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世界旅行も楽しいもので 2

転送門をくぐると、そこは雪国だった。

というか、そんな生易しいものでもなく、氷国だった。

いちめんのひょうが。 いちめんのひょうが。

おっかない都会から早々に立ち去った一行が初ワープゲートを使用して到着した先は、遥はるか北の、極寒エリアであった。


「いぃやぁっほぉぅ~」

レザードの変な脳汁ほとばしる歓声が周囲に響く。

そこらへんに転がっていた板切れに乗って、空から垂れるロープ片手に氷原を駆ける、駆ける。

段差坂を利用して宙に舞い、3D立体形状なトリックを決めて音もなく着地するレザード。


「おーおー、楽しそうだなおい」

ゲームのジャンルなんだったっけこれ? と、半ば呆れ顔に呟きつつレザードのエキシビジョンを見物するシオン。


「動力が人力ってのもアレですけど、まぁ速度は出ますなぁ」

空飛ぶ動力、胴にロープを巻いてレザードにつながるメリウを見上げながらジオ。


「インメルマンターーーン!」

地上に劣らずノリノリに上方向へのUターンなどを繰り返し空中遊泳兼動力となっているメリウ。

あんな挙動現実でやったら有り体に言って死ぬ。

G云々以前に、方向感覚失って地面に刺さる。

あ、刺さった。




なんと驚き地下の町。

北国ゲートの最近接町は、地下深くに広がる大空洞の中に作られていた。

層状に積み重なるその形態は、町というより地下迷宮である。

で、何が言いたいのかというと。


「「「「迷った・・・・」」」」

おのぼりさん? 達が、揃って迷子になったってことだ。

今回は個別行動して無くて良かったね。


「むしろ3D酔いした・・・鳩尾のあたりが、こう、きゅっと」

今にもピューッと吹きそうなレザードが苦しみの声を上げる。


「あー、慣れない場所とかゲームだとあるよねぇ」

シオンはメンツ内で最も3D耐性を持つ男である。

鍛えあげられたそれは、地下町の迷路っぷりにもへこたれない。


「あー、流石に中の人は治せませんな、すいません」

半ば冗談なのだろうが、自身のロールプレイをネタに苦笑いのジオ。


「空飛んで周囲確認ができないのが辛いなぁ、ここ」

最近はデフォルトで飛んでいるため、癖で飛び上がって天井に頭を痛打、頭おさえて落ちてくるを数度繰り返したメリウが恨めしそうに天井を睨めつけている。


町に入ってはや1時間ほど。

数度通過した場所に再びやってきたメンツは、いい加減やらなければならないことがあるなぁ、と諦めた。


「マッピング、しよか・・・」

「「「だねー」」」


なんでこういう多層構造マップって使いものにならないんだろうなぁ・・・階層ごととかで平面出しておくれよ・・・。




右(左)手法が効かない町に苦戦しつつなんとか出入口、主要機関、なんとびっくり地下迷宮への入口などをマップに書き入れ、適当な大通りの一角で休憩するいつものメンツ。

こんな土地柄だからか、衣類系の品揃えが見慣れぬものばかりで面白い。

最近灰色一色に飽きてきていたシオンあたりは、数着毛皮コートなどを購入していたりする。

外見的に凝れるのはいいゲームだよね。


「ただしリアルマネー系アバター、てめぇは駄目だ」

ゲーム内通貨でそれなりの数用意しやがれよなー、ねー、とあのゲームとかそのゲームとかに対して不満をぶちまけたりするシオンおよびメリウ。


「あと、システム的に予め制限しといて追加で金取って開放するタイプとか許せんのだが」

個人的にはもう見限り果てたM○Fとかな。

課金切れたらメールすら使えねぇときたもんだ、アップデートされるのが主に課金周りだけだからクソつまらねぇんだよそんなのに月額払えるか体中の穴から血を吹いて死ね。

メリウがとても現実的な呪詛を吐く。

今はのんびりエルソ○ドとかやってるよ! よ! シオンあたりはアバターに10万くらい突っ込んでお目当て出ずに苦しんでたけど。

あんた、息をするようにアイテム課金しなくてもいいんだぜ・・・?

え? F○Zとか含めると車買えてる?

ちょ、現実を振り返るな! 死ぬぞ!


「えーっと、まぁ、なんだ。 思うところは色いろあるだろうが、そのへんでな?」

通りがかるPC達が、メンツの会話を拾って頷きながら通り過ぎていく光景を横目にレザードが負の想念を撒き散らすシオンとメリウ・・・というか主にメリウの中の人にストップを掛ける。

ちなみにこの漢、エル○ードにてサックリ高額取引アバターAD羽某女ナソード用をガチャガチャ的くじで引いた挙句に「俺これいらね」と言って運のなかったシオンに躊躇なく送りつけた強者である。

「スパッとそんな行動が取れるレザードに嫉妬の念を禁じえない、そんな綺麗な目で俺を見るな」と、シオンがのたうち回ったのは言うまでもない。


「まぁ、とっくに終わったコンテンツなんてどうでもいいじゃないですか。 私はFF○を続けるよ!」

やったこともないゲーム未満をネタにするジオ。

朝霧○巫女のカバー剥いだ背表紙にオワコンの巫女「私は巫女を続けるよ!」とか書いてあってめっさ吹いたのはいい思い出。

続きはまだですかいのぅ?


そんなこんなでネトゲに対する不平不満を吐き出してすっきりしたところで、そろそろこっちのゲームやろかー、という流れに。

この町のウリはなんだろうねぇ、と、道行く地元PCに聞いてみると「ああ、地下迷宮かな。 まだ底まで行った奴いないみたいだよ」と返ってくる。

奥さん、聞きました?

迷宮ですってよ迷宮、しかも未攻略!

まぁ、さっき入口見たけどさ・・・。


「んじゃ、今日は北国地下迷宮挑戦だー」

「「「おーぅ!」」」




蝶・深い。

何この迷宮、WIZを彷彿とさせる十メートル四方が一区画の構成だ・・・!

現在第二層目。

ぶっちゃけ回復永久機関が完成していなかったらどうにもなっていない。


「どう考えても人が足りない・・・」

具体的に言うとあと二人くらいか。

マジでWIZライクになってきやがったぜ・・・! と、変なゲージをギュンギュン貯めるメリウ。

ノーリセットワードナ殺しとかが懐かしい。

マ□ール失敗で石の中、なくした村正返して!


「でもまぁ、長期戦に向かないこのゲームでこの設計ってことは、かなり高レベル向けなのかもねここ」

至極冷静に状況分析をするシオン。

ほとんどの近接系モンスターを左右の剣で抵抗もさせずに斬り伏せる男は言うことが違う。


「そろそろ回復エリアとか出てこないと、ぶっちゃけここってレイドエリアだよねーってことだよね」

要するにパーティ単位のパーティ、軍で言えば中隊とか大隊とか。

どう考えても単パーティじゃ無理ゲー迷宮じゃねぇか、本当にありがとうございました。 と、レザード。


「まままぁ、二層という浅さで、結構なお宝手に入れてますし、良としましょう」

お金に困ったらここに潜って稼ぎませんか? と皆に言うじオ。

貴方が宝箱を華麗に開けてくれたからそういうレベルになったのよー、ってか、いつの間に<解錠>魔法なんて取った・・・。


いつものメンツが進む先に、口を開ける次階層へのゲート。

そして、その前に鎮座する階層ボス。

牛に孕まされたっていう神話のアレ。

あっれ、ってことはここ毎回マップ変わったりするのかな・・・?

牛頭のマッチョ、巨大な斧持つミノタウロスが、いつものメンツに襲いかかった!




結局牛ハーフを瞬殺したメンツは剥げるだけを剥ぎ拾うものを拾い隠し宝箱(ジオが発見)の中身も美味しくいただき、三層目に移動してから階層移動ゲート経由で迷宮入り口に戻ることに。

今回の成績、三層到達。

階層移動ゲートに入って確認したら、次回からは到達した任意階から始められる親切設計。

おお、地味に階ごと攻略できるんだねぇ、とおいしい狩場確保に沸くいつものメンツ。

毎回イチからやってたら時間なくて行けても三層途中だよなぁ、と皆して苦笑い。


そんなこんなで本日もいい時間に。


「次回! ゲートをくぐるとそこは・・・!」

次回予告のようにシオン。


「なんと地獄の一丁目、モヒカン達が老人虐待に手を染める世紀末的な展開!」

レザードが乗っかり。


「そこに現れた胸に七つの傷を持つ男!」

ジオが適当に続き。


「俺の名前を言ってみろ!」

おいぃ、ジ○ギかよ!

皆にツッコミを受けつつ、メリウが落として終了。



それでは、おつかれさまでした。

またその内にお会いしましょう。


ノシ

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