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26話

「「……」」


 悠斗(はる と)くんが辺りを見まわしていたこともあってか、私と悠斗くんの目がピタリと合ってしまった。


「お、おはよう……!」


 そう言いながら、私たちの間に一瞬流れた気まずさを紛らわすように、悠斗くんのほうに手を上げて挨拶をする。


「うん、おはよう……」


 手を上げこそしなかったものの、悠斗くんもちゃんと私に挨拶を返してくれた。


「なんか挙動不審な感じだけど、誰かから逃げてるの?」


「な、なんでわかったの!?」


 そう言いながら、悠斗くんは目を丸くした。


「だって、悠斗くんすごく挙動不審――ごめん、これはもう言ったね。それで、誰から逃げてるの?」


「――や……」


「うん……?」


 声が小さくて聞き取れなかった私は、悠斗くんにもう一度その言葉を言ってくれるように促す。


「は、母親……」


 ……。


 今、悠斗くん。母親って言ったの……?


「母親……なんで……?」


 悠斗くんがその私の疑問に答えてくれようとしたのか、彼が口を開こうとしたその瞬間――


「悠斗! やっと見つけたわ!」


「げっ。……行こっ!」


 悠斗くんはそう言って、私の腕を引いてきた。


「えっ! あっ、うん!」


 突然の出来事に驚きながらも、何とか悠斗くんに返事を返すことができた。


 すると、私の腕は悠斗くんに突然引っ張られ、私は無理やり歩くスピード……もとい走らざるを得なくなる。


「……は、悠斗くんっ……! 」


 私がそう大声で叫ぶと、悠斗くんは顔ごとこちらに向ける。けれど、私の腕を引っ張る彼の力は弱まらない。


「なっ、なんで……っ……お母さんが……っ、追いかけてきてるの……」


 普段運動をしていないからか、走りながら声を出すのが精一杯の私。


「それはっ! ……はぁはぁ……無理だ。っ……あ、後で話すからっ!」


 そして少しの間、私と悠斗くんは無言で息を切らしながらも走り続けた。


 すると突然、悠斗くんが学校の少し手前まで来たところで足を止めた。


 私たちは一分ほどお互いに息を整える。


「ふぅー……あの、急に走らせっちゃってホントにごめんなさい!」


 悠斗くんが息を整えたあと、最初に発したのはそんな謝罪の言葉だった。


「たっ、たしかにすっごく疲れたしびっくりしたけど――楽しかったから許してあげるね」


 自分でもなんでこんなに上から目線なのかはわからなかったけれど、それでもこの言葉は自然と私の口から出たことに偽りはなかった。



「それで、なんでこんなことになったの……?」


 悠斗くんは私からの問いに間隔をあけることなく、喋り始める。


「それは、実は僕は今」


はるか――! いちゃラブしてるところ悪いんだがー、もうチャイム鳴っちまうぞー!」


 私はその沙也加(さやか)の声を聞き、スカートのポケットからスマホを取りだした。


「やっ、やばいよ悠斗くん! あと七分しかない!」


 スマホをスカートのポケットに急いでしまい、悠斗くんの手首をつかむ。


「え……」


 悠斗くんは心底驚いたような顔をしたけれど、私はそれを無視して彼の手を引っ張りながら駆け足で校門をくぐり抜けた。


 


「まだあと三分はあるみたい……」


 幸い私たちの教室は二階に上がってすぐのところだったため、そんなに急ぐ必要はなかった。


 私は悠斗くんの様子を見て一瞬迷った挙句、やっぱりそれを彼に渡すことにした。


「はい、どうぞ……!」


 イマイチ渡し方がわからなかったため、私の口から発せられたのはそんなぎこちのない言葉だった。


「……ありがとう。でも、いいの?」


「うん! 悠斗くん持ってなさそうだったし、全然遠慮なく使っていいよっ!」


 戸惑い気味の悠斗くんだったけど、その意味をすぐに理解したのだろう。悠斗くんは私の手からそのタオルを受け取った。


「おっ。ちょうどいいところに、私の教え子がいるではないかー。ということで、ちょっとこれ持ってけろー」




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