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小間物作りも楽しいもので 1

ログイン前、音声チャットにて歓喜に吼えるメリウ(の中の人)の姿があった。


「いよぉぉぉし、ついに、ついに、ついにきたぁぁぁ!」

中の人、年甲斐もなくガッツポーズ。

最近珍しい全員そろった頃を見計らったかのようなグッドタイミングで大声砲をぶちかました。


「「「うっさいわボケェ!」」」

満場一致で大ボリュームを返されて悶絶するメ中(メリウの中の人)の「ぐぉぉぉぉ・・・」といううめき声にガッツポーズな、いつものメンツ。


「んで、アップデート新聞でも読んでたんかいな?」

今回の目玉は何かあったかいのぅ、と、アップデート内容を斜め読みし始めるシオン。

剣術系は取り立てて新しい更新なし・・・っと。


「特になにもなかった気がすっけどねー」

レザードは既にログインして<分身>訓練中。

頑張るね器用さお化け。


「魔法系でもないですし、となると、生産系ですかな?」

でも薬系には特になにもなかったような、と、ジオ。

そろそろ不老不死の薬でも作れるようにならないものか、とかホザいてる。

どう考えても技能レベルと材料も足らんだろうに。


「耳がキーンて、キーンてするー」

譫言のように呟くメリウは、あえて口では言わず該当ページを文字チャットにて皆に送りつける。

今回のアップデートにより可能になった「それ」。


新聞曰く、生産の精密化。

ゲーム内物理に即した、というレベルではあるが、材料○○と機材☓☓で生産物△△が出来るよーと言った今までの生産系を「簡易」に貶めるような、マニア向け生産ルールの追加であった。

ぶっちゃけると、生産用オブジェクトをCADソリッドモデル的に加工したり出来るようになった。

任意の部分で切断ー、やら、曲げー、やら、接着ー、などなど。

労力さえ厭わなければ、ビス一本からの手作り及びロボットだって出来ちゃうかもね!


「えーと、ぶっちゃけ訳が分からん」

題名だけ見て読むのを諦めたレザードが再び訓練に戻る。


「んー、要は自分の好き勝手にモノ作れるようになった」

メリウが三秒で答えた。


「でも、コレだと技能とか関係なくね? 中の人の性能次第でどうにでもなるような」

あとはパソコンの性能とかで地獄見る人とかいそうやねー、とシオン。

まぁ、ぶっちゃけ3DCADで好き勝手出来る性能とかは欲しくなるよねー。


「ふむ、生産物はレシピ化可能。 スンゴイ精密なものを作った際の量産体制はフォローされてるんですなー」

機械式時計とか作るツワモノいそうですねぇ、とジオ。

ああ、それは欲しい。

パーペチュアルカレンダーとかミニッツリピーター完備のゼンマイ動力時計とかロマン過ぎてビクンビクンしちゃう!


「レシピって何さー」

延々とリズムを刻むボタン殴打音をBGMにレザード。

ああ、そいつは要するに今までの生産と同じに出来るようにする設計図が作れるってこった。


「フルスクラッチしたものを、材料○○機材☓☓で作れるように出来るってさ」

精密品とかのレシピ糞高くなるだろうねぇ、とシオン。


「ふーん、面倒そうなだけだねー」

半分以上聞き流して、レザードは修行に没頭し始めた。

おま、なら聞くなよ・・・。


「ままま、フェラーリ分身はスルーしといて。 自分、実はコレを待ってたんだ・・・」

なぜなら、と続けるメリウ。


「「何故なら?」」

ノッてくれるシオンとジオに、


「これで念願の・・・竹アーマー制作が可能に!」

そう、竹アーマーだ。

未だに完結していなかったりするフォ○チュン・クエストの、あれだ。


「凄い所が出てきたな・・・そりゃ普通の生産にはそのレシピはないが・・・」

だけど・・・竹だぞ? と、シオン。


「懐かしすぎて吹きましたぞ。 で、あのカランコロン言う鎧をそのまま作るわけですか?」

同時期にハマった口であるジオが懐かしさに顔を笑ませながらメリウに尋ねる。


「あー、いや、実はさ。 自分1巻読んだ時から思ってたんだ・・・ただ竹縦に割ってラメラアーマー的に繋いだってしようがねェだろう、と」

金がなくて自作しかないとしたときに素材に竹を選ぶのは良い判断だ、と思ったんだけど、あの加工じゃ・・・云々。


「あー、長すぎてウチらもレザードりそうですので、完成品で語ってくだされ」

超長くなりそうなメリウの真竹アーマー抗議を5秒ほどでぶった切るジオ。

シオンも無言で頷いた。


「ああごめん。 んじゃ、人揃ってるところなんだけど自分チト物作りしてきまっさー」

ろぉぉぉぐいぃぃぃん! と言う叫びを残して会話から外れるメリウ。

さてさて、どんな物体が出来上がることやら・・・。




たまにはモノを作るのも良かろう、とばかりに、シオンは露天で生地を買い集めていた。

これまでも多彩なレシピによるPCメイドな服を幾つか購入していたシオンであるが、いまいちデザイン的に許せない場所もあり。


「フルスクラッチだけでなく、単なる改造とかも出来るようになったってのはいいことだ」

サクサクと買い物を終え、NPC裁縫屋のミシン前にやってきて手持ちの服の魔改造に着手しつつシオン。

あー、この袖要らねぇー、カットカットー。

お、引き裂く、とか焼け切れた痕、とかプラグインも充実じゃん。

ふんふんふーん、と鼻歌交じりに色々改造。


「できたっ。 試着っと・・・Oh」

着替えてみて気がつく場所が、あるもので。

即脱衣。


「ちゃうんだー、ここはそうじゃないんだー」

ミシン前で譫言を繰り返しながら服の改造が続く。

ここはもっと、ばーっと、ばばーーーっと!


・・・ちなみに、自分が下着姿のままだということにシオンが気がつくのは、三着分ほど改造が進んだ後である。




レザードはただ今<分身>修行中。

たまに、指がつった、指がっ。 という叫びが聞こえる程度である。

うむ、まるで日常的。

そんな分身ジャンキーに近づく影あり。


「殺った! 第三部完っ!」

地面を這って接近し躍りかかるスライム。

竹アーマー作成の休憩がてらに邪魔しにきたメリウであった。

真っ赤なスライムの体当たりが、休憩中のレザードに炸裂、貫通した・・・!?


「残像だ」

正確には分身のうち一体だが、大差ない。

そしてスライムに降りかかる暴力もまた、普段とかわりなく。

ボンボンボンボン、と、流星群が爆発する音がした。


「死ぬる・・・死んでしまうではないか」

この前火山地帯に遊びに行って火耐性スライムを見ていなければ即死だった・・・とメリウ。


「お前、どうやったら死ぬんだ、割と本気に」

あと、なに一人世界旅行してるんだよ、混ぜろよ俺も、とレザード。


「ああ、永久化のテストに飛行した時のお土産的な何かだから、さすがに連れてけなかったねぇ」

二時間は飛び続けてたからねぇ、結構場所もうろ覚えだー、とメリウ。


「んで、なにかあったん? 本気で邪魔しにきただけなら心臓盗むが構わんな?」

やめて、即死技はやめて! と懇願するメリウにNOと言うレザード。


「らめぇ、ちょっとしたお茶目で襲いかかっただけなのー、悪意はなかったのー。 エロい状態にしてスクリーンショット取って痴ロリンに流そうなんて考えてなかったのー」

語るに落ちたメリウは、迫り来る心臓盗みに心臓のない生き物で対抗・・・あっれ、スライム万能じゃね?


「お前を殺すためだけに高位殲滅魔法とか取りたくなってきたな」

無属性の範囲魔法なら逃げも喰らって再生も出来まい・・・と、暗く笑うレザード。


「とまぁ、本・・・冗談はここまでにして、はいおみやげ」

おい今本気って言いかけなかったか?というレザードの視線をスルーして、一本の短い棒を差し出すメリウ。

大きなスプーンと言った感の棒であった。


「なんぞこれ?」

一応受け取ってみるレザードだが、使用法がわからない。

近接武器だとすると使い方がグロ方向に行くしなぁ、と首を傾げる。


「あー、長々コントもしたくないんで言うね。 それ投石機」

<流星>セットできるように溝も入れたから使ってみて~、と空飛んで去るメリウ。


「変なもん作ったなぁ、あいつ。 こんなんなくても今のままで充分・・・」

試しにそこらへんに転がってる石ころをスプーン部分にセット、えーっと、あとは柄握って、こうして投げると。

びすっという音とともに、石を投げた先の木を貫通。

距離、威力共に、明らかに素手の時より強化されていた。

あっれ、凄くねこの棒。

ちなみに、メリウが言い忘れていたのだがこの棒。

槍も、投げられる。




歯車を細かに削り出す。

実際にやったら手が震えてしようがないという作業もゲームなら割とラクチンだぜ!


「ぐぅぅ、苦しい・・・目がっ 目がぁ」

眼精疲労で悶絶するジオの中の人。

趣味的にさっき言った機械時計の作成にチャレンジしているのだった。

適当にそこら辺に転がってる本から拾ってきた設計図をもとに、金属塊から部品を削り出しては噛みあわせ、微調整を繰り返す。


「もう完成品より材料の規格作ってそれのレシピを買い集めたい気分ですなぁ」

休憩も兼ねて掲示板へ。

競売検索レシピ、と。


「既に機械式時計レシピが存在する・・・だと・・・?」

詳細情報を見るジオ。

作った奴は本職か!? と言うレベルに作りこまれた懐中時計がそこにはあった。

加工レベルは・・・二桁超える・・・だと・・・?

材料は・・・プラチナ・・・? 金・・・? 銀でなくミスリル・・・?


「見なかったことにしましょう、うん」

ああ、そうかー、レシピが出来るって言っても、加工難易度が跳ね上がって実質量産無理って流れかー、と肩を落とすジオ。


「結局はコツコツ自分に合ったレベルで作っていけってことですかなー」

ゴキゴキっと首を回して鳴らすと、ジオは再び地味な削り出し作業に戻った。




竹林作成完了、成長促進剤にて第一期収穫可能・・・収穫。

乾燥工程を経て加工に移る。

竹胴部分を縦方向にスライス。

繊維だけを取り出し、それを編みこんで布形状に加工。

それを何重にか重ね、整形。

素体完成、これに今度は竹板合板を用いて装甲付加。

繊維方向を何重にも変更した積層合板使用により、対刃性強化。

何度かの試作を繰り返し、不満点を削り取っていく。


「うし、うし、うしっと。 完成ー。 レシピ作成ポチッとな」

つかれたー、と、伸びをしつつ、メリウが布の服+1の上に着込んだ真竹アーマーを軽く叩く。

軽い音をさせつつ鈍色に光る竹アーマーが硬くしなやかな感触を返してくる。


「塗装関係は作った人の自由にしてもらえばいいとして。 漆とかでやったら綺麗になりそうだね」

鎧を着たままレシピ片手に掲示板行き。

安価でレシピを放流してみることに。

加工レベルは初級。

初心者用とかに使われるとイイなぁ、的な事を思いつつ、メリウは皆と合流しようと・・・ふと時計を見ればもう結構な時間で。


音声チャット経由で皆に別れを告げ、本日はここまで、ということに。


「「「「おつかれーぃ」」」」




モノを作っていると不思議に時間が過ぎてるもので。

はてさて、今回のアップデートで世界はどんな方向に傾くか。

ぶっちゃけ、銃器は登場するだろうなぁ。

内燃機関とかが生産できるとするなら、一気に産業革命飛び越す勢いになりますしね。


そんなこんなで、今回はここまで。

また、そのうちに~

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