表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/54

金の亡者も楽しいもので 2

迷宮に潜ってばかりだと題名違いになりかねないので、今回はパーティメンツが揃わなかった際のソロ金策などを各人ごとに見ていこう。

金儲け強化週間と称して、合言葉「金がっ・・・ほしいっ」を掲げ日夜奮闘する彼らをご紹介だ。




ケース1 シオンの場合


剣しか知らぬ、というコンセプトのもとに一点上げされてきたPCであるシオン。

超マイナー流派の天才でもある彼は自流派の改造にも余念なく、元流派を原型無いまでに魔改造完了。

いわばシオン流とでも言うようなものを完成させていた。

我流流派作成が面倒なこのゲーム、いろいろな手順をこなさなければ学べもしない高位流派よりPC間で取引可能な強力な我流流派は引く手数多である。

しかし、個人対個人での師弟関係にて流派の取引には幾つかの問題が発生する。

一つ、師匠側の修行ポイントが足りなくなる。

一つ、多人数に教える場合は個人道場建設の必要が出てくる。

一つ、どう考えても目立つ。

など、など。

全ての労力を自分の剣術強化に回したいシオンにとってはまさに本末転倒の結果しか残ってないわけで・・・。


「あー、師匠になってガッポガッポ作戦は使えねぇなぁ・・・」

そうボヤきながら左右の剣が不可視の軌跡を描き、襲いかかってきた子鬼を容赦無い残骸に作り変える。


結局、難しいことは考えないことにした彼は。

スタミナ温存かつ防御不能レベルの<先の先>重ね掛けを以て。

ただひたすら、下位クエストを修羅のごとくにこなしていたのだった。

コツコツ地味に積み重ねたその回数と報酬は、決して馬鹿に出来ない額になっている。


「んー、やっぱ村焼きうちのをグルグル回してボスから魔法剣むしる方向にするかー」

人数多いから面倒は面倒だけど目的は金だしいいかー、と、最悪死亡した場合を考えて回収班NPCと契約を結ぶ。


それじゃスタート、ポチッとな。

シオンは気楽に、過去四人がかりだったクエストへ足を踏み出した。




ケース2 レザードの場合


器用さ突出型PCであるレザードは、小金を稼ぐだけならば軽業一つでどうとでもなる。

しかし今回はいかに量を稼ぐか、が主題である。

なんだかんだでパーティ組んでの狩りにはそうそう勝てない。

な、わけで。

面子の揃わぬ場合、レザードは適当に掲示板前で暇そうにしている他PCに声をかけて野良パーティを組んで戦っていた。


「んじゃお先ー」

先制を取ったレザードが周囲より三歩早い速度で敵に突貫。

背後で「勝ったな・・・」「ああ・・・」などと野良パーティ面子の声が聞こえたが、レザードはサクっと無視。

太もも辺りに垂らした右手が、ヒュッと風切り音を立て<流星>を射出・・・着弾、爆発。

射出の勢いのままに左手に握っていた槍に右手を添え突貫槍形態に移行。

敵の残骸が雨のように降り注ぐのをシカトし、残敵に向かって水平跳躍。

メリウあたりが「投槍、ジャベリンって感じだよなぁそれ」と評したレザードの<自分ミサイル>である。

走行速度とジャンプ力を総合した威力を纏い<先の先>が多重付加されたそれを、そこそこレベルの町クエストモブが躱せるわけもなく。

切っ先が刺さった、と思った瞬間には敵を貫通。

体の大きな人食い熊が、頭から下を失ってグロく散った。


「残りはー?」

地面を派手に削りながら止まったレザードが振り返った先には。

「残り? ねぇよそんなの」「むしろ少しは残しといてください」「これだから<大砲玉>は・・・」

一気にやることを持って行かれた野良メンツが、少々ふてくされて残されているだけだった。

てか、大砲玉って初めて聞くんだが何よその名前・・・

若干の気まずさを漂わせつつ、皆は報酬の確保にしばし勤しむのだった。




ケース3 ジオの場合


純然たる趣味で癒しを無料散布するジオであったが、流石に自身唯一の生産スキルで作成された薬剤に関しては別であった。

高火力のメンツに囲まれている恩恵で強敵素材には事欠かぬ環境である。

スキルレベルもソコソコとなっており、かなり高位のポーションなどが質、量ともに揃って生産できるように成っている。


「ウチとしてもそこまで叩かれますと・・・」

声色は恐縮しているような感であるが、態度は真逆であるジオが、鼻の穴で相手を見るように反り返った。

薬物販売の露天にてソファに腰掛け、客の座るソファーとの間にある簡易テーブルにドッカと足を乗せている格好だ。

商品は竜の血を原料に作られた、スタミナ増強剤。

買取を求めた客は、今対峙している一人で最後であった。

「そこをなんとか・・・これから私達は難クエストに挑むためにどうしても必要なのです・・・」

お頼み申す、お頼み申す。

土下座せんばかりに頭を下げる客を見て、ジオの心が少々動く・・・


「いや、価値ない頭を下げられても困ります。 情でも動きません。 そもそも本当に価格を叩き過ぎなんですよ貴方」

・・・動く、訳はなかった。

あくまでジオの商売は適正価格をモットーとしている。

つまり、追い返された連中を含め、客皆ともに、只の転売野郎である可能性が高い。

ちっ、と、小さく聞こえた舌打ち音。

頭を上げた客は忌々しげにジオを睨みつけると、足早に去っていった。

その後ろ姿を見送りながら、ジオはため息ひとつ。


「メリウの勧めに従って掲示板経由の取引にしましょうかね・・・」

彼が楽しげに露天をやっているのを見て、自分も試しに、と思ったのがいけなかったのかもしれぬ。

自嘲気味に露天を片つけはじめたその矢先。

「ジオさん、売り切れちゃいましたか?」

息を切らせたPCが声をかけてくる。

辻ヒール友の会で見知った顔の一人である。

ポツポツとジオクラスの回復魔法使いも現れ始めている有能同好会の中でも<蘇生>魔法を手に入れた稀有な一人であった。


「あ、いえ、足元見る方達ばかりだったので掲示板取引にしようかと思っていたんですが」

もしかして、お買い上げいただけますか? と、冗談半分で聞いてみるジオ。

それに対して迷いなく「はい、あるだけください」と返答が返り。


「なんのことはない、顔見知りから営業かけてみるべきでしたねぇ」

照れ笑いしつつ、ジオは薬剤を手渡す。

トレード窓には、相場価格を上回る金額。

あ、ちょっと多いですよ・・・と言いかけたが、それより早くトレード確定。

「どうもー。 <蘇生>威力が中々でなくて生き返った人のスタミナ減っちゃうんで困ってたんでー・・・・」語尾の方はもう聞こえなかった。


「まぁ、結果オーライ、でいいんでしょうかね・・・」

ジオは見習い商人に成長した。

運が上がった!(ような気がした)




ケース4 メリウの場合


淫魔おメ子が出てくると思った諸君は腹筋な。

まぁ、実はおメ子さんのチャH屋とか書いてみたんだけどあまりに酷すぎてボツにしたんだがね?


「キープ・・・キープ・・・ヒット・・・ロス・・・<全究回復>・・・ロス・・・熊、今更お前で相手になるとでも?」

小川の辺で延々と地味な作業を続けているメリウ。

致命失敗フラグをオンにしているため、それなりの確率で難敵が現れて襲いかかってはいるのだが、流石にいつものメンツと鍛え上げたスキルは裏切らない。


<交叉法 居合:決定成功>


背後から襲いかかるチャランボ熊を一刀のもとに切り伏せ、流れるように剥ぎ取りを行い、また地味な作業に戻る。

延々とそれを繰り返す。

で、その作業の正体はというと。


「おっちゃんまた買い取ってー」

返答の帰ってこないNPCへの挨拶と共に、無限袋から吐き出される大量の酒、酒、酒。

<醸造>魔法によって水から変換されたもの、であった。

本来は魔法の威力が上がると生成量が減り、代わりに質が高くなり・・・有り体に言うなら引き取り価格が高額になる、のだが。

ある一点を超えると、その関係に微妙な齟齬が生じてくる。

質が上がるギリギリの高さで威力を出した場合、生成される量が若干狂った量になるのだ。

本当ならば量が多すぎて動けない、邪魔だから捨てるのコンボに陥るところであるが、無限袋の存在が全てを台無しにしたわけで。

かくて、気が向くまで作成→NPC売却を繰り返すハムスターの完成である。

正直、気が狂いそう。

たまに訪れる致命失敗強敵が唯一の清涼剤である。

嫌な清涼剤もあったもんだ、ペッ

・・・なぜか、熊しか来ないのは何かの悪意が働いているように思えてならないが。


そんなこんなで、あー、おー、もけけけー、と奇声を発しながらハムスターの戦いは続く。




そして数日ぶりに揃ったメンツ。

各々の稼ぎを聞きながら一喜一憂する。


「シオンとレザードで組めればよかったのにねぇ」

地味に戦って毟る組だしねー、とメリウ。

オイ、お前目が死んでいるのは気のせいか?


「ウチは灯台下暗しでしたねぇ。 商売は難しい」

結局青いとりー、ということですかね世の中、とジオ。


「なんだかんだで、全員ソロでもそれなりに稼げるってわかったね」

そういうレザードは既に文無し寸前。

本当に宵越しの金をもたぬ奴め・・・

「目標金額貯まったら使わね?」だと? 正論といえば正論だが・・・何かあった時のために少しはとっとく癖をだな・・・


「で、メリウはずっと死んだ目をしてるけど」

時折窓に向かって仄暗い視線を向けてブツブツ何かを口走っている友人に突っ込むシオン。


「ベルトコンベアーって、いいよね・・・意思なくてもぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる・・・」

いかん、メリウが壊れた。

もう寝ろお前。

死ぬぞ、中の人が。


「あーあー、んじゃ今日はメリウ落ってことで~」

うい、ねる・・・と即時ログアウトしたメリウを見てホッとするレザード。

なんで心に傷を負うレベルでハムスター化したんだ奴は・・・。


「んじゃ、ウチらはなにかやって落っこちるとしますかいー」

シオンの号令に「「おーぅ」」とやる気なく答え、その日三人は適当にクエストを回して解散。




「あー、ハムスター化して3徹したのがまずかった」

盆休みだしねぇ、とのたまったメリウに皆が沈黙するのは、翌日のことであった。




と、いうわけで今回はここまでー。

歳取ると徹夜辛いやねー、昔は2,3徹は出来たんだがねぇ。

後関係ないけど暑さが戻ってきやがったので体調にはくれぐれも注意だぜー、水と塩は必須だ。

無いならポカリでも持ち歩けーぃ。



ではまた、そのうちに。

ノシノシ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ