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25話

「ただいま〜!」


私が家に入り、いつもどおりの第一声を発すると、家の二階から声が聞こえてきた。


「おかえりなさーい!」


私はそのママの声を聞き、いつも通り家に帰ってきたら真っ先に行う「手洗いとうがい」をするために洗面台に向かい、ドアを横にスライドした。


「――っ! び、びっくりしたー……!」


私がそう言うと、洗面台でハサミを持っていたパパがその動きを止めて、私のほうに振り向いた。


「お、おかえり」


そして、パパは手に持っていたハサミを一旦洗面台の横に置いて、次に両耳につけていたイヤホンをすぽっと外した。


「ここ、使うか?」


「あ、うん」


すると、パパが洗面台に散らかっている髪の毛をティッシュで拭き取り始める。


「ねえ、パパ」


「ん、どうした?」


「その……」


私が言葉に詰まっていると――


「似合ってると思うぞ」


「えっ! ……」


私の心の声が漏れていたみたいに私の心情を汲み取ってくれたパパに、私はそんな驚きの声を漏らしてしまう。


「違、かったか……?」


髪の毛が大量に付着しているティッシュをゴミ箱にポイっと捨てたあとに、パパが私の目をまっすぐに見ながら、そう言葉を紡いだ。


「う、ううん……ありが、とう……」


大好きなパパに見つめられて、私は申し訳ないながらもついその目から逃げつつ、床に目を向けた。


「……っ!」


今度は、私の目に筋肉質な脚が飛び込んできて──


「……まっ!」


そう言うと、パパが不思議そうな顔をしながらも私のほうを見てきた。けれど、私はいてもたってもいられなくって、いつの間にか勢いよくドアをスライドさせてその場から飛び出していた。


次の瞬間、バンッ! とドアが大きい音を立てたのと同時に、私の視界からパパの姿が完全に消えた。


「はぁー……」


私がドアに背中を預けると、そんなため息と同時に身体から力が抜けていくのを感じる。


すると、先ほどまではまったく気になっていなかった、心臓の脈打つ音が妙に大きく聞こえてくる。


「顔あっか……!」


私が声も出せずに目だけをそちらのほうに向けると、その視線の先には制服姿の風くんがいた。


「あっか……?」


ただただ、風くんの言葉を私は繰り返すことしかできない。


「熱でもあるんじゃないの?」


「ねつ……」


やっぱり風くんの言葉を繰り返すだけの私。


「いや、ホントに大丈夫?」


その風くんの少し真面目くさった声音を聞いて、ようやく自分の頬にかなりの熱がこもっているのに気がついた。


自分の頬に両手を添える。


「……! ホントに。熱い」


すると、風くんが一言、口の中でボソリと呟いた。


「まあいいけど」


「ん? 今、なんて言ったの?」


「何にもない」


風くんはその私の問いに驚くような顔一つ見せずに、そう平然と言葉を残して自分の部屋に戻っていってしまった。




「昨日は、お父さんにちゃんと遥の『襲いたくなる寸前の気持ちにさせるメイド服』姿をお披露目できたか?」


「なぁにーそれー」


いつも通り沙也加と二人で通学路を歩いて学校に向かっていると――。


「あっ! いっけね! 数学のノート持ってくんの忘れたわ!」と沙也加が言った。


「ノートぐらいなくっても、別に困らなくない? あれだったら、私のルーズリーフ何枚かあげるよ」


そう言いながら、私が自分のバッグのチャックに手を伸ばそうとすると、


「いや、大丈夫だ。あたし、こう見えてもノートの紙質にはすごいこだわりがあってだな。だから、ノートをどうしても取りにいかなくちゃいけない。すまん、先に学校に行っててくれ」


そう言うとすぐに沙也加は身体の向きを反転させて、私たちが歩いてきた道を逆走していった。


「ちょっ! 今から戻ったら間に合わなくなっちゃうよ─────!?」


そんな私の叫びが沙也加に届くことはなく、彼女は私のほうに戻ってはこなかった。


そして少しの間歩いていると、私は身に覚えのある姿を見つけて思わず歩みを止めた。


「あっ……あれって、悠斗くんじゃない?」


でも、悠斗くん。なんで、あんなにキョロキョロしてるんだろう。




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