31話
お、お姉ちゃん……!? 今風くん、私のことお姉ちゃんって呼んだよね?
「あ、なんか元気になった」
風くんはおそらく朝型というよりは夜型人間で、朝方は少しポンコツな男の子になりがちなのだ。
「でも、顔色悪いけど……もしなんか悩んでるんだったら言ってくれたら相談に乗るから」
「……うん、わかった。ありがとね! 風くん」
そう私が言うと、風くんはすぐ真ん前の洗面所に入っていった。
今朝の風くんはポンコツでも頼りがいのあるお兄さんって感じで、姉の私でも少し感心してしまった。あぁー、沙也加……。
いつもは二人で歩いている通学路を今日は寂しく一人で歩く。
「ここって、こんなに何にもなかったんだ……」
けれど、沙也加といつもこの道を二人で歩いてきたからか、私にとってこの道は華やかに彩られてさえいたのだ。
ほどんど毎日、ふざけながら二人で通学路を歩いていたあの時間が、私は大好きだった。
周りをなんとなく見回してみるけど、やはり沙也加の姿は見当たらない。
「悠斗くんも、いないね……」
なんだか、急に寂しくなってきた……。
学校に着き、沙也加を最後まで見つけることができずに教室に入る。
すると、腫れ物を扱うようになぜか私のほうをちらちらと見てくるクラスメイトが何人もいる。
その視線が気になりながらも、私はいつも通り自分の席に腰掛けることにする。
「あっ……」
悠斗くんが私のほうを見るなり、そう声を上げた。
私が何だろう……、と疑問に思っていると、背中が二度ほどトントンと叩かれる。
私は驚きながらも、おそるおそるそちらに振り返る。
「宮ノ森、それ……」
「ん……? それ、ってなに? 咲島」
すると、咲島が私のスクールバッグにかかっているキーホルダーにそっと手で触れながら、再び口を開く。
「これのこと。このキーホルダー、どうしたの?」
「これは……体育の先生に貰ったの」
咲島は私の返答に納得いかなかったのか、首を傾げている。
「なぜに……?」
「なんか、旅行に行ったお土産としてこれを買いすぎちゃったみたいで、余ったから私にくれたみたい……」
「そうなんだ……それで、その時に水口も一緒に貰ったってことね」
なんで悠斗くんも一緒に貰ったことを咲島が知ってるんだろう……、と思ったのが私の顔に出ていたんだと思う。
「水口のカバン、見てみ」
私は咲島の言うことに従い、悠斗くんのカバンをチラッと見た。ちなみに、悠斗くんはスマホをじーっと眺めている。
「悠斗くんも付けてた……」
私がそう紡ぐと、咲島がなぜか得意気な顔をした。
「でしょ? 教室がうるさいのもそういうこと」
「……」
私と悠斗くんがこの騒ぎの原因、ってどういう──
「よーし、お前ら着席ー」
先生が教室に入ってきたのとほぼ同時に咲島が一言残していく。
「じゃあまた! 宮ノ森」
「えっ、うん! またあとでね!」
それから少し経つと、先生が口を開き始めた。
「球技大会の団体競技をやる人は今週中までにそのチームを集めて、この前渡したプリントを私に提出することー、いいなー?」
球技大会。私が選んだ種目はドッチボールで、参加するには五人の申請が必要。でも、私のチームはまだ四人しかいない。
あと一人、足りない状態である。
すると、私の見えない位置で誰かが手を挙げたのだろう、先生が立て続けに言う。
「姫川さん、どうしたー」
「まだ各種目の細かい内容を記したものがワタクシたちのクラスには配られていないと思うんですけれど、そのようなものは貰えないのでしょうか」
その質問を聞いた先生が、なぜか嬉しそうに頬を緩め始めた。
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