02
トウコとルミラは食べ歩きの最中、以前に会った魔族のムディーに声を掛けられたのだった。
ルミラは魔族の二人を見て警戒をしている。
それは二人が恐ろしく強い事が分かるから。
「ヌシには奴等の強さが分からんのか!」
「いや、俺人間だし、そう言う訳の分からん能力とかねーわ…えっ? 何? お前ひょっとして、ビビッってんの?」
ムディー曰く、魔物が魔族を恐れるのは本能のようなものとの事。
ルミラが必要以上に警戒しているので、そのまま立ち去ろうとすると、ムディーはトウコに話があると言う。
トウコは暫し悩んだ末、ルミラと別れ魔族の二人と歩き出した。
暫く歩きトウコが話を切り出すとムディーはとんでもない事を言い出した。
「トウコさんは魔族でありながらフェスに参加しているのですね」
「えっ!? いやいやいや! 魔族じゃないつってんだろがっ! ま、まあ…魔法少女でもないけど…だが! 人間共が勝手に魔法少女認定してるから問題無し!」
「ふむ…トウコさんの出方次第で、この事をフェス運営委員会に…」
ムディーは何やら意味ありげな感じで言った。
「な、何ぃーっ!! この、鬼! 悪魔! 魔族! どうやらお前等の口封じをするしかないようだな」
「ほう…我々の口を封じると…トウコさんに出来ますかな?」
「余裕だ。しかし一つ問題が…」
トウコはそう言うと暫く考え込んだ。
この食いしん坊魔族を黙らせるには、今まで二人が食べた事が無い物を与えるのが一番。
その食べ物に心当たりはあるものの、問題はそれがトネシンの街でしか食べられない事。
トネシンはここからは非常に遠いので魔法で移動するしかないので悩んでいた。
ムディーはトウコに黙り込んだ理由を尋ねた。
「トネシンに行けば良いのですね?」
ムディーはそう言うや否や、トウコが答える前にトネシンに移動していた。
一瞬の出来事にトウコが驚いていると、テレポートと同様の効果がある道具で移動したとの事だった。
トウコ達は早速食堂へと向かった。
「こ、ここは…食堂…でしょうか?」
ムディー達は普段、大きな食堂や高級食堂を利用する。
今回トウコが連れてきた個人でやっているような小さな食堂には入った事がないので戸惑っていた。
店に入るとトウコは慣れた感じで店主にいつもの裏メニューを三人前注文。
数分後、出てきた料理を見てムディーは暫く固まってから口を開いた。
「こ、これは…ブタの餌でしょうか…」
「違うわっ!! この失礼魔族!」
出て来た料理はごはんと何かを擂った物だけで、料理とは言い難い物だった。
トウコは食べ方を説明すると、まずは自分で食べてみせた。
美味しそうに食べるトウコを見てムディーとマルーはお互いを見て覚悟を決めた表情で恐る恐る食べ始めた。
すると…
「「ギャーッ!!!」」
二人は突然大声で叫んだ。
「ど、毒で我らを亡き者にしようと!」
「いやいや違う違う。多少辛いが慣れると病みつきになるぞ。こういうシンプルなの食べた事ないだろ?」
ごはんを食べつくしたトウコは二人をジッと見つめている。
二人は再度お互いの顔を見てからまた食べ始めた。
今度は辛い事が分かっていたので無事に完食したのでトウコは感想を求めると二人は満足した様子だった。
「じゃあこれでフェスのアレに余計な事を言うのは無しって事で」
トウコがそう言うと最初から言うつもりは無かったとムディーは言う。
どうやらムディーはトウコにお勧め料理を聞くのが目的だった。
ムディーは何かお礼をしたいと言うと、トウコは間髪入れずムディーが持ってるテレポートと同様の効果を持つ道具を要求。
しかしそれは1つしかないので却下されたが代わりに別の道具を渡された。
その道具とはムディーとマルーを一度だけ呼び出す事が出来る道具だった。
「いやいや、お前等を呼んで俺に何のメリットがあるんだよ…」
「ほっほっほ。ひょっとしたらトウコさんがピンチの時に手助けが出来るかもしれませんよ」
トウコには分からないが、この二人はルミラが怯えるほど強い。
手助けしてくれるならと保険の為に貰っておくことにしたトウコだった。
次の日。
スターワールドフェス武部門、七日目はナガワ国のレナ対ヨウト国のリシア。
二人共魔法少女らしく攻守の魔法を多用し、激しい戦いを繰り広げた結果リシアの勝利に終わった。
相変わらず他の魔法少女の戦いに興味が無いトウコは、皆が珍しく用事で居ない為、一人街中を彷徨いていると突然背後から声が聞こえた。
「やっと見つけました!」
トウコが振り返ると、そこにはウキョウ国のオリビアとシエラが立っていた。
「…」
トウコは二人を見て、またやっかい事を持ってきたと思い、見て見ぬふりをして立ち去ろうとすると、シエラに呼び止められた。
「何で無視するんですかっ!」
「いや、だって一人居ないし、どうせまた誘拐でもされたんだろ?」
シャノは明日の試合に備えて居ないだけとオリビアが丁寧に答えてくれた。
トウコは嫌な予感をしながらも声をかけてきた理由を尋ねるとトカゲ型魔物の討伐に協力してほしいとう言う事だった。
「ザックリすぎるっ!」
トカゲ型の魔物は数多く存在するが普通の魔物ならばこの二人なら余裕で討伐が可能。
しかし、そんな雑魚魔物討伐を敢えて自分に依頼してきた事を考えると、トウコはツッコまずにはいられなかった。
怪しい依頼なので詳しい事情を聞くと、どうやらウキョウ国のオリハルコン採掘場に住み着いたメタルトカゲの討伐と言う事だった。
トウコがプレイしていたゲームにもメタル系のモンスターは存在し、魔法が効かないのが特徴。
それでも、この二人ならば問題無く倒せる魔物。
更に話を聞くと、手練れを数名向かわせたが全く太刀打ち出来ず、オリビアに討伐依頼がきたのだった。
それで不測の事態に備えてトウコに協力をお願いしてきたのだが…
「うーむ…まあ暇だし協力するのは吝かではないが…出張費は請求するし俺が手を下したら更に手数料を請求するからなっ!」
「がめつい奴じゃのう」
ポン太が例によって口を挟んできた。
「お前はこの街の清掃活動でも一生やってろっ!」
オリビアが当然報酬は支払うと言うや否やウキョウ国へテレポートしていたのだった。