38話
「おっ……! ごめん。さっきは勝手に行っちゃって」
は、悠斗くん!? なんでここに……? 今は授業中のはずなのに……。
「あなた、何年生?」
私と悠斗くんの間に流れる空気もお構いなしに先生は悠斗くんに訊ねた。
「二年生です……」
先生は「そう」とだけ言って特にそれ以上のことは追及しない。
「わ、私は……なので、失礼します。看病ありがとうございました!」
そう言って宮ノ森遥は駆け出した。
そして、この教室に残っているのはたったの二人。
「悠斗が言ってた女の子ってあの子のことよね?」
悠斗が恥ずかしそうにしながらも、保健室の先生もとい実姉に頷きを返した。
水面 さやか。
あの名前を見てから嫌な予感がしてたまらない。
知らない名前なのに。初めて見たはずの名前なのに。なんでなんだろう……。
「……?」
「……!」
時々廊下にいる人たちの視線が私のほうに向いてくる。
それに関していえば、授業中にも関わらず廊下を猛ダッシュで走っているのだから仕方がない。
「ハア……ハア……」
それに、悠斗くんが保健室に来たのとほぼ同時に私も保健室を出てしまったけど、悠斗くんからすれば私が彼を嫌いになったように映ってしまったかもしれない。決してそんなことはないのに。
……教室が見えてきた。走るスピードを緩め始める。
本来、廊下は走ってはいけない決まりになっているから。
「つ、着いた……」
教室のまえまで来てピタと立ち止まる。
息を切らしながらも、扉についているガラス枠から教室の中を覗き見る。
「……誰もいない」
沙也加の姿を見つけるために、彼女の普段使っている教室のまえまで来てみたけれど、教室の中は電気がついているだけで誰の姿も見当たらない。
ポケットからスマホを取り出して再度沙也加の時間割を確認してみる。
「うん。やっぱり今は数……」
「数学」の数と言いかけたところで、遠くからいくつかの声が聞こえてきた。
思わず声のするほうに視線を向ける。
「ってか、今日の授業マジで意味不明だったんだけど!」
「あんなのもわかんないとか、次のテストお前大丈夫かよ」
どんどんこちらに向かって人が歩いてくる。
私がこんな場所にとどまっていると話かけられるか不審者扱いをされると思い、今は一旦この場から離れることにする。
……えっ!
この場を離れようと決めてその一歩を踏み出そうとしたとき、突如そこに現れた一人の高身長美少女に自然と目を奪われた。というか、その少女の正体は沙也加だった。
今までのロングヘアーはバッサリと切られ、ショートヘアになっている。髪色は今までと変わらず金色。
「かっこいい……」
元々顔が整っていることもあってか、ついそんな感想が漏れた。
「……」
次の瞬間、キーンコーンカァーンコーン! という予鈴の音が耳に伝わる。
今の予鈴は次の授業まで残り一分、を知らせてくれるもの。
この場に留まりたい気持ちを抱えながらも、重たい脚を来た道に向けて動かす。
「じゃあさ、沙也加ちゃんは好きな人……いたりしないの?」
もう、授業を休むわけにはいかないから。
「あたしのことなんてどうでもいいだろ」
その声に耳を傾けながら、新しい疑問が私の脳裏で渦巻いている。
──私を保健室に運んでくれたのは一体誰だったのか。
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