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金の亡者も楽しいもので 1

なんだかんだで東西南北中央を巡った世界旅行も終わりを告げ、拠点<塔>から離れることしばしの石造り二階建て<いつものメンツハウス>に、四人のPCが集結していた。

窓にはカーテンを引き、玄関ホール通称溜り場の丸テーブル上にロウソク一本だけが立てられている。


「ひとまず、<希望>クエストは先延ばしとすることにして・・・まずは、そう、金だ」

一目見てヤバキチだ、と回れ右した特殊クエストを保留にする事を宣言しつつ、シオン。

そして現在自分達に足りないもの・・・というか、必要なものも宣言する。


「金・・・金がっ・・・ほしいっ・・・」

憂さ晴らしの代償で町ぐるみでの鏖殺を食らって野望貯金を無駄に消費したメリウが呻く。

まぁ、自業自得なのでどうでもいい話だが。


「あー、なんだかんだでそうなるわなー。 結構武器やらは拾うけど結局換金して貢いじゃうしね」

神様ポイント高いからなー、とレザード。


「まぁ、仕方ありませんがね。 ウチやメリウは魔法絡みで必須になりますし、シオン達にとっても能力値などを確実に上げる手段ですからねぇ」

ジオが端的にまとめて、リーダーに次を促す。

次、つまりは、どこで、どうやって稼ぐか、である。


「候補はいくつかあったが、地下迷宮か巨人狩りか、もしくは遠出して竜狩りの三択だと思う」

皆は他に何か思いつくか? と、シオンが周囲に問いかける。


「まず時給換算してみよう。 ちょいなちょいな・・・ふむ。 レアさえ出れば竜、なんだろうけどアレやったときはイベントで出現率高かったらしいしアテにならないから、まず竜案は破棄だねぇ」

<変身>を入手した際の貢金に消えたレア竜素材を思い出しつつメリウがザッと概算発表。


「で、ある意味イベント絡みっぽかった巨人とかもそれに似たり寄ったり、かね?」

レザードが頬杖つきつつツッコんでくる。


「んー、ソコラはなんとも言えないんじゃね? イベントっぽいなぁ、と皆が感じただけで、実はあそこのデフォルトがあれなのかもしれないし」

巨人と戦争し続ける国、かー。 そりゃ皆強者じみなきゃ居られないだろうねぇ、とシオン。


「あとは、地下迷宮の方はさほど深く潜ってなくてアレ、というのを考慮すべきでしょうな」

それなりに前になるので記憶は曖昧ですが、と後付けてジオ。


「自分個人的には迷宮に一票。 ぶっちゃけ得体のしれない連中とモブの奪い合いは勘弁ですのだ」

メリウはぶっちゃけた。

言うこと言ったので喉が乾いたグビグビー、と、本日八本目の缶ビールが開く。


「始める前に飲むなよ・・・」

別の意味で酔って吹くぞ、ピューッと。 と言いつつこちらもチビチビやってるレザード。


「ウチ的にはどっちでもいいから、迷宮ってことで決めて良いかね?」

ああ、そういや巨人の方は出入口無いのがメンドイね、とシオン。


「ん、では決まりですな。 目標・地下迷宮。 目的・金がっほしいっ」

ジオが伸びをしながら立ち上がる。

闇に浮かぶ下明かりに照らされた巨体が地味にホラー。


「「「かねがっ! ほしいっ!」」」


その掛け声はどうかと思うんだ。




転送門をくぐってエンヤコラ、氷原横断してやって来ました三半規管殺しこと地下町(メンツ内呼称:名古屋)。

さぁ、迷宮潜っちゃうぞぅ。

転送床踏んでイザ参らん前回終着地点。


「ここが地下三層か・・・なんか上二階とは壁の雰囲気が違うね」

レンガ状だったものから天然掘りっぽい丸石状へと変化した壁面テクスチャにテンションが上がるメリウ。


「一応警戒しながら進むぞー。 おおっとエンゲージ」

言った矢先に敵に発見されるレザード。

頼むからいきなりブレイクは勘弁な?


「ちぃ、早ぇよ!」

左右の剣を引き抜き戦闘態勢に移行するシオン。


「ひとまず近接組が接敵して陣形確定したら防御魔法かけますねー」

ジオは待ちの姿勢。


「んじゃひとまず<爆炎壁>ぶっ放すから、抜けてくる連中お願いー」

メリウが詠唱開始。

ひとまず目視範囲に別パーティとか居ないから撃っても平気だよね・・・?


かくして、閉鎖空間戦闘、開始。




複数の落とし穴、十字路中央に仕掛けられた回転床などが皆の神経を削っていく・・・筈だった地下第三層。

ジオやメリウが罠を発見し、<飛行><瞬間移動>を駆使しての迷宮探索行が続く。

散発的に訪れる敵の襲来も、充分な警戒をもって進む一行には逆にウェルカムなわけで。


「クカカカカ、金がっ・・・重いッ」

重すぎて肩が上がらぬわ、とか言いながら無限袋の中に取得物を放り込むシオン。

この階層に来てはや一時間弱。

エンカウント回数は少なめの五回を数えている。

そういえばメンツ以外のPCに出会わないは、ちょっと意外といえば意外である。


「この袋便利やねぇ・・・人数分無くてもいいのが助かる・・・」

手に入れた当初、生き物とかは入れないのかなー、てーい! とばかりに自分で飛び込んで<即死しました>というハメに陥ったメリウがシオンに倣って宝箱から中身を袋にぶち込む手伝いをする。


「一応周囲警戒はしておきますねー」

敵が落とした宝箱の罠外し、解錠を流れるように済ませたジオが周囲警戒の任にあたり。


「んじゃ俺はその護衛っと」

レザードがその傍らに立つ。


鑑定してみないと正確なところはなんとも言えないが、金貨だけでも既に2000枚を超えた。

魔法の物品らしき武具も数点手に入っていることから、時給金貨+10000枚程、計12000枚ほどと思われる。

・・・ちなみに、大金ではあるのだが、神様に貢ぐと12点にしかならないという・・・。


「ああ、銅の剣を買うのに棍棒やら竹槍で頑張った記憶がリピートされる」

四人で分けたら結局3点じゃねぇか、とレザードがため息をつき。


「まぁまぁ。 一時間でこれってことは、ちょいと頑張れば酷い事になるってことじゃないですか」

愚痴るレザードをジオが宥める。


「うっし、回収完了~。 そろそろ次の階層に行けるかね」

マップを片手にシオンが皆に確認を取る。

この地下迷宮、階層の最大サイズは固定であるらしくマッピングがしやすくて助かっている。


「あとはこの通路の先だけだからねぇ、残り。 ボスがいるんじゃないかね」

警戒護衛で暇していたレザードが、俄然元気になり。


「じゃ、行きましょか。 ひとまずこの階層のボスは何でしょうねぇ」

ジオが少々気持ち悪げに答え・・・3D酔いした模様・・・フラフラと歩きだし。


「そう、この時はあんなことになるなんて誰も思わなかったのです」

変なフラグを立てにかかるメリウがそれに続く。


しばし通路を進んだその先。

ひときわ目立つ石造りの扉がいつものメンツを出迎える。

ああ、ボスの部屋っぽい。


「「「「とつげーき、三層の夕ごはーん」」」」


三層ボス部屋の扉が、蹴破られた。




上半身女性下半身蛇ウヨウヨ、これなーんだ?


<知性判定 失敗 不確定名:蛇女>


まんまかよ・・・と項垂れるジオをよそに、ボス戦開始。

空の槍が使えないレザードは<流星>投擲後、人力によるチャージを敢行。

馬欲しいよなウマー。

<流星>の爆発が上げた煙の中に突っ込み、次瞬響くスキュ・・・蛇女の悲鳴。

煙の中から飛び抜けてきたレザードは素手。

また趣味の磔刑か・・・と、皆が寒々しくレザードを見た。

煙が晴れる。

爆発で四散した下半身の蛇の欠片が床一面に広がり、サニティチェックを要請されそうな有様であった。

レザードの手を離れた槍はちょうど蛇女のヘソのあたりから床に向けて斜めに突き立っている。


「この串刺し公め。 GJ」

飛び退いてきたレザードを褒め(?)ながらシオンが入れ替わりに蛇女の前に躍り出る。

左右の剣が、動けぬ蠢く蛇女に情け容赦ない連撃を浴びせる。

ぶわっ、と、蛇女は青黒い自身の血壁に飲まれる。

返り血を浴びぬように飛び退いたシオンの爪先を舐めるように、メリウの<爆炎壁>が完成。

もうやめたげてよぅ、という感の連続連携攻撃にて、サクッとボス終了・・・。


「とは、行かないようですねぇ」

飛び退いてきたシオンと入れ替わるように前に出たジオが<聖防壁>を展開した。

瞬間、その壁に弾かれる紫の毒液。


「うへぇ、流石はレイド用ボスやね」

シオンが下半身を再生している蛇女を睨めつけながら口笛を吹く。


「殺し切らないと再生されるんだね、分かった」

次は取って置き出すよ、と、レザード。

え? 何出す気?


「ひとまず回復するねー<全究回復>」

メリウが光の雨を降り注がせ、全員を癒していく。


さて、では第二ラウンド、行きましょか?




かくして、第三層終了。

いつものメンツは晴れて第四層へと足を踏み入れるのだった・・・。


「案外あっけなかったねぇ、蛇女」

握ったままの蛇女の心臓を揉みながら言うレザード。


「エグいグロイ、やめれやめれ」

手をパタパタさせつつメリウがレザードの凶行に待ったをかけ。


「いつの間にあんなエグイ即死攻撃覚えやがった・・・」

呆れるシオンが即時トドメを持っていったレザードを苦い顔で見据え。


「メリウの痛感即死とはまた別の、即死部位破壊という感でしたねー。 どなたかに習ったんですか?」

ジオが興味深そうに尋ね。


「ふふふ、ヒ・ミ・ツ」

可愛らしくレザードが笑い。


「「「野郎がやると気持ち悪いんじゃァァァァ」」」

他三人にボコられたのは、まぁ、お約束。


そんなこんなで、本日もいい時間となりました。


今日は、これにて・・・。


「「「「おつかれーい」」」」

お疲れさまでした。




次回、PC間取引の闇に染まるいつものメンツ。


「あんじょう嘗めんといてもらいまひょか? そんな値段じゃお売りできしまへんなぁ?」

似非関西人化したジオを止めるものはいるのか?


「あー、すいません倍プッシュで」

下手下手に出ておきながら超攻撃的なシオンの暴走はどんな結果を迎えるのか?


「? 何もせんなら寝るが?」

我関せず、即時寝落ち宣言のレザードにやることは見つかるのか?


「おせんにキャラメルー、ビールにフランクフルトはいらんかねー」

おメ子さんの移動販売は果たして最大売上を叩き出せるのか?




まぁ、全部嘘なのでまるで別の話やります。


「「「「おいぃ?」」」」


では、またそのうちに。

ノシ

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