二重人格確認ノート
「あとは、恵梨香ってひょっとして二重人格なのか」
昨日、家でも色々と考えたり調べてみたりしたのだ。花粉症でも頭が痛くなることを知った。花粉って春だけかと思っていたが、それも違ったのに驚かされた。
――そして辿り着いた一つの可能性が、恵梨香二重人格説だったのだ――!
「なによそれ」
「普段とは別の人格者が自分の中にいるってやつだよ」
つまり、恵梨香が気付かないうちに恵梨香の中のもう一人の人格が現れてクラスメイトを頭痛にしているのではないかという説だ。
「それは知っているわ。でもわたしは二重人格じゃない」
断言しよった。
「なんで分かるんだよ」
自分では中々気付かないかもしれないじゃないか。
「じゃあさあ、逆に一真がもし二重人格じゃないのかって聞かれたら、どうやって調べるの」
証明してみなさいよって言いたいんだな。
「フッ、よく聞いてくれた。俺ならすでに調査済みさ……」
「調査済みって……病院とかで?」
「ノンノンノン。そんな煩わしいことをしなくても大丈夫さ」
自分の意識を確認して数分毎に書き留めていくのさ。「八時。俺。OK」「八時一〇分。俺。OK」「八時二〇分。俺。OK」……と。
二重人格に憧れてそれを学校で、「二重人格☆確認ノート」に数週間にわたり書き留めていたのだが……やっぱり俺は一重人格だった。
「……」
ある日そのノートが先生に見つかり、顔から血が吹き出るかと思うくらい恥ずかしかった。先生もノートのタイトルを見て大きくため息をついていらした。
中一のときの黒歴史だ。
「もしかして、恵梨香も自分が二重人格か調べたのか。ノートとかに書いて」
「……そんなことしないわ。一真は重度の中二病ね」
「まあ、今まさに中二だからな。ハッハッハ」
「……」
――おや? 顔がポーっと赤くなっている。ひょっとして……?
恵梨香もなんだかんだ言って黒歴史のオンパレードなのだろう。誰だって他人には言えないような恥ずかしい過去の一つや二つはある筈だ。人と比べてそれが多いか少ないかの違いなのだろう。
読んでみたいぞ。恵梨香の「二重人格☆確認ノート」を。