52話
あの時はまさかこんなに仲良くなれるなんて思ってもみなかった。それに、沙也加がこんなにスポーツの才能に営んでいるなんて想像もつかなかった。
最初からカッコいい子だなとはすごく思ってたけど。
「――開始します。礼!」
けれどいつしか彼女は私のすべてになっていた。一方でそのカッコよさに憧れるとともに、劣等感が、徐々に私の心を蝕んでいった。
「お願いします」
各々ドッチボールメンバーが挨拶をした。
私たちのチームの内野メンバーは結局姫川さん、沢西、そして私の三人となった。
もちろん相手チームの内野には沙也加の姿があった。試合前もそうだったけど、先ほどから圧倒的存在感を放っている。
――でも、負けるわけにはいかない。
相手チームからのスタート。ボールを手に持っているのは沙也加ではなく、眼鏡をかけた男の子。
みながそれぞれ陣地に着き緊張が走る。
先ほどの試合とは異なる、桁違いの重圧感が身体に重くのしかかってくる。
それにしても、相手チームの男の子、完全に私のほうを狙っている。
「……っ!」
え、嘘……。
なんと、姫川さんが苦悶の表情を浮かべて隣でボールをキャッチしていた。
「ノールックかよ……」
ノールック……。呼び名から察するに、おそらく自分の目線とは違う方向にボールを投げることを言うのだろう。
「姫川さん、よくキャッチできたね」
「ギリギリ反射神経で取れましたわ。目では追いついていなかったですわ」
ボールのスピードが速いうえにどこにボールが飛んでくるかがわからないなんて……。私には――ううん、自分で試合に出ることに立候補したんだから、ここで折れてちゃダメ。
両脚の震えを無視し、自分の両頬をパチンと一度叩いて活を入れなおす。
「……大丈夫ですの?」
私が両頬を叩いた音が気になったんだと思う。姫川さんが視線を、ボールが行き交っている相手の陣地である半面コートのほうを見ながら、私に訊ねてきた。
「……大丈夫。気合を入れただけだから」
と姫川さんに倣い相手陣地の半面コートに目を向けていると、沙也加が一瞬ニヤッと嫌な笑みを浮かべたように見えた。
あまりに一瞬の表情の変化であったため、その変化に気がついたものは私以外にはいないみたいだ。
「……あいつら、疲れてきてるな」
沢西が発するとその言葉の後すぐに沙也加が、咲島のボールが投げられた方向に自ら躍り出た。
「スゴすぎだろ……なんだあの女」
沢西が驚くのも無理はない。
そして沙也加はキャッチしたボールを手に今度はこちらに勝ち誇ったような笑みを浮かべてくる。
その表情から覗く圧倒的な自信。
「こっわ……」
思わず漏れ出た言葉だと思う。あの沢西がいつもよりも萎縮しているように見える。
と、気づいたときには沙也加の手元からボールが姿を消していた。
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