筋肉第4話 身体測定
身体測定の時間。
鬼木坂奮子の周囲には人集りが出来ていた。
悲鳴に似た黄色い声が絶え間なく響いている。
きゃー凄い。
触らせて。
硬ーい。
かっこいい。
そんな声が、鳴り響いている。
鬼木坂奮子の身長は、195センチ。
体重は125キロ。
体脂肪率は、5パーセントだった。
全身筋肉の鎧に覆われているにも関わらず関節の可動域は広く、体操選手やバレリーナ並の柔軟性も持っていた。
視力は、裸眼で4.0以上。
聴力は常人では聴き取れない音も聞き取れる。
その他諸々、至って健康である。
鬼木坂奮子は今、下着姿だった。
膨らんだ大胸筋の上に乗った形の良い乳房を、赤色のブラジャーが包み込んでいる。
下は褌を履いていた。
肩や腕には岩のような筋肉が盛り上がっている。
腹筋は見事に割れており、ブロック塀のようである。
大腿筋は丸太のように太く厳つい。
周りを取り囲んだ女子達は、そんな鬼木坂奮子の筋肉をしきりに触ったり指でついたりしていた。
「あのー、嬢ちゃん達、そろそろ行かせてくれねーかな」
鬼木坂奮子は心底困った顔で、太い指で頬をぽりぽりとかいていた。
その様子を、日辻山 羊子は離れた所から見つめていた。
私も触りたいな。
素直にそう思っているが、なかなか踏み出せない。
だが、僅かな優越感を感じていた。
今朝の、あのひったくり犯を成敗した時のあの勇姿は、このクラスメイトの中では自分しか見ていない。
それだけで、羊子はなんだか嬉しかった。