いた。


「昔穫れなかった首、見事落としておやりなさい」

アンタホントに坊さんか、的な檄を飛ばすジオ。


「任せろ、チリも残さない」

それに小さく頷き、レザードは悪魔喰らいの漆黒槍を地面に突き立て。

無表情に、言い切った。




かくして、復讐戦の開幕。

前回同様に四人の前衛を従え王国を蹂躙せんと進撃する<わるいまほうつかい>。

立ちふさがるは、無形の位にて待つ双剣使い。


「やぁ、ハジメマシテ」

ワチキは二度目だけどね、と、片方だけ口の端を笑ませて。

第72剣聖・灰剣士シオンが、その恐るべき両翼を羽ばたかせた。


<奥義:怒龍爆砕・・・>


奥義の発動タイミングを盗むかのように四人の前衛が散り、メリウが危険地帯を示したペンキ範囲にギリギリ入らぬような位置取りでシオンに向けて波状攻撃を開始せんとする。

おそらく最初の一人が<止め>にて奥義を沈黙させ、残り三人が止めを刺すという戦略のようだ。

・・・ってか、また貴様等、中身入りか!


「まぁ、引っ掛かりやがってザマァ、なんですけどね」

シオンがチロリと舌を出し。

瞬間、シオンに最接近した敵前衛を始めとした四名が、微妙なタイムラグを以てほぼ同時に。

地面から射出された大量のサンドカッター鋼線に絡め取られて転倒した。


<馬鹿な、安全圏からの攻撃だったはず・・・>

思わずそんなセリフを吐く敵前衛の中の人。

動けばシュレッダーにかけられるより酷い状態になること請け合いの芋虫状態。

その横、デンジャーライン内を悠々と駆け抜けて行くメリウ、レザード、そしてジオ。

三者が三者ともに、邪悪な笑みを浮かべて芋虫共を楽しそうに見下している。

そう、初歩的なペテンであった。


<だ、騙したな卑怯者っ>

先ほどとは別の前衛の中の人が思わず毒づいたようだが、それは褒め言葉だよキミ。


「盗み聞きするような連中が勝手に騙されたようになっただけじゃないですかぁ↑」

プランナーのメリウが凄い嬉しそうに快走しながらYesYesとガッツポーズ。

バーカバーカ、引っかかってやんのー!


「うわぁ、超嬉しそう」

ひとまずやれることはやっておこうぜ、と、ログイン前に企んでいた案が面白いように当たったのが相当嬉しかったようで。

気分よくレザードすら置き去るような速度で<わるいまほうつかい>に迫るメリウの背中を追い。

レザードが渋い表情で走り抜ける。


「ご愁傷さまです。 今回は我々の作戦勝ちということで」

ジオがレザードの背中を追う形で芋虫達の横を走り抜け。


さてお待たせ致しました。

楽しい楽しい処刑のお時間がやって参りました。




<くそっ、こうなったら瞬間移動で>

芋虫前衛達は慌てて魔法で窮地を脱しようと動こうとした。

しかし、それをすることは、出来なかった。


「雷精剣化」

シオンの低い声が、芋虫達に沈黙を与える。

シオンの剣聖剣<雷神剣>には3つの形態があり。

一つ、通常長剣形態。

一つ、雷精招来の遠距離自動迎撃形態。

そして最後の一つ、雷精剣形態である。

最後の一つの効果、それは。


<武器攻撃が、魔法攻撃に、なる・・・>


芋虫四人のうちの誰かが、絶望的な言葉を吐く。

通常、魔法同士の打ち合いは、単純に魔法の階位によって勝敗が決する。

瞬間移動は、階位4。

そして、雷神剣の階位は5。


「ダメで元々、チャレンジすれば案外成功するかもよ?」

メリウと何回か実験したんだが、奴レベルの魔法使いだったら・・・だいたい三割くらいで威力勝ちで階位ひっくり返してたぜ?、と、無茶振りするシオン。

周囲のメンツがアレなせいでそれほど強い印象受けないかもしれないけど・・・実際問題かなりの魔法使いなんだぜアイツ。


えー、それだけ持ち上げてる人でも30%すかー?

なんというか黙りこんでしまった芋虫達がちょっと哀れになったので、シオンはさっさと終わらせることにした。


<奥義:怒龍爆砕「重」剣>


シオンの奥義が、発動。

それは左右計20回攻撃の爆砕剣・・・を、更に連続攻撃化した、総計160回攻撃。


<<<<はいぃ?>>>>


それは「奥義の連続発動を奥義化する」という、あっれ、何で設計段階で弾いておかないの? 的な設計ミス・・・?

ぶっちゃけシオンも、まさかなぁ、とやってみたら出来てしまい、今日まで使うに使えなかったのだが。

まぁ、その、なんだ。


「大昔の憂さ晴らしってことで、利子がちょっと多くなったと思ってくれぃ」

満面の笑みで羽ばたく、シオンの怒龍。

その鋼の暴風雨が終わる頃には、地面を這いずっていた芋虫達は、綺麗サッパリ居なくなっていた。

ぶっちゃけ、オーバーキルでした剣聖様。




さて、それでは大詰めの<わるいまほうつかい>戦へ場面を変えてみよう。

真っ先に飛び込んだメリウは、相手を範囲に収めるやいなやそれを発動する。


<絶対魔法遮断>


完全魔法防御、などとも呼ばれる、対魔法最終結界。

効果は、範囲内全ての魔法を無効化すること。

強いて言うなら、魔法の武器防具は効果を失わない、程度である。

最大階位の魔法使い殺し。

野望その2を後回しにしてメリウが手に入れた(そして貯金がマイナスになった)、まさにコイツを打倒するためだけに取得した魔法である。

正直、これだけのために此処にいる、という意気込みであったために。

メリウはHPMPの殆どを使って威力を底上げ。

実に威力20オーバーまで無理やりに引き上げた。

これで抵抗だのされたら、どのみち無理、と、満場一致で頷かれたその魔法威力は。


<・・・やられた・・・>

苦渋に満ちた聞き覚えある中の人の声音。

胡散霧消した<わるいまほうつかい>の魔法結界。

そしてそれは、それを使用したメリウ達にも適応されて。


苦労して永久化した数々の魔法が、脆くも一瞬で破壊された。


「ごフゥ」

メリウ、吐血。

心身ともに絞り尽くした為のダメージ、とも取れるが、絶対に永久化を自ら破壊した精神ダメージ。


「お疲れ、後はやっとく」

地面に倒れるメリウを危うく踏みつけそうになりつつ、レザードが宙に舞う。

すわ、いつもの空の槍か?

警戒する<わるいまほうつかい>に対しレザードが行った攻撃は。


<格闘技能:風圧脚>


脚攻撃による、カマイタチ攻撃であった。

<先の先>もかけぬ、普通の、である。


不思議そうに、あっさりとそれを避ける<わるいまほうつかい>。

カマイタチが地面をえぐり、わき起こる土煙が若干視野を塞ぐが問題はなし。

さてそれでは落ちてくるお馬鹿な槍使いを美味しくいただきますか、と手にした大杖を振りかぶろうとした瞬間。


レザードの両手から伸びるアレが。

真っ黒な手袋に包まれた、グロ製造機的鋼糸が。

予想通りの方向に回避した<わるいまほうつかい>に絡みつき。

未だ中空にいるレザードがスケート選手のように回転。

自身にもグロ鋼糸を巻きつけて<わるいまほうつかい>を粗い切り口で引き裂いた。

音無き悲鳴、体勢を崩す敵の上へ器用に着地点をズラし。

次瞬、蹴りと同時に上空へ投擲していた悪魔喰い<十文字>が計算通りに落下、着弾。

更にはレザードもシオンに倣い、オーバーキル宣言。

以前掲示板で手に入れた古代技術の結晶服の特殊能力を使用。


<古代強化服:ロック開放 筋力が倍加します>


革のツナギ的な衣類の関節部から、金属製のボルトがはじけ飛ぶ。

体中に巻き付けていた鋼糸をもあっさり引きちぎり、レザードは着地攻撃に向けて前宙開始。

落下、筋力、遠心力を踵に集め。

必殺を超えた必滅級ダメージを、もはや虫の息だった<わるいまほうつかい>に叩きこみ。


ついでの威力で、地面を深く深く陥没させて。

今度こそ。

完全に。

ミッション、コンプリート。




「「おつかれー」」

キルマークを獲得したシオンとレザードが、嬉しさを堪えずにハイタッチ。


「「おつかれ~」」

渾身魔法撃ってあとは寝てただけのメリウと、魔法禁止範囲内での回復手段としてメリウに応急処置を施していたジオが、テンション低くロータッチ。

くそぅ、おにゃの子がいたらパイタッチしても許されそうな場面だというのにっ。


「で、だ、またクエストアイテムの記述が変わったりは?」

人心地つけたシオンが、ジオに兜の説明を読むように依頼。


「はい、ただいま・・・うわぁ、砂漠、無くなったっぽいですよ?」

前回は結局王国崩壊が止められずオアシスエンドとなったわけだが、それがまるっと無くなるってことだろうか?


「あー、いえ、実は前回の結果も残っているといえばいるようで」

どうにも、未来でIFの二つが融合して。

王家が二つに分かれ、城と湖の双子王国として再誕した、ということらしい。


「正直、今の説明だけじゃよくわからんね」

行ってみようか、とレザード。

あ、でもまたテロイベントあったらどうしようね?


「あー、あるでしょうねぇ、確実に」

ですが、無視してるときっといつもにもまして絡んできそうな予感も、とジオ。


「どうみても<わるいまほうつかい>の中身、テロだったろ・・・」

なんというか、油断しまくりなキャラ操作がデジャブ過ぎだ、と、メリウ。


「んじゃまぁ、仕方なし・・・ひとまず今日は落っこちて、今度集まったら行ってみようか」

本当に仕方ねぇなぁ、と溜息混じりにシオンが皆に意見を求め。


「「「意義なーし」」」

満場一致で、次回方針が決定した。




そんなこんなで、今回はここまで。

また、そのうちに~ ノシ


「「「「お疲れ様でしたーぃ 最近暑いんだか寒いんだか分からなくてビール消費量が減ったこと」」」」


健康的でいいんじゃないですかね、そりゃ。

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