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筋肉第17話 チュパカブラとボス

 夜。

 光芒山公園へと続く上り坂の途中を、とある人影が歩いていた。

 体格は、痩身である。

 女子校の制服を着ている為、時折り吹く風がスカートを揺らしている。

 街灯の無い暗い夜道を、その人影は灯りを何も持たずにガードレールの横を歩いていた。

 ふいに、その人影が身軽に跳躍した。

 ガードレールを軽々と飛び越えて、脇の森の中へと入って行った。

 標高が高い為、森の中からでも玄米市の夜景が見える。

 人影は、夜景を横目に見ながら、舗装された道路を歩くのと何ら変わらないリズムで暗い夜の森を歩いていた。

 しばらく歩いて行くと、開けた場所に出た。

 そこに、月明かりに照らされた2体の小さな生物がいた。

 体型や身体の大きさは猿に似ているが、顔のサイズに対して眼が異常に大きい。

 全身に体毛は無く、爬虫類に似た質感に覆われており、背中に一列の棘が生えている。

 チュパカブラ達であった。

 

 「あ、ボス!」

 

 「お疲れ様っチュ!」

 

 2体のチュパカブラが、口々に声を出した。

 

 「おつかれ」

 

 人影は呟くように言うと、切り株に座り込んで脚を組んだ。

 目線の先に、玄米市の夜景が煌めいている。


 「これから狩りに行くとこだったっチュ!」

 「ボスも一緒にどうでチュか?」

 

 チュパカブラ達がはしゃいだ様子で言うと、人影は夜景を見ながら言った。

 

 「どこに行くの?」

 

 「牛がいっぱいいるとこっチュ!」

 

 すると、人影は夜景からチュパカブラの方に視線を移した。

 

 「……牛崎農場?」

 

 「そうっチュ!」

 

 「あそこは行っちゃダメ」

 

 はっきりと人影が言うと、チュパカブラ達は動揺した様子で声を上げた。

 

 「な、なんででチュか!」

 

 「あそこは私のクラスメイトの家だからだよ」

 

 「く、クラスメイトだからなんだと言うんでチュ!」

 

 「クラスメイトだから、友達なんだよ。あの子はとっても良い子なんだ」

 

 言って、人影はくすりと微笑みを浮かべた。

 そして穏やかな声で続けた。

 

 「それに、もう2度と来るなって言われたんでしょ? 筋肉モリモリマッチョな人に」

 

 「言われたっチュ! けど、対あいつ用の秘策があるっチュ! 次は負けないチュパカ!」

 

 「ふふ」

 

 白い歯並びを見せて、人影は笑った。

  

 「君達じゃ勝てないよ。鬼木坂奮子にはね」 

 

 「じゃあ、誰なら勝てるっチュパカ! ボスなら勝てると言うんチュ!?」

 

 「さぁ。どうだろう」

 

 人影は穏やかな表情で、遠くの夜景に視線を戻した。

 しばらく夜景を眺めた後、ふいに天を向いた。

 満天の星空が、夜空に瞬いていた。

 

 

 

 

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