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黄昏の私はもう救われない  作者: クンスト
第十九章 太陽の女神の黄昏
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19-3 女神羲和3

 無用心に接近してきた不遜なやからを処罰する高熱の神罰、“ダークフィラメント”が体に巻きつく。触れた部分の皮膚が黒く変色すると同時に泡を発する。そんな激痛をダークフィラメントは無視して体内へと沈み込んでいく。


「があああああッ」


 恐らく、近接防御兵装に近い役割なのだろう。それもオートで動く方式か。義和が動かしている雰囲気はなく、炎上し始めた俺の体よりも同じく炎上し始めた金角の方を注目している。


「ああああああッ」

「害虫が五月蠅いのに、金はどうして死んでいるのです」


 俺が絶叫しても完全に無視だ。

 だから、気を引くために舌を出してやった。


「あああああ……なんちゃって」

「……不快な害虫は増えるものです」


 防御機構の概要は把握できた。『分身』を二体犠牲にした甲斐かいはあっただろう。


==========

“『分身』、己のコピーを生成するスキル。


 『魔』の最大値の一割を分け与えて、スキル所持者の一割のスペックの分身を作り出す。

 分身は分け与えた『魔』がゼロになると消滅する。存在するだけでも『魔』は消費されるので長時間の存続は不可能”

==========


 ナキナ忍者からの直伝とうようの『分身』スキル。燃える俺は偽物。金角も分身体が『擬態』していた偽物。

 よく見れば階段したに展開されたままになっていた『暗澹あんたん』の中にいるのが本物の俺である――本物の金角は腹を蹴って向こう側だ。


「一手使わせたと言いたいが、『魔』を二割消費して一手だけというのも燃費が悪い。何とかしてダメージを負わせたいな」


 あの黒い鞭、見た目よりも避けづらい。それに一本だけという訳でもないはずだ。

 まだ燃え切っていない分身体が最後に頑張って片手を伸ばすと、新たなダークフィラメントが発生して手首を焼き切った。ほら、やっぱりな。

 安全に接近するなら『暗影』を使うしかなさそうだが……ん、そういえば分身体はパラメーターはともかく、スキルは本物と同一のものが使用できるのだっけ。


「――悪い事を思いついてしまったかもしれない。試してみるか」


 あらためて『分身』を一体作って階段を駆け上らせる。

 ワンパターンな俺の行動に怒れる女神もあきれ気味だ。


「小さき害虫の脳みそは覚える事を知りませんね」

「ちょっと違うぞ、『暗影』発動!」


 ダークフィラメントの射程範囲ギリギリで影をまとわせて分身体を跳ばす。

 義和の隣に現れた分身体は、罰当たりにも女神のかいなに手を置く。


「害虫に触れられるなど気色が悪い。此方の体に触れるという事は恒星の表層に触れるも同じ。蒸発して死ぬのです」


 摂氏六〇〇〇℃の熱量により爆発的な蒸気を発して四散する寸前、分身体は役目を遂行した。



「『武器強奪ぶんどる(強)』、『暗器』、スキルコンボ発動。お前の権能、全部いただいて――」



 『暗器』で隠した物はスキル所持者にしか取り出せない。少なくとも第三者によって取り出された前例はない。

 ここで湧く疑問は、『暗器』のスキル所持者が死亡した場合、格納していたアイテムの扱いはどうなるか、である。死亡と共にスキルが解除されて放出されるのか、格納されたまま次元の狭間に消え失せるのか。これも前例がないため分からない。

 ウィズ・アニッシュ・ワールドの管理神に聞けば過去事例を教えてくれるかもしれない。けれども、忍者職の『分身』スキルを使いつつのアサシン職の『暗器』を使った前例はあるだろうか。


「あ? あぁ? あああ??」


 まあ、長い歴史の中で己が初の考案者になれるなどとは思っていない。人類の途方もない試行錯誤、成功と失敗の積み重ねの中には数多くの先駆者がいる。

 とはいえ、太陽の女神の片腕を引っこ抜いたのは俺が初めてだろうが。


「こ、こなッ、こなた、此方の、此方のッ!?」


 分身体にたくしたのは神性の特権、超常の力を行使する権能の強奪だ。スプラッタに腕を取るつもりではなかったものの、人間に化ける能力も権能の一つという事か。権能を奪ったという事実が腕の喪失という結果として現れている。


「此方のッ。どこッ。ああ、此方のッ!!」

「分身体が消えるのが少しだけ早かった所為で片腕までしか奪えなかったか」


 権能すべてを奪えなかったものの、分身体が消えても義和の腕は戻っていない。

 つまり、分身体が『暗器』で隠したまま消えた場合、隠した物は戻ってこない。世界から消えてなくなる。

 女神の左腕は剣で斬ったような綺麗な断面ではなく、猛獣に喰われた後のごとくズタズタだ。



「スキルコンボ“Void Bite”、ヴォイドバイドとでも呼称しよう」



 月の女神の権能の核たる月を奪ってから、より実戦的な方法を模索していた。

 奪ったまま使うというのもありではあるものの使いこなせない物もあるだろうし、敵が取り戻してしまう心配もある。それならば『分身』との組み合わせで最大十回、敵の武器を奪って消滅させる方が好都合な場面も多いだろう。

 奪うためには触れなければならない部分はもう少し改良できそうだが。皮膚が恒星のように熱い義和が相手だと完全に奪うのは難しい。


「害虫害虫害虫害虫ッ。よくも此方の腕をッ。跡形もなく消えてしまえ! 神罰執行“フュージョン・イグニッ――」

「誰かある。太陽さえも凌駕する大輪を咲かせる時間だぞ」


 大陸を吹き飛ばす事さえもいとわない反撃を繰り出そうとする義和の怒りは恐ろしい。

 だから、ここで一気に畳みかける。温存していた対太陽神策の使い所はここだ。

 先発を呼び出すために仮面も迷わず取り外す。


「……頭痛がしない?」


 俺の影から溢れて大輪を咲かせた者の名はヒマワリ。


==========

“『太陽を象徴する花』、太陽の花とも呼ばれる大輪が授かりしスキル。


 太陽の花、と名付けられた花に付与されるスキル。

 地球上ではそれ以上の意味はないし、太陽の方角を常に向くような事もしない。

 しかしながら、黄昏世界においては事情が大きく異なるだろう。太陽を象徴するなど不敬であるが、疑似的に天の大権を身に宿す事が可能となる。太陽の熱に身を燃やされて無事であればの話になるが”

==========


 太陽を象徴する花であり、太陽神の権能を一時的にジャック可能な程に精巧な絵画の名である。

 義和の背後に展開されていた太陽は光を失い、代わって、俺の背後で太陽のように輝かしい黄色いヒマワリが爛々と輝く。

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミカライズ「魔法少女を助けたい」 1~4巻発売中!!◆   
 ◆画像クリックで移動できます◆ 
 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


― 新着の感想 ―
権能パクった結果、禁錮をパクって無効化した?
Void Biteは凶悪に見えるけど神格相手には刺さりすぎてる側面が強いですね いや武器の強制削除も十分凶悪ですけど本来は殺傷力を期待する技ではない感じです。権能=本人そのものな神格には特効になってる…
これはもうブラックホールか何かにクラスチェンジしないか心配になる
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