66話
「……あんがとよ」
沙也加が照れている。すっごい可愛い……。
「あたしがヤクザと付き合ってる、的な噂を流した奴もいたしよ」
私と出会う頃のまえの話だね。
「そんなこともあったね。だからね、沙也加のフルネームが『尾仲沙也加』って聞いたときはすっごくビックリした。聞いてた噂と全然違かったんだもん」
噂よりも──優しくて、カッコよくて、可愛くて、友達想いで、運動神経がよくて、気が遣えて……挙げだしたらキリがない。
「いやっ……っ……」
次の瞬間、私は思わず沙也加に抱きついていた。
「っ……いやだよっ……別れたくないっ……!」
「あたしもだ……」
頭にそっと手を回し、頭を撫でてくれる。
「これは別れじゃない、絶対にすぐ会える。あたしが約束する」
「んっ……っ約、束っ、だからねっ……」
沙也加の胸の中は親とは違う温もりがあった。何とか嗚咽を抑えながら言葉を紡ぐ。
「約束、は……守るっ、ためにある……」
「心配すんな。分かってる」
沙也加に出会うまえの私がこの状況を見たら何を思うだろうか。
疑念、嫉妬、安堵、その他諸々。
そして翌日、沙也加が飛び立つ日。
私は彼女を空港まで見送ることはしなかった。どこの空港で何時の飛行機で飛び立つのかをそもそも知らなかった。知らないようにしていた。
空港で見送ってしまったら、もう二度と会えないような気がしていたから。
ふらっと行って、ふらっと帰ってきてほしかったんだ。私の知らぬところで。
終わったことは後の祭りで過ぎたことは言ってもしょうがない、というけれど、ここまで後悔の念に駆られるとは思わなかった。
「なんであんなバカなことを……」
見送ればよかった……! さいあくさいあくさいあくさいあくさいあくさいあく。
「はあ……」
ため息で幸せが逃げても今はいいよ。
両親にも報告していなかった。下手に色々口出しされたくないことだったから。
「夢にも出てきすぎだし……」
その度に私は枯れるほどの涙を流しながら、目を覚ます。
そして現実を知る。あぁ、もう沙也加はこの町にはいないんだって。
とある金曜日のお昼時。
私は一人でショッピングモールに来ていた。
テスト期間なこともあって学校側の親切心からかテスト以外に授業はなく、午前中で今日の学校は終わりとなった。
「学食やってくれればいいのに……」
テスト期間中はなぜか学食がやっていないうえに、友達とご飯を共にするのもなんとなく気が引けたため、このような現状になっている。
「あっ……」
フードコートを巡回していると、見知った顔が目の前を通りすぎようとしていた。
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