表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔族を統べる聖魔の王  作者: うちよう
01 魔人王即位編
6/52

06 三者会談

 バレンとアスモレオンの棄権宣言には正直驚いた。

 魔人王直系の王子王女なら、魔人王の座を当然のように狙っていると思っていたからだ。

 とにかく、魔人王の座の争奪戦を辞退するにはそれなりの理由があるはず。

 まず俺は彼らに棄権する理由を尋ねてみることにした。


 「無理に参加する必要はありませんが、なぜ自ら棄権を? 誰もが魔人王の座を欲していると思っていたのですが・・・」

 「理由は簡単だよ、な? アスモレオン」

 「まあ、もし仮に俺が魔人王になったら、後が怖いって言うのもあるけど・・・」


 確かに、アスモレオンが魔人王になったらガイオスやセモンは黙っちゃいないだろう。

 それだけじゃない、彼より実力が上の王子王女が納得するかとどうかと聞かれれば、もちろん答えはNOだ。

 彼を殺してでも魔人王の座を手に入れるに決まっている。


 ーーん? 殺してでも・・・?


 魔人王が死ねば、次の魔人王候補を王子王女の中から再び選ばれるのは自然の成り行きだ。

 そんなこと、どんな馬鹿でもわかる簡単な事だった。

 つまり、魔人王(オヤジ)が死んだ後の未来を誰もが知っているわけでーーーー


 ーーまさかな・・・。


 憶測は憶測でしかない。

 でたらめなことを考えるくらいなら、もっと違うことに頭を使った方がまだマシだ。

 

 「ルシフェオス、どうかしたか? 顔色悪いぞ?」

 「なんでもありませんよ、それより棄権する理由って言うのは?」

 「俺たちが棄権する理由、それはーーーー」


 アスモレオンはニッコリとした表情を俺に向ける。


 「魔人王様が選んだ人に文句はないということだよ」

 「それってつまり・・・」

 「ルシフェオスが魔人王になることに異論はないということだ」


 この二人が何を言っているのかさっぱり理解できなかった。

 魔人族は「強き者が弱き者を食らう」ーー要するに『弱肉強食』の理念が根深く浸透している種族だ。

 それなのに、自ら進んで弱き者になろうとしている彼らの意思が俺にはさっぱりわからない。

 混乱している俺を気遣ってか、バレンが笑って言葉を綴る。


 「ここで話してでも疲れるだろう? 俺の部屋でじっくり話すとしよう」

 「そうですね、ここでコソコソと話してたら怖い人たちに絡まれかねないからね」


 キョロキョロと見渡すアスモレオンを見ていると、弱者でいることに何か思うところはないのだろうかと、つい気になってしまう。


 ーー準備をしようと思っていたが・・・。


 外の景色を窺ってみると、空一面は綺麗な橙色に染まっていた。

 準備とはいっても何をするかこれっぽっちも考えていなかったので、今から考えてもきっと何もできずに終わってしまうのがオチだろう。

 だとすれば、今日の残りの時間はバレンとアスモレオンとの会談の時間に当てた方がいいに決まっている。


 「俺も二人には色々聞きたいことがあるんです」

 「それは奇遇だな、実は俺も同じことを考えてたんだ。それじゃあ行こうか」


 彼に案内され、俺とアスモレオンはバレンのプライベートルームへと招待されるのだった。



<><<>><<>><<>><<>><<>><<>><<>><<>><<>><<>><<>



 「ここが第八王子の部屋か・・・」


 バレンのプライベートルームに招待された俺は一周するように彼の部屋を見て回っていた。

 大して何か特別な物があるわけではないのだが、部屋の造りが俺の部屋とまるで違うから少しだけ興奮してしまっていたのだ。

 どうやら、部屋のグレードにまで貴族と凡人の階級差というのは存在しているらしい。


 「バレン兄上、これは何でしょう?」


 そう言ってアスモレオンが手に取ったのは、重りのようなものだった。

 左右の端にある丸い球体を一つの棒で繋ぎ合わせた、何に使うかも見当がつきそうにない小道具だ。

 不思議そうに小道具をまじまじと見つめるアスモレオンに、バレンは小道具の説明を始めた。


 「それは「ダンベル」って言う筋力トレーニングに使う道具だよ」

 「そうなんですね、ちなみにどうやって使うんですか?」

 

 バレンがアスモレオンにダンベルの使い方をレクチャーしている間、俺の視線はあるものに注がれていた。

 

 ーーこれは・・・。


 俺が見ていたのは、木製の額縁に飾られていた一枚の写真。

 その写真には、幼き日のバレンらしき男児と魔人王(オヤジ)が写されていた。

 二人とも良い笑顔で、こっちまで気持ちがほっこりしてしまう。


 「良い写真だろ? それ」

 「はい、楽しそうで羨ましい限りです」

 

 アスモレオンにダンベルの使い方を教え終わったバレンは、その額縁に入れられた写真を手に取って懐かしそうな、そしてどこか寂しそうな顔で微笑んでいた。

 

 「俺は魔人王様に憧れていたんだ。他を寄せ付けないその圧倒的な強さをどうにかしてでも手に入れたいと。でも、ガキだったからそんな当たり前なことも知らなかったんだよ。魔人王様は特別な存在なんだって、俺じゃどうすることもできないって」

 「どうしてですか? 強くなる可能性はあるはずですが・・・」

 

 常識的に考えて、魔人王の血を継ぐ者ならそれ相応の力を有していてもおかしくないからだ。

 強くなることを諦めてしまったのだろうか?

 それが要因として「弱者」でいることを選んでしまっているのなら、もの凄く勿体ない。


 「だったら、俺と特訓しましょう。まだ時間はありますし、決定戦までに間に合わせましょう」

 「ルシフェオス、魔人王候補でもある敵を鍛え上げてどうするんだよ」


 ハハハと声を出して笑うバレンはどこか悲しそうな表情だった。

 何かが俺の中で引っ掛かる。

 悲しそうな表情をするバレンを見て、俺の中で何かが消化し切れていなかった。


 「俺は良いんだよ。そもそも、俺は決定戦に出る資格なんてないんだよ」

 「なんでですか? 兄上は魔人王直系の第八王子ですよ? 資格はちゃんとありますよ」

 「そうか・・・ルシフェオスは知らなかったんだな?」


 写真を元の位置に戻したバレンは、テーブル席へとスタスタと歩いて行き、そして静かに着席した。

 

 「さっき魔人王様が認めになられた者に文句はないと言ったけど、辞退する理由はまだ他にあるんだ」


 俺もバレンに続くようにテーブル席へと着いた。

 一方、アスモレオンはと言うとダンベルで筋トレ中だ。


 「それで、どうして辞退するんですか? 「弱肉強食」、強き者が生きやすいこの魔人の国でなぜ自ら弱者になろうとするんですか? それに魔人王直系の兄上なら強くなれるというのに」

 「根本的に間違えてるんだよ、いいかい? 一回しか言わないからちゃんと聞いてるんだよ? それと、この話はくれぐれも口外しないでくれ」


 よほど、大事な事を話そうとしているのだろう。

 今日初めて話す相手だというのに、自分の秘密を明かそうとしているのだ。

 口が裂けても言うわけにはいかない。

 固唾を呑み込み、一層緊張感を全身に漂わせる。


 「それで、間違えているって・・・何がですか?」


 そして俺は、深刻そうな顔をするバレンから放たれた真実に、言葉を失った。


 「実は俺ーーーー魔人王様と血が繋がってないんだ・・・」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ