成長強化も楽しいもので 3
試してみて初めて分かること。
実感、違和感、その他諸々。
それを積み重ねて無駄が研磨され、身に付くそれが経験と呼ばれる。
知っている、と、経験がある。
似ているようで、差は歴然である。
知っただけで出来ると思ってはいけない。
主に人は手によって行動作業を成すわけだが、断言しよう。
手には記憶力が存在する。
正確には脳で云々、であるが、一言で表すならそうなってしまう。
体が覚える。
手が勝手に動き出す。
行動の反復によって反応が反射に近づき、同等になる。
頭で考えることが引き金にならずに、思ったときにはすでに終わっている。
長々となに言ってるんだ?
暑さでやられたか?
ここまでお読みの人はそう感じられただろうか。
・・・その・・・とおりだぁ・・・・
っと、違った。
つい本音が出た、失敬。
で、建前を言うと、だ。
今回は実際やってみて実感し、経験に至るいつものメンツのお話。
題して ひと夏の経験~エロいことしてぇ~ をお送りします。
あつぅ~
奥義その1取得を経て、その2取得に挑むシオンの姿があった。
社会人同士のパーティだと休日が合わないなんて日常茶飯事よっ、とばかりにソロプレイ中。
今までの苦労は何だったんだろう、的にガツガツ貯まっていく奥義ポイントが嬉しくもあり、もっと早くに情報欲しかったっ・・・とホゾを噛みたくもあり。
そこら辺で葛藤しつつも、シオンの手は止まらない。
訓練場の巻き藁を複数個並べて、一番前のそれに剣をカスらせたその先でのカマイタチ発生、いわゆるパート2の奥義化訓練邁進中。
組み込み流派技能は<先の先><鎌鼬>の二つ。
スタミナ消費的には<鎌鼬>のみとなるため、奥義化するメリットがないと思われていたこれであるのだが、奥義取得、その後の記念乱発を経たシオンが経験則として導いた結論が、あった。
曰く、
「奥義化すると、技の出が早くなる」
何故か、という結論は出ていない。
流派技能の複数回判定が一回判定になるせいでそうなった、とか、単に奥義化すると早くなるんじゃない? 的な投げやり推論もあった。
それの実証もかねて、シオンは二つ目の奥義修行をしているわけである。
その結果がでるのは少なくとも一月以上経た先であるが、千里の道も一歩から、とばかりに。
第72剣聖の修行が続く。
その違和感に気づいたのは偶然だった。
発展途上の<分身>訓練を行っていた際の、小さなそれは繰り返し感じる度に強まり、ついにその尻尾を掴むに至る。
「面倒だけど・・・ステップ踏み続ければ最初のスタミナ消費だけで何とかならね、コレ?」
<分身>技能開始時の目押し的な操作を常に心がけることにより、常時<分身>維持の可能性を発見するレザードであった。
ただ、普通に面倒なのだが。
アクションRPGで戦闘中ずっと格闘ゲームの必殺技コマンドを入れつつ色々する・・・的な何かと思っていただきたい。
正直常人には、不可能である。
が、しかし、レザードの中の人はいわゆるソッチ系に明るく・・・。
「タンタントンタンタンタンタンッ、って感じだねぇ。 三体くらいなら維持するのはラクチンかね」
と、意味不明な供述をはじめており、精神鑑定の可能性も示唆されかねないレザードであった。
宗教~裁判~。
ちゃ~ちゃ~ちゃらっ ちゃららちゃ~ちゃちゃ~。
宗教裁判っ、シましょうかっ。
いや、そんな愉快な流れじゃないから。
ジオは周囲を囲む裁判官達・・・いわゆる神様的な何かNPC・・・の厳つさに、タダ、無言。
今回の罪状は、他者から自分の神が教えぬ魔法を習ったこと。
何度かやっちゃってる事柄ではあるが、今回は運悪く裁判スルーまで神様的点数計算を落とせず、あえなくお白州の場にしょっ引かれたわけである。
「ふむ、何やら裁判長らしきNPCが小難しいこと言ってますけど、要は祈って成功出せ、と」
罪状によるペナルティを加味して、成功確率は・・・あっれ、案外悪くない?
いや、むしろ・・・これは。
「ヌルイ・・・だと・・・?」
今まで割とスルー出来ていたため必要以上に恐れていた裁判であったが、コレならば・・・。
いやいや、落ち着けジオ。
大きなマイナスを食らう可能性は否定できないんだ・・・しかし、この成功率なら、それは普段のこのゲーム的生存確率よりよほど高くはなかろうか・・・?
ジオは巨体を折り曲げるように跪き、技能<祈り>を行使。(敬虔なポーズで成功率アップだ!)
ささやき・・・いのり・・・えいしょう・・・念じろぉァ!
<祈り:成功 ジオは赦免されました 裁判所から退出します>
神の法廷、ヌルく解散。
自神の神殿に戻されたジオは、まるで新世紀の神にでもなったような、悪い笑み。
「裁判・・・恐るるに足りずっ・・・とか言うとフラグ立ちそうなので、コレまで通り謙虚に行きましょうね」
誰にともなく言い訳するジオであった。
<・・・チッ>
ああ、これは、ひどい・・・。
メリウはボチボチと成功するようになってきた<永久化>魔法の実験中。
あると知ってから色々調べたが、ここまで酷いとは。
魔法使いたるもの、コレを使えて初めて頭に「大」が付くよねー、とは掲示板魔法使い板で見かけた言葉か。
ああ、確かに。
今、自分、大魔法使いの入り口に立った気がしてくるっ。
「自分もジオみたいにMP腕輪買い漁らないとなー」
メリウが普段より上限の削れた最大MPゲージを見つつ、呟く。
実験に使った魔法は<飛行>。
普通なら長くとも一時間に満たない程度で切れる魔法を<永久化>してみた。
「ああ、このそらは じぶんのもの・・・」
既に飛行開始から二時間。
一人ブルーインパルスごっこをしても尽きることない<飛行>が、メリウの脳にイケナイ汁をドバドバ放出する。
無駄にスライムになって高空から地面に突っ込み「自分メテオ」ごっこしつつ着地、爆散、収束、変身解除。
クラッシュから復帰するマッハライダーか貴様。
「あー、でもこれ、町中で人が近くにいると邪魔になるかなー」
自分の周囲に渦巻く黒い風のエフェクト。
結構派手目のそれが常時あるのも面倒であるし、<永久化>する魔法の種類によっては害悪を撒き散らしかねない。
「流石にオンオフ機能とかはないかー・・・そこまでおいしくはないよねハハハ」
メリウは悲しく笑うと<飛行>魔法をキャンセル。
魔法アイコンがカチッと消え・・・・な、い・・・?
いつもなら完全に消えるアイコンが、半透明で残っている・・・だと・・・。
メリウは恐る恐る半透明アイコンをクリック。
瞬間、ブワッと溢れ出す黒い魔法の風エフェクト・・・。
オンオフ、可能な模様です皆さん・・・。
「「「「と、いうわけだったのさ」」」」
顔を付き合わせての第一声がそれだった。
各人が試して気付いたことがそれからの話題である。
「ひとまず整理すると、奥義は技が早く出て分身は維持できれば消費が抑えられて宗教裁判はそれほど怖くなくて永久化魔法は外道だった、と」
シオンが一息で皆の結論を言い切った。
無言で頷くいつものメンツ。
各人の頭の中で、いろいろな思惑が交錯し始める・・・が。
「ひとまず・・・ワチキの武器に<研磨>を<永久化>してもらおうか、メリウ」
「あ、俺も俺も」
「ウチは<聖防壁>を・・・」
お手軽強化にワクテカのメンツ。
「らめぇ~そんなにまとめてはらめぇ~自分のMP無くなっちゃう~・・・<永久化>してる間」
その鷹のような眼光に押されつつ、何とか言い募るメリウであったが。
「「「腕輪でもハメれば解決じゃね? 買っちゃる買っちゃる・・・かわりに、わかるね?」」」
「は・・・い・・・」
もうメリウは、両腕から鎧の如き腕輪群が外れない定めの模様。
わーい、MP腕輪がたくさん手に入る(予定)よ! ヤッタネ・・・奴隷の証・・・?
レ○プ目で虚ろに笑うメリウ。
状況だけ見れば痴ロリンが来かねない。
「まぁ、奴隷・・・じゃなかった、メリウにはそのうち働いてもらうとして。 集まったし何かするかね」
シオンの号令のもと、いつものメンツは適当に町クエストへ。
「うへぇ分身、えげつねぇー」
「奥義かっちょいー、特殊エフェクト付くんだったっけ?」
「これが・・・飛行・・・っ 教わってよかったっ」
「もう自分のMPは瀕死よ! ってか貴様ら腕輪さっさと寄越してくださいマヂで」
お試しという名目でごま油のように絞られた奴隷の悲嘆が木霊し、終始和やかにその日は解散したという。
後日、永久化された<爆炎壁>に搾取者達が放り込まれるのは、まぁ、お約束。
それを魔法剣で切り裂いて出てくる剣士やジャンプで飛び越えてくる格闘家や光の壁で突き抜けてくる神官がいるのも、まぁ、お約束。
その流れで第二回大怪獣メリモス討伐戦の流れになるのだが、それもまぁ、お約束ということで。
そんなこんなで、今回はこれまで。
次回、生産がさらにアップデートされて面白いことに。
おいおい、細かすぎね?
せっかくだから俺は赤い扉を選ぶぜ!
自分、いつも思ってたんだ・・・竹アーマーって、現実的にアリなんじゃないかって。
・・・珍しく、次の話はこの流れで書いてますれば・・・。
また、そのうちに~ ノシ