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4話 

 気まずいな、と思いながらも、私はどうにか声をふり絞る。


「お、おはよー……」


 無視されちゃうかな?


「……う、うん。おはよ……」


 なんていつもの彼にしてはぎこちないながらも、ちゃんと私の挨拶に応えてくれた。


 と、私は先生からの鋭い視線を感じてそれ以上は口を噤む。


 でも、よかったー。嫌われてはいないみたい。




 朝のホームルームが終わり、私は時間割を見るためにスマホをカチッと起動させた。


 そしてロック画面になっている一週間の時間割表の火曜日、一時間目の欄を確認したあとに、スクールバッグのチャックを開ける。


 一時間目の授業は「国語」。私は自分のバッグの中をガサゴソと漁るけれど、いくら探しても国語の教科書が見つからない。


 なんでないのー! と私は今にも叫び出したい気分だった。私は頼みの綱である咲島(さき じま)さん……じゃなくて、咲島の席に目を向ける。


 けれど、彼女の席は空席で、そこには誰もいなかった。


 どうしようー!? 後ろの席の女子とは私、なんか相性が合わなくて話かけずらいんだよね。


 やっぱり、ここは意を決していつもの彼に話かけてみることにしよう。いくら彼からの告白を振ったとはいえ、別に私は彼のことが嫌いなわけではないんだし。


「ね、ねえ……」


 しかし、彼は自分のスマホに夢中で私のほうには振り向きもしない。


「……ねえ、悠斗(はる と)くん?」


 それでも、彼はやはり私には見向きもしない。


「……もうっ、悠斗くんってば!」


 やばい! 思いのほか、凄く大きな声を出しちゃった。


 と思っても時すでに遅く、私には数多の視線が向けられていた。


「うん? ……えっ、なにこれ……?」


 さすがの悠斗くんでもさっきの私の大声が耳に届いたらしく、こちらに振り向いてすぐに目を丸くした。


「だって、悠斗くんが全然私に気づいてくれないんだもん……」


 それでも彼はどうやら私の言っている意味が理解できなかったらしく、首を横に少し傾けた。私はその反応になんだか少しばかり恥ずかしくなってきてしまい、本題を切り出すことにする。


「もうそれはいいっ。それで、教科書を――国語の教科書を忘れてきちゃったから、写真を撮らせてほしいんだけど……」


 私は少しの緊張を胸に抱きながら、なんとか彼にその言葉を伝えることができた。


「え、国語? 数学……最初の授業って数学――」


 と言って、彼は教室全体を見渡す。そしてすぐに、その顔は絶望の色に染まった。


「僕も数学――じゃなくて国語の教科書を忘れたから写真撮らせてもらってもいい?」


 とへんてこなことを聞いてきた。私はいつも以上におかしな彼の言動に、彼が何を言っているのかが理解できなかった。


「……えっ。ってことは、悠斗くんも数学の教科書を忘れたってこと?」


「ん? 数学じゃなくて国語でしょ?」


「あ、そうそう。悠斗くんの国語の教科書の写真を撮らせてほしくて……」


 と、よくわからない言い合いをしていると、国語の先生が教室の中に入ってきたのが横目に見えた。


 やばい! もう先生が来ちゃった。早く写真を撮らせて悠斗くーん!


「――きれば国語の教科書を撮らせてあげたいんだけど、持ってなくて……」


 持ってない? それって、国語の教科書を持ってない……


「えっ! 持ってないの!?」


 またもやついつい大きな声を出してしまい、今度は生徒だけではなく先生からも注目されてしまう。すると、悠斗くんが私の声の大きさに一瞬驚いたあとに、私とは対照的な小さな声で口を開く。


「ちょっと、声大きいって。先生に聞こえちゃうから」


「何か私にバレちゃいけないことでもしたんですの?」


 ひぃー、バレてるよー! この先生、忘れ物だけには凄く厳しいのにー。……どうしよう、ここは素直に「教科書を忘れたので貸して下さい」って……いや、それだけはダメだ!


「いえ、何も……」


「先生! 僕たち二人とも国語の教科書を忘れたので、一つ貸してくれませんか……?」




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