17話
──宮ノ森 風雅──
俺の隣に座っているのは、姉の友達である沙也加さん。
彼女はどうやら中学の頃から姉……俺のお姉ちゃんである遥と仲が良いらしく、その証拠に毎朝一緒に学校へ登校しているらしい。
「それで、話っていうのは何ですか?」
「いやー、それにしても風雅はいい身体をしてるよな! 腹筋もエイトパック割れてたりすんの?」
「エイトパックって……」
なんだよそれ。普通、シックスパックじゃないの? ってか、話逸らされたし。
「一緒に着替えてませんよね? なのに、なんでそう思ったんですか?」
沙也加さんはまったく迷う素振りを見せずに堂々と応える。
「さっき、さりげなく触ったからだぜ」
ふと思い返してみる。
たしかに、さっきまで俺にのしかかったりしながらベタベタと俺にくっついてきてたから、その時にでも触られたのだろう。
普通に気づかなかった。
「実際はどうなんだ? やっぱりエイトパック……」
「いや、そんなにないですよ。せいぜい六ぐらいでしょう」
「そっかそっかー」
ニヤニヤしながらそう言う沙也加さんに俺はどう反応していいかがわからない。
それにしても、お姉ちゃんはいつもこんなわけのわからない人を相手にしているのか……。
どうしても、あのお姉ちゃんからはこの沙也加さんとやらと絡んでいる姿が想像できない。性格が真逆と言っても過言じゃないだろう。
いや、真逆だからこそ馬が合うのか?
と、俺の隣から片腕が伸びてきた。
そして俺の頭の上には沙也加さんの手がぽんっと乗った。
「……」
一瞬避けようかと考えたが、沙也加さんのその手を受け入れる気持ちのほうが勝ってしまった。
「お、いい子いい子してほしかったのか?」
「いや、そういうわけでは……」
そこまで言って口ごもってしまった。別に嘘をついたって沙也加さんにはバレないだろうに。
「ホントか~? あたしには風雅がよしよしをしてほしかったようにしか見えないぞ」
言い方がいつの間にか変わってる、と思ったが、わざわざ訂正する必要もないだろう。
「……はい」
俺が返答するのに時間がかかってしまったからか、沙也加さんに訝しんでいるような目を向けられてしまう。
でも、それには気付かないふりをしておく。
「風雅は、遥のこと――好きか?」
それは何の前ぶりもなく放たれた質問だった。
そのためか一瞬、今のは俺の聞き間違いだったのではないか、と自分の耳を疑った。
「……」
俺がどう答えたもんかと窮していると、沙也加さんが俺のことをじーっと見ていることに気がつく。
「嫌いか? あれだぞ、別になんて答えたってあたしは風雅のことを笑ったりはしない」
そう言う沙也加さんの目には、先ほど俺をからかったときとはまったく違う目が据わっていた。
――真剣な質問なのか。
だから、俺は沙也加さんから向けられている真剣な目を信じて、その質問に素直に答えることにした。
「……好き、です」
すると、沙也加さんは心底安心したような声音を発する。
「そっか……なら、よかった」
俺の抱いていた沙也加さんとはまったく違う言動。でも、だからこそ。
お姉ちゃんと沙也加さんが仲のいい理由が今やっとわかった気がした。
「じゃあさ。風雅にとって、遥はどう見える?」
俺はその場で一秒ほど考えてみたが、その意味を正確に捉えることができなかった。
俺は沙也加さんに聞き返すことにする。
「……どういう、意味ですか?」
「そのまんまの意味」
その返答はすぐに返ってきた。
「姉、ですかね」
自分でもよくわからない答えだったが、俺の中に浮かんできたのはその一言だった。
「……そうだよな」
俺の返答をわかっていたかのように言う沙也加さん。
なら、聞くなよ! と思ったが、どうやらそういうことでもないらしい。
「あたしは妹だからわかんないけどさ、たぶん遥って『自分はお姉ちゃんなんだ』っていう意識があるから結構普段大変なんだと思うんだよな」
「妹……?」
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