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11話 

「これ、買ってほしいなって思って……。ダメ、かな?」


「いや全然いいよ。でも、なんで筆箱?」


 私はそんな悠斗(はる と)くんの疑問に素直に答えることにする。


「筆箱なら、学生だったら絶対に必要でしょ? だから、いいかなと思って」


 ホントは今使ってる筆箱がぼろぼろだからっていう理由もあるけど、それはなんとなく言わないほうがいい気がするから私の心の中に留めておくことにする。


「たしかに……こういう筆箱が好きなんだ?」


 そう発した悠斗くんは少し戸惑い気味だった。


「うん! 見た目も可愛いし、容量も意外とありそうだから使い勝手が絶対にいいでしょ? 悠斗くんもこの筆箱可愛いと思う?」


 棚に陳列されている中の一つのその筆箱を眺めながら……


「うん。可愛い……と思う」


 うわ思ってなさそうー。まあ、少し前の私だったら絶対に買っていないとは思う。


「えっとー、それでレジには……」と私が口ごもっていると、


「あ、うん。これでいいんだよね? じゃあ、僕がレジに持ってくね。宮ノ森(みやのもり)さんは外で待ってていいよ」


「わかった……」


 この場合、買ってもらってる側なのに私が外で待ってたら人としてすごく冷たい人間な気もするけど――悠斗くん本人がそう言ってくれてるんだからいっか。と最終的には思い、私は店の外に一人出た。


 ──悠斗くん。私がたとえ彼を付き合う対象として見られなくても、私には彼とお付き合いする義務があるのかもしれない、とほんの少しだけ思えてきた。


「お待たせー! ごめんね、待たせて」


 声のしたほうに振り向くと、満面の笑みを浮かべながらこちらを見ている悠斗くんの姿があった。その表情は私を助けてくれた先ほどの表情とは違い、小さな子供みたいに無邪気な笑顔だった。


「ううん。ありがとう、わざわざ私の誕生日のために買ってくれて」


 すると、悠斗くんは妙にかしこまった表情で言葉を発する。


「お品物になります」


「あ、ありがとうございます!」


 私は少し驚きながらも、お礼を言った。


 


「ねえ悠斗くん。私と悠斗くんって二人で遊んだのって初めてじゃない?」


「たしかに......」


「正直、今日悠斗くんが誘ってくれたのは私の誕生日関連のことかな、って少しは思ってたんだけど、いくら何するか聞いても頑なに答えてくれなかったし、ちょっと怖くもあったけど――何の心配もいらなかったね!」


 と、不意に悠斗くんが神妙な顔をする。


「あの……やっぱり、宮ノ森さんの好きな人って教えてもらえない、ですかね?」


 今日、二度目の同じ質問。


 語尾についたのは不器用な敬語で。だからこそ、悠斗くんが本当に私の好きな人を聞いてもいいのか、という心中の葛藤が私にもなんとなく伝わってくるようで。


「誰、だと思う?」


 私は「絶対に教えたくない」という気持ちに反してその話から目を背けることができなかった。


「下野くん? 顔もカッコいいし、運動もできるからモテそうだし……」


 悠斗くんに当てられるわけがないのに。


『誰、だと思う?』と私が悠斗くんに訊ねたのは、彼に私の好きな人を教えたくない、という気持ちが生んだ最後の些細な抵抗からきた言葉だったのかもしれない。


「ううん、違うよ」


 私がそう言っても、悠斗くんは諦めるような素ぶり一つ見せない。ううん、それどころか彼の表情はさっきよりもより険しく真剣なものになっている。


「……とぅさん」


 ついに、漏らしてしまった。


 けれど、私の発した言葉が聞き取れなかったのだろう。悠斗くんが私にもう一度言ってほしそうな表情をした。もう今から撤回なんてできない。だから、今度は彼にも聞き取れるような声量で。


「お父さん。私、昔から、自分のパパのことが――好きなの」


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