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自分勝手な言い訳


「もし、わたしが学校に行けないくらい頭痛が酷くなったら、他の人も一斉に休ませ学級閉鎖にしてしまえば欠席が付かないと考えたの。そのためにいつ学級閉鎖になってもおかしくないように欠席者の数を調整していたの」

「調整って……」

 頭痛に苦しめられる奴らの考えはお構いなしなのかよ――とは言わない。言って逆鱗に触れれば、明日は全員欠席なんて事態にもなりかねない。

 関野の話を聞いて理解しなければ、何も解決しない。

「自分でも駄目なことをやっているとは思ったけれど、他に方法が考えられなかったの……」

「学校なんて、辛かったら休めばいいじゃん」

「皆勤賞って賞があるのなら、わたしはそれも取らないと気が済まない。わたしってね、見かけによらず負けず嫌いなの」

 ペロッと舌を出すのが可愛い。なにをやっても可愛く見えてしまう。

「見かけ通りよ。瑞穗は昔から負けず嫌いじゃない」

 女友達には可愛い仕草も通用しないみたいだ。恵梨香はちょっと怒っている。


 負けず嫌いな人と一緒にいると疲れるんだよなあ。というか、ひょっとするとどっちも負けず嫌いなのではないだろうか。


「でも、わたしがどんなに頭痛にしようとしてもならない人がいたの。それが、あなた」

「……」

 やっぱり何度も何度も試されていたのか……。それって、ひょっとしなくても実験台だよ。まるで解剖されるカエルの気分だぞよ。

「最初は不思議に思っていたわ。でも、まさか頭痛にならないどころか、他人の頭痛を治せる能力があるなんて」

「いや、頭痛にならないわけじゃない。頭痛になってもおまじないを心の中で唱えていたんだ」

 自分でも気付かないくらい何度も何度も何度も何度も! 痛いの痛いの痛いの痛いの飛んでけ飛んでけ飛んでけどんだけ―って!


 あれは全部、関野の仕業だったのか~――! 正々堂々と頭が痛いぞ!


 可愛かったら何をしてもいいって訳じゃないと言ってやりたいが言わない。すなわち可愛い女子に嫌われたくない論――。いや、可愛いとか女子とか関係なく、人は誰だって誰からも嫌われたくない生き物なんだ。

「でも、わたしも頭痛くならなかったわよ。一度も」

「……恵梨香に試すわけないじゃない。友達なんだから……」

「……瑞穗……」

 いや、騙されたらあかんよ。さっきまで恵梨香の悪口をメモに書いてみんなの机に入れとったんよ。

 下校の時間はとっくに過ぎているが、教室で恵梨香と関野の話は続いた。

「友達なら、なぜ関野は恵梨香のせいにしようとしたんだ」

「……」

 恵梨香は関野のことを友達だと言っていたんだぞ――。あのメモを見る限り、関野が恵梨香を陥れようとしていたことは間違いない。

「それはいいのよ、一真」

 恵梨香がそういって俯く。

「いや、ちっともよくないだろ。じつは恵梨香にも同じ能力があることに気付いていたのか」

「いいえ。知らなかったわ。今日の今まで……」

「だったら、なぜ……」

 聞きかけて黙った。関野も俯いている。


 なんか……二人だけの隠し事でもあるのだろうか。


「メモにわたしの名前を書いた事、別に気にもしていないし怒ってもいないわ」

 おいおい、恵梨香の口から信じられない言葉が飛び出たぞ……。

「ごめんね」

「いいのよ。友達じゃない」


 ……いいのか? 本当に二人は友達なのか――。


 恵梨香は……今はそれ以上聞かないでって言っているようだった。


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