5
立川は、ワイングラスを置き、
ジーっとタケルを見てから、ゆっくりした口調で話し始めた。
「…おまえ、本当に昔から、『省みない』性格だったが、己がバイカーV2
だったのは、覚えているだろう…?」
もちろん、僕は覚えていた。高校卒業後、役者キャリア一発目の大役抜擢だった。そのファンは幅広く、その熱も半端ない、『仮面バイカー』、テレビシリーズに、僕は主人公バイカーV1の相棒役として、バイカーV2を演じたのだ。セリフも多く、変身もする役だった。
タケルは、立川に言う。
「もちろんですよ。回りには今だに『初めての役が人生最大のキャリアだったな…。』と、たまに茶化されますが、それが、どう鞍川さんと関係あるんですか…?」
立川は、やはり、タケルをしっかり見据えて話し出した。
「…鞍川はね、貧しい家庭で育ち、中卒で、スーパーマーケットで働きはじめたんだ…最初は、バイトだったが今は、そこの正社員で青果コーナーのチーフに、なっている…。あいつ、昔から、『仮面バイカー』が好きで好きでな…どのシリーズも毎回、食い入るように見ていて、見ていて、アイツ、励まされたんだ…。」
タケルは、聞いていた。