筋肉第14話 部活勧誘会
月曜日。
玄米女子高等学校の一年生達は体育館に集まっていた。
つい先程、部活勧誘会が催されたのである。
各部活の代表者がスピーチをしたり技術を見せたりしている。
そして最後の空手部の発表。
主将である獅子崎 礼央が現れた時、黄色い絶叫が鳴り響いた。
一年生の間で、すでに獅子崎礼央の名前は有名だった。
とにかくかっこよくて強くて、女子高生でありながら雄のフェロモンを激しく放っており、姿を見ただけで身体が疼いて来るという噂が広がっていたのである。
そして今日の獅子崎礼央は、噂以上に魅力的だった。
礼央は常に野性味溢れる不敵な笑みを浮かべていた。
ウェーブのかかったセミロングの明るい茶髪は一本一本が太くて量が多く、雄ライオンのたてがみさながらである。
身長は、172センチ。
一見すると細身だが決して華奢という訳では無く、トップアスリートのように締まっている。
板割りや瓦割りをした後に、空手の演武を終えた時には、瞳がハートマークの形になってしまう女子達が多発した。
やがて、大きな氷の塊が台車に乗せられて運ばれて来た。
一辺が1メートルほどの、正方形の氷である。
氷の前に立った礼央は、深い呼吸を一回すると、目にも止まらぬ速度で手足を動かした。
氷の塊を素手で削っていたのである。
正拳突き。
鉤突き。
手刀。
肘打ち。
膝蹴り。
蹴り。
頭突き。
礼央は不敵な笑みを浮かべながら、氷の塊に攻撃を加えて行く。
そして、礼央の動きが止まった。
氷の塊を、片手で高く持ち上げていた。
正方形だった氷の塊が、見事なハート形になっていた。
直後、体育館内に爆音のような拍手と歓声が沸き起こった。
「まだだぜ」
礼央はひとりそう呟くと、そのハート形の氷を真上に放った。
そして、自らもその場で跳躍し、竜巻きのように回転した後に、見事な空中回し蹴りをその氷にぶち当てた。
大粒の雪ほどの大きさに粉々になった無数の氷の破片が、見学している女生徒達の頭上に降り注いだ。
細かな氷を浴びた女生徒達は、目を瞑りながら歓喜の悲鳴を上げた。
全員が興奮して頬が染まっている。
「うわぁ! かっこいいね!」
勅使河原 天音が、興奮した様子で隣の恩那 ユキに話しかけた。
「やばいね!」
ユキも興奮している声を出した。
天音は、ふと気になって、体育館の後ろの方を見た。
鬼木坂奮子は、両腕を組んで壁に背中を預け、静かな微笑みを浮かべていた。