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魔族を統べる聖魔の王  作者: うちよう
01 魔人王即位編
45/52

45 魔王降臨

 今日を以って『悪魔の獄園(デビルズ・パーク)』に住み着く悪魔共は魔界から消滅した。


 悪魔(デーモン)の国を自らの手で滅ぼした魔人の新王はきっとそう思っているに違いないだろう。

 だが、結論から言うと『悪魔の獄園(デビルズ・パーク)』は消滅していないし、一人も犠牲者など出ていない。

 では、なぜ「死ノ雨(デッドレス・レイン)」をまともに食らった悪魔(デーモン)たちは掠り傷負うことなく生き延びていられるのか。

 その答えは、全てを計画通りに遂行させた一匹の悪魔(デーモン)のおかげと言っても過言ではない。

 その悪魔(デーモン)の名はーーーー


 「ヘルゼビュート、そろそろ結界を解除してもいいカナ?」

 「えぇ、問題ありませんよ。デウスバキュス」


 ヘルゼビュートの指示通りに結界を解除したのは、ウェーブのかかった金髪を後ろで束ねた男、デウスバキュスだった。

 紫紺の瞳を輝かせた彼の容姿はというと、文句の付け所がないーーまさに完璧と言えるほどの美貌を兼ね備えており、残念な部分があるとすれば容姿から遠くかけ離れたそのオネエ口調と女装趣味だろう。

 今だってスカートの裾をわざとらしくヒラヒラと動かしている。

 だが、ヘルゼビュートからすればそんなことは実にどうでもいいことだった。

 己の野望を叶えるのに人格などの人の品性は全く必要ないからである。


 『使える者はとことん使う』


 それこそが彼を動かす不変的行動理念なのだ。


 「それでヘルゼビュート? あの子の魔力をきちんと回収することはできたのカナ?」

 「えぇ、デウスバキュスのおかげでようやく私たちの野望が一つ叶います」

 「本当にあの子の魔力で封印が解けるのかしら?」

 「私の推測はきちんと的を捉えているはずですよ。だから「思念(テレパシー)」で他の悪魔(デーモン)たちに魔王城へと集結するようお願いしてもらってもよろしいでしょうか?」

 「大したことじゃないから構わないわよ!」


 ヘルゼビュートの指示の元、デウスバキュスは再び結界を発動させた。

 悪魔族(デーモン)は魔人族とは違って、魔力を体現させるのではなくオーラとして自分自身を結界で覆う。

 最大のメリットといえば、少ない魔力消費量で魔人族と同等の力が使えるという点に限るだろう。

 しかし、どんな生物にもデメリットは必ず存在する。

 結界を身に纏う最大のデメリットは、戦闘に大きな制限が掛かってしまうということだろうか。

 結界とはいわば自分の能力を都合よく、より効率的に使用するために開発された悪魔独自の戦闘スタイルである。

 要は、自分の能力を使用するのに無駄な手順を踏むことなく、結界に留めて置くことで0タイムで能力をスムーズに使えるということなのだ。

 だが、そんな利便性が高い結界のメリットも裏を返せば最大の弱点になってしまう。

 もし、結界に自身の力を補填したとするならば、その者はそれ以上の力は発揮できないのである。

 当然の話だろう。簡略に説明するなら、結界の中に自身の魔力を前払いで補填しているだけなのだから。

 まあ、予測不可能な変幻自在の攻撃ができなくとも魔人族と同等の力を最小限の魔力で使えるのだからデメリットよりもメリットの方が大きいと考える悪魔は少なくないだろう。


 「色欲結界展開! 「思念(テレパシー)」!」


 一見すると何も起こっていないように思えるが、これこそが彼の能力なのだ。

 『色欲の悪魔』ことデウスバキュスの能力のほとんどが対象の精神に干渉するものばかり。

 精神間でやり取りしている内容を目視できないのは当たり前のことだろう。


 「よし、これでみんな魔王城に集まると思うヨ!」

 「えぇ、それでは我々もさっそく向かうとしましょう。今宵は眠れぬ夜となりますよ」

 

 そして二人は急ぎ足で魔王城へと向かって行ったわけだが、興奮のあまり徒歩三分の所を徒歩一分で辿り着いてしまった。


 「何が何でも早すぎたかしらね?」

 「えぇ、ですが早いに越したことはありませんよ。我々も早急に『永遠の扉』へと向かうとしましょう。あのお方が今でもお待ちになられていることでしょうから」

 「同じ六大悪魔でも、ヘルゼビュートの忠誠心は見上げたものだわ」

 「当然でしょう? あのお方こそ我々の希望そのものなのですから」

 

 ヘルゼビュートとデウスバキュスが話していると『永遠の扉』の方から罵声が聞こえてくる。

 どうやら、ある一人の悪魔(デーモン)は二人よりも先に到着していたようだ。


 「遅いじゃないか! 若いもんが年寄りよりも遅く来るとは何事じゃ! 言い出しっぺのお前たちが遅れてどうするんだ、えぇ?」

 「これはこれはご迷惑をおかけしました。『憤怒の悪魔』サタルドス様」

 「相変わらず威勢のいいジジィネ」

 「お前たちのようなどうっしようもない若造に躾をしてるんじゃろうが! それに、お前のような女々しい奴にジジィ呼ばわりされたくないわい!」

 「ちょっと~、聞いた? 人格否定するジジィって良くないと思うわよネ?」

 「お前もしてるじゃろうが!」


 二人の低レベルな言い争いはさておき、『憤怒の悪魔』サタルドスは白髪に長い白髭を生やし、白の儀式衣装を着た老人だ。

 その見た目によらず、過去に一度だけ魔人王を殺したことのある強者だという。

 そんな彼がこうしていじられてるのは滅多にお目にかかれない光景だろう。


 「ところで、他の皆様はどちらにいらっしゃるのでしょうか? どうも姿が見当たらないのですが」

 「ふん! ワシが一番乗りに決まってるじゃろ! 全く、どうして今時の若者はどいつもこいつもだらしがないんじゃ!」

 「・・・お爺ちゃん、この下り全員にしてたら時間かかるからやめようネ?」

 「馬鹿者! 誰かが叱りつけないと反省しない小僧共がいるから時間を食う羽目になるんじゃろうが!」

 「随分と騒がしいようだけど一体何事だい?」


 そう言って二人の会話に割って入ってきたのは、ショートカットの赤髪に情熱の篭ったルビー色の瞳をした『強欲の悪魔』アモンだった。

 臍を露わにした紅蓮の貴人服がかなり似合う女性だ。

 

 「これはこれは『強欲の悪魔』アモン様。お元気そうで何よりでございます」

 「ベルゼビュートも相変わらず堅物だな。それにサタルドスもデウスバキュスも元気そうで何よりだ」

 「おぉ、アモンちゃん! 相変わらずめんこいのう〜。そんなアモンちゃんがワシは大好きじゃぞ。将来はワシと結婚するかい?」

 「ジジィ、普通にキモいヨ?」


 サタルドスの気持ち悪い発言はさておき、これでベルゼビュート、デウスバキュス、サタルドスにアモンと四人の悪魔(デーモン)が『封印の扉』の前に揃った。

 あとは二人の悪魔(デーモン)を待つだけだ。

 それから間も無くして残りの二人が無事到着した。


 「お待たせしました、めんどくさかったけど封印が解けると聞いて馳せ参じました」


 そう口を開いたのは『怠惰の悪魔』ベルフェゴーンだ。

 黒髪の短髪に金色の瞳をした男で、眠たそうに瞼を落としてるも顔立ちがかなり整っているため普通にイケメンである。

 黒の寝巻きをだらしなく着ているのにも関わらず、お洒落に見えてしまうのはきっと彼がイケメン過ぎるからだろう。

 だが、どんなにイケメンであってもサタルドスの逆鱗に触れることに変わりはない。


 「普通に遅刻じゃ! 全く、これだから今時の小僧は・・・」

 「は、はぁ・・・」

 「まあまあ、せっかくみんな揃ったんだからそうカリカリするなよ、な?」

 「むぅ、アモンちゃんがそういうのなら今回だけは許してやるわい! アモンちゃんに感謝せい!」

 「いや、だから気持ち悪いんダヨ!」


 四人が和気藹々と会話をしている中、純白のベールを纏ったようなドレスを着服した一人の銀髪美女がヘルゼビュートの元へと歩み寄っていく。

 透き通る銀髪の長髪に青い花飾りを身につけており、漆黒の瞳に青い瞳孔を宿した虚ろな目が特徴的の美女だ。

 そんな彼女の名はというとーーーー


 「これはこれは『嫉妬の悪魔』レヴィアルナ様。本日は足を運んで頂きありがとうございます」

 「呼びつけたのは君たちの方だろう・・・それに私はその『嫉妬の悪魔』って呼ばれ方、大っ嫌いだから」

 「それは大変失礼いたしました。これからはレヴィアルナ様とお呼びしますので、今回の失態はどうかお許し頂けないでしょうか?」

 「分かってくれさえすれば別に構わない」


 かなりそっけない態度を取るレヴィアルナだが、こう見えて彼女は六大悪魔の頂点に君臨する最強の悪魔(デーモン)なのだ。

 実力としては、魔人王を殺したことのあるサタルドスを手玉に取るほどで『嫉妬の悪魔』と耳にすれば誰もが恐怖し戦意を喪失するという。

 『嫉妬の悪魔』という呼ばれ方を好かないのは、恐怖の象徴となってしまったせいで他の者たちと壁を作ってしまったからなのかもしれない。

 

 「それより、ここへ呼んだのは例の件を実行するためなんでしょ?」

 「おっと、同士たちとの再会で忘れてしまうところでした」


 そう言うと、ヘルゼビュートは『永遠の扉』に手をゆっくりとかざした。

 すると同時に、和気藹々としていた空気は一瞬にして消え去り、五人の悪魔(デーモン)たちは空気を読むように扉に向かって平伏し始める。


 「さあ、全ての条件を揃えました。これで晴れて自由の身となるはずです」


 ヘルゼビュートの中から流れ出る魔力が少しずつ『永遠の扉』に流れ込んでいき、全ての魔力を無事流し終えると『永遠の扉』からギシギシと崩壊する音が聞こえ始めた。


 「ククク、どうやら私の推測は正しかったようですね」


 他の悪魔たちの元まで引き下がり、ヘルゼビュートも彼らに倣って平伏し始める。

 というのも、封印されていた六大悪魔たちの親玉が時機に目覚めるからだ。

 そして『永遠の扉』という鎖はヘルゼビュートの野望通り見事に破壊され、中から凛として姿を現したのは全ての身体パーツが絶妙に整った絶世の美女だった。


 「おぉ、艶やかな黒の長髪に闇色の混じった毛先。そして怒りを象徴する鮮やかな赤眼と冷酷さを象徴付ける水色の瞳。この時をずっと心待ちしておりましたーーーー」


 ヘルゼビュートは感極まったように言葉を綴る。


 「おかえりなさいませ、我らが魔王(デーモン・キング)アルデリカ様!」


 平伏する彼の言葉に反応するよう、透き通った声で魔王アルデリカは応えた。


 「ヘルゼビュート・・・か、我に掛けられた封印を解いたのは貴様か?」

 「左様でございます。アルデリカ様!」

 「ふむ、身体に異常は・・・なしか。よくやってくれたヘルゼビュート」

 「私にはもったいないお言葉です!」

 「さて、無事に復活したことだし聞くとしようか」


 魔王アルデリカは自身の魔力で漆黒の鎧を作り出すと『永遠の扉』の瓦礫にゆっくりと腰を掛けながら口を開く。


 「戦況が今、どうなっているのかをーーーー」



 

 

悪魔の方のキャラ設定はこんな感じです!

お気に入りのキャラクターはいましたでしょうか?

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