39話
教室のドアを開けると、みなの視線が一斉に私のほうに向く。
「……」
そして大半の人が興味を失ったように、ぷいっとそっぽを向き、再び視線を私から離した。
その中には、私のほうを見るなりほっと胸を撫で下ろした咲島の姿もあった。
教室に残っているのは、私と咲島の二人だけ。
「どう?」
咲島のその問いにどう答えたものかと少し悩んでしまう。
「ちなみに、他の人もそれでいいって言ってた感じ?」
すると、咲島は私と違い、迷うことなく即答する。
「うん! 姫川も水口もいいって言ってた」
なら、私がここで否定する必要はないだろう。
「そっか! ……うん。私もじゃあそれでいいよ」
「じゃあ?」
どうやら、咲島にとって『じゃあ』と言った私の言葉が引っかかったらしい。
「あ、いや、『じゃあ』っていうのは別にそういう意味じゃなくて! だから、その……」
咲島がクスッと笑みをこぼした後に言葉を放つ。
「そんなに焦らなくても咲島は逃げたりしませんよ?」
「……し、知ってます」
彼女のその言葉を聞いてもっと焦ってしまう情けない私であった。
「ホントに、いいのね?」
今度は茶化す様子もなく、真剣に問うてきた。
「うん。いいよ」
私もそんな咲島の問いに応えられるよう、彼女の目をしっかりと見て答える。
「せっかくやるんだったら、勝とうね! ドッチボール」
「うん。絶対に勝つ!」
運動音痴な私でも活躍できることを願いながら──空中に浮いたお互いの片手がぴったりと重なり合った。
翌日の朝。ホームルームが始まる少し前の時間。別教室に集まった面々が丸テーブルを囲み、顔を合わせている。
「ということで! 正式に集まったチームのメンバーたちに拍手っ!」
咲島の唐突の要求? にも似た強制の拍手コールに戸惑う。
「なぜワタクシが拍手を……」
「拍手……?」
みなが不満を漏らす中、一人大きな音で拍手を奏で続けている勇者がいた。
「うぇーい! 俺、こういうの好きだぞ!」
「おっ! 沢西の唯一の長所が出た」
からかいつつも、その言葉の裏にはちゃんと嬉しそうな顔が浮かんでいる。
「その割には嬉しそうだけど? ねえ、咲島さん」
私は『ねえ、咲島さん』と言ったタイミングで彼女のほうに顔を向けた。
「そんなことないし……」
ふてくされている咲島を見るのが久しぶりで、彼女のそんな表情を見ているとつい心が踊る。
「マジマジ? 嬉しいのか、咲!」
「うっさい!! 私の名前は咲じゃありませーん! 勝手に略すのはやめてくださいーだ!」
やり取りが小学生のそれだった。
でも聞いている私からするとかなり面白い。正直言って、咲島と沢西は付き合ったほうがいいのではないか、とすら思ったりもする。
「みっともない会話はやめなさいですわ、お二人とも」
姫川さんのその言葉に恥ずかしく思ったのか、咲島はむんと黙る。けれど──
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