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60話

その瞬間歩いていた脚をピタリと止め、私の顔を彼女の目がしっかりと捉えた。


「……」


黙りこむ沙也加(さやか)。一瞬とも永遠とも取れない体感の中、沙也加が口を開いた。


「あれは……手を抜きたかったわけじゃない」


「ううん。あれはどっからどう見ても私に対して手を抜いてたよ」


心なしかいつもよりも強い口調で発している自分に少し驚く。


そしてここからは簡単だった。


「そもそも私を当てる気すらなかった……」


「それは……」


そう発するものの、『それは……』以降の沙也加の言葉が続かない。


「私ね、今回のドッチボール大会。沙也加とドッチボールで戦えるって知ったとき、すごく、嬉しかったんだよ」


そう言いつつも、私の中にその時渦巻いていた感情が「嬉しい」という言葉に集約されるかと問われれば、そうじゃないかもしれない、とも思う。


沙也加は一言も発しないで、ただ私の顔をじっと見ている。その奥にどのような感情が宿っているのかまでは読み取ることができない。


「今までず―――――――っと! 沙也加は私の憧れだった」


言い出したらキリがないほどに、沙也加は色んな魅力に満ちあふれている人だと思う。


「特にスポーツは全般的に飛びぬけてできるでしょ?」


すると、沙也加が困ったような、呆れたような、それはそうでしょ、と言わんばかりの表情を浮かべる。


「まっ、あたしは勉強はあんまり出来ないからさ。その分スポーツくらいはできないと不平等だろ? ほら、天は二個は与えないが一つくらいは与えてくれるってやつみたいにさ! 勉強も運動もできなかったら悲しいじゃねえか」


「天は二物を与えず、だよ。なんか使い方が違うような気もするけど、それはそれで面白いかも」


「だろ?」と胸を張らんばかりの表情を私に返してくる。


ポジティブ思考すぎる……たしかに若干褒めてしまったかもしれないけれど。


「話を戻すとね。私はそんな自負すら持っている沙也加を、スポーツで、倒したかった」


沙也加は驚いた顔をしたあとに「そうだったのか……」と一言。


「すごい人の傍にいると、ふと思うんだ。私もすごい人になってみたいな、って。私も実は頑張ればすごい人になれるんじゃないかな、って」


憧れるだけじゃなくて、その憧れを超えてみたい、って今日は思ってた。


「それが今回はたまたまドッチボールだった。でも、沙也加、手……抜いた、じゃん」


沙也加のせいじゃない、ってわかってる。私のことを思って手を抜いてくれたこともわかってる……はずなのに。


「っ……」


沙也加は何も言わずに唇を噛みしめている。


ここで言わないとこの先、私と沙也加の関係は崩壊する、と私の直観が告げていた。


「私は……そんな手加減、望んでなかった……!」




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