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58話

 複雑な感情が私の心を蝕んでくる。


 沙也加(さやか)と久しぶりに面と向かって会うことができて嬉しい気持ち。沢西(さわにし)が戻ってきたらどうすればいいのか、という迷い。


「久しぶり……!」


 すると、沙也加が急に頭を勢いよく地面に向かって振った。


「すいませんでした」


 そんな沙也加の様子にいつものふざけている様子は一切なく、誠心誠意私に謝罪の念を込めて謝っているのが伝わってくる。


「私もすいませんでした」


「いやいやいや。(はるか)が謝るようなことは何もしてないっしょ」


 沙也加が戸惑い気味に言った。


「ううん。そんなことないよ。私が沙也加の異変にもっと早く気づいてあげていればこんなことにはならなかったし」


 その言葉に沙也加が一瞬目を瞠る。そしてすぐにふっと自信ありげに微笑んだ。


「気づいてたんだな」


 遠慮するわけでもなく、素直に自分の変化に対して認めた。


「うん……だからごめんね。何も助けてあげられなくて。訊いてあげ」


 言葉の途中で沙也加が静かに首を横に振った。


 そうだね……。これ以上は、違うね。本当に助けが必要だったら沙也加のほうから助けを求めてきてた、ってことだよね。


 そう思っていると、沙也加の表情が少し悲しげに歪んだ。


「今日、一緒に帰らないか?」


 その言葉を聞き、沙也加が遠くに行ってしまったような感覚に陥る。


「うん。一緒に帰ろ」


「……じゃあまた後でな」


 手を一振りしたあとに、私から顔を()()()


 その時、沙也加の涙が宙に舞ったように見えた。私の幻覚だろうか。


「沙也加!」


 そう叫んでも彼女が私のほうを振り返ることはなく、けれど頭上の横に右腕を掲げ、開いた手のひらを軽く一度だけ振った。


 もう間もなく少し先にある角を曲がったせいで彼女の姿が見えなくなった。


 私はその場に崩れ落ちる。


「……っ……っ……!」


 ――沙也加を、助けられなかった。


 私だけ……いつも助けられてばかり。




 どれくらいの時間泣いたんだろう。


 いい加減泣き疲れて、自然と顔を上げる。


「! 沢西……」


 ……待って。今まで私が泣きじゃくってたところを全部見られてたってこと?


 無理無理無理無理無理無理。しんどすぎるって。


 羞恥心で一気に頬の温度が上がっていくのを感じる。


「なんかあれだ。泣くんだな、お前も」


「ソソソそりゃそうでしょ!? 私を何と勘違いしてるのよっ! バカ」


 は、恥ずかしい〜! 何テンプレのセリフを言ってるのよ───! バカは私のほうでしょ!


 すると、スっと彼の顔から笑顔が消え、真剣な面持ちが顔を出した。


「俺と、付き合ってほしい」


 私の予想どおりの言葉が彼の口から放たれ、先程から考えていたものを彼に告げることにする。


「私、好きなひ」


「一週間でもいい。もし合わなかったらすぐ振ってくれていいからさ! 俺にチャンスを下さい」




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