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タケルは、自身の撮影後の演技を一切、見なかった。
監督が、
「カット!オッケー♪」と言う。
彼には、もう、それで、その演技は終わりなのだ。
それら映像化で、みんなで試写とかの場には、
いろ、と言われたら、いるし、
何か己の演技に尋ねられたら、
応えたが、まずもって自身の演技を
見返ることは、なかった。
それには、タケルなりの言い分が幾つかあって、
一番大きいのは、『撮り終えたものは基本、変えられない』という彼なりポリシーで、
だからこそ、出せるだけの演技を彼は、その時、その時で目一杯、やってきた…。
それで今日まで、やってきたし、
タケルは本日も、そのように撮影を終えて、
バイクに股がり、エンジンを吹かすと颯爽と現場を後にした。
その日、立川先輩と夕飯を食べることになっていた。