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37話

「……あら、あなた沙也加(さやか)ちゃんのお友達?」


「知ってるんですか!?」


 思わず大きな声を出してしまった。


「ええ。知ってるわよ」


「沙也加とは……どんな感じ、なんですか?」


 今度は大声を出さないように、なるべく落ち着いた声を出せるように、心がけながら訊ねた。


「どんな感じ……フフっ。まるで恋人同士の進捗具合を問いただすような言葉を使うのね。いえ、恋人になるまえの友達以上の関係かしら」


 そう饒舌に述べながら、先生は口のあたりに手を持ってきて少し笑った。その笑い方でさえも気品がある。


「そうね……」


 どこか遠い目をしながらそう呟いた先生。


(はるか)ちゃんと沙也加ちゃんがどのくらいの関係なのかわからないから、どこまであなたに話していいか難しいけど……」


 自分で言うのはおこがましいと思うけれど、私は……少なくとも私は、私にとって沙也加は一番大切な友達だといい切れる。そして、彼女は私にとって、たったひとりのヒーローだから。


「沙也加ちゃんがテニス部なのは知ってる?」


 私は首を縦に振る。


「そう。でね、沙也加ちゃん、最近はそんなことないと思うんだけど、ちょっと前まではよくケガをする子だったの」


 ……うん。たしかに、よく膝付近が出血して赤くなっていたり、よく腕に痣みたいなのが出来ていた気がする。


「心当たりがありそうな顔してるわね。でも、沙也加ちゃんって結構なんでも自分で抱えこんでしまうタイプに先生には見えていてね」


 ……。


「だから、最初の頃なんて熱があったのに無理してテニスをやってたことがあって、他の部員に引っ張られながら無理やり保健室に連れてこられたりしていたときもあったわ」


 そうだったんだ……。沙也加のそういう話、初めて聞いたかも。


「その時に先生と沙也加ちゃんで約束をしたの。どんなに些細なケガで友達とかに言えないことでも、先生だけじゃなくて私にも気軽に相談してちょうだい、って」


 先生だけじゃなくて私にも……? どういう意味だろう。


「あの子はたしかに強い女の子だと思うけど、何でもかんでも一人で抱えてしまうと、人間誰だっていつかは爆発してしまうもの」


 なおも続ける。


「沙也加ちゃんにはそういうはけ口? みたいなものがないように先生にはあの時見えたのね」


 ふと、昨日の部屋での沙也加の光景が思い出される。……あ!


「先生! 私、先生のおかげでわかりました!」


 そう言うと、先生は戸惑いの顔を私に向ける。その後すぐに微笑んで。


「先生も……わかったわよ」


「何が、何がわかったんですか!?」


「それはね……」


 先生の、喉が鳴る音が聞こえてくるようで。


「あなた、だったのよ」


「へっ?」


 私? 先生は急に何の話をしているんだろう、と疑問に思っていると──


「ごめんね、何にもないわ。ただ、沙也加ちゃんがここに来ると話してくれる女の子の話があってね。それが、遥ちゃんの話のような気がするのよね……」


 沙也加が、私のことについて……。


「もう少し休んでいく?」


 先生が立ち上がりながら、私にそう質問をしてきた。


「いえ、もう授業に戻ります。ここで休めたおかげで体調もだいぶ良くなってきましたし」


 そう言って、先生に続いて私も立ち上がる。


「そう……」


 先生はそんな私にどこか悲しげな声音で呟いた。


「沙也加ちゃんみたいに……遥ちゃんもまた、いつでも来てちょうだいね。あまりこういうことを言うのはよくない気もするけど」


  ──。


 その名前を頭の中で復唱しながら「ありがとうございました」と先生に軽く会釈をして、扉の前までたどり着く。


「沙也加ちゃんも、女の子だからね!」


 その先生の声を背に目の前の扉を開けた。


「えっ」




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