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05 今日消えた
その日も他愛ない時間を過ごしていた。
前触れなんてなかったはずだ。
その時がきたのは、突然。
目の前で、彼女が消えた。
ふっと、儚く彼女の姿が揺らいだ。
それで最後だ。
劇的な別れのシーンもない。
伝言も遺言もなかった。
話し声がとぎれて、公園に静寂がみちる。
まるで彼女なんて人は最初からどこにもいなかったように。
世界から人間が一人消えたというのに、何も変わらない。
それはありふれた事だった。
この病が確認された時、最初の一人の時はきっと大騒ぎしたのかもしれない。
けど、皆が皆そうなったから、もう慣れたんだ。
僕も。
ただ、その現実を静かに受け止める。