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タケルは、俳優であることに間違いはない。
ただ、
知名度が低かった。
それでも、
プロダクションは、タケルに俳優の仕事を持ってきてくれ、タケルは、それをベストでこなす…。
その生活が彼の20年だった。
タケルは、人と最低限の交流しかせず、家族すらも疎遠である彼の交遊は、
ほぼ、一人、
立川先輩だけだった。
彼は、高校が同じ二個上の先輩で、
先輩とだけは、不定期で会っていた。
『ほぼ一人』…というのは、
ここ五年くらいで、
立川先輩が中学で同級生の鞍川さんを連れてくることがあるからだ…。
はじめて、鞍川さんと面識を持ったとき、
タケルは、
(暗い男性だな…。)としか印象が、なかった。
鞍川一夫という男は、とにかく、はじめの頃、話さなかった…。何も言わない男だったのだ…。