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魔族を統べる聖魔の王  作者: うちよう
01 魔人王即位編
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03 悲報とこれから

 俺は母さんの後について行くよう、無駄に長い廊下をただひたすら歩いていた。

 向かっている場所は、十中八九『魔人王の玉座』で間違いない。

 言うまでもなく、今から行われようとしているのは『次世代魔神王』の座に誰が就くかの会議でもするのだろう。

 魔人王(オヤジ)が亡き今、均衡していた魔界のパワーバランスが大きく崩壊してしまうからである。


 『魔界』とは、魔人族、吸血鬼族(ヴァンパイア)悪魔族(デーモン)妖魔族(ゴースト)の四種族が共存する世界のことを指す。


 かつては、魔人王(オヤジ)が魔界を統率してくれていたおかげで、種族間のパワーバランスは何とか均衡に保たれていたのだが、その統率者がいなくなった今、パワーバランスが大きく崩壊してしまうのは目に見えてわかることだった。

 今回の召集は、そんな誇り高き魔人族存亡を賭けての『次世代魔人王選定会議』なのだろう。


 しかし、新たな魔人王を迎え入れればいいとそう単純な話ではない。

 魔人王(オヤジ)の力は強大ゆえに、吸血鬼族(ヴァンパイア)悪魔族(デーモン)妖魔族(ゴースト)の歯向かう姿勢を綺麗に削ぎ落としたほどだ。

 だからこそ、『次世代魔人王』に就く者は魔人王(オヤジ)に次ぐそれなりの実力者でないといけない。

 

 それにしたって、魔人王(オヤジ)の急死には未だ驚きを隠せない。 

 魔人王(オヤジ)が死んだと知らされたのは、ついさっきほどだ。

 遡ること数時間前ーーーー普段と何も変わらない日常の中、鏡と対面した俺は改めて自分の容姿と魔力量を確かめていた。


 「大天使エゼキフェル」の象徴とも言える、灰色の癖っ毛のついた髪に碧眼の瞳。

 どこが違うかと言われれば、「身長」と「顔立ち」ぐらいだろう。

 「身長」は、年齢相応の大体百四十センチメートルくらい。

 「顔立ち」は、ジジ臭さが消えて若々しい顔立ちをしている。


 「ーーって、誰がジジイだよ」


 などと独り言を呟きながらも俺は王子に不釣り合いな見窄らしい服を脱ぎ捨てて、自身に秘められた魔力量を確かめてみる。

 最近は「魔人王(オヤジ)との面会」などと、なかなか一人になる時間を作れなかったから、自分の魔力量を確かめられていなかった。

 

 「魔人族」の魔力数値は「大天使」とは違い、実体を持たないオーラとして常時湧き出るのではなく体現される。

 つまり、その者の魔力は一目見ればわかってしまうというわけだ。


 「さて、どこまで魔力が増えたかなー?」


 前に確認した時は五歳だったため、魔力はほんの少ししかなかった。


 ーーそういえば、魔人王(オヤジ)が俺に接点を持つようになったのはその時からだったような・・・。


 それまでは見向きもされず、毎日母さんと下っ端生活を送っていた。

 そんな生活が百八十度ひっくり返ったのは、間違いなく魔人王(オヤジ)が俺の部屋に訪れた時からだ。

 興味本位で魔力の確認をしていた俺の部屋に突然魔人王(オヤジ)がやってきて、どういう心境の変化かそれからやたらと関わってきたせいでろくに調べることができなくなっていってーーーー

 

 「まあ、今更そんなことどうでも良いよな。それより、魔力はーーーー」


 体現の仕方は、「大天使」で言う「神々しいオーラの纏い方」とほとんど一緒だった。

 だから、誰かに教わるわけでもなく勝手に修得してしまったのだ。

 本来なら、魔力の体現はどこかのタイミングで教わるのだろうが、「下っ端王子」のせいかそれとも「平凡育ちの母親の元で育った」せいか誰も教えてはくれなかった。

 まあ、これと言って不自由はないから別に構わないのだが。

 

 そして俺は五年前と同様ーーーー魔力値をその身に体現させ、一人で勝手に驚愕していた。

 計り知れないその強大な魔力量。

 額全体に留まるはずの「闇の炎」は、全身へと行き渡っていた。

 一言で表すというならーー「凶悪」という言葉がしっくりくる。

 「大天使」からの転生が魔力値に大きな影響を及ぼした、としか考えようがないだろう。

 

 「これが、俺の魔力量か・・・この闇の力を使うには・・・」


 聖なる力と闇の力では、根本的な「コントロール」の仕方が異なる。

 「魔人族」となった以上、聖なる力はもちろん使えないわけで、もし闇の力を使いたいのなら魔人王(オヤジ)に教わる以外考えられないーー普通はそう考えるだろう。

 だが、魔人王(オヤジ)も俺にずっと付きっ切りで教えられるほど暇じゃない。

 だから、独学で「魔力コントロール」を学ばなければいけないのだ。


 試行錯誤しながら「魔力コントロール」の特訓を始めて五分が経過した頃、俺の部屋が乱暴にノックされ、扉が開かれる寸前に「闇の炎」を自分の身の内に引っ込めた。

 というのも、母さんには心配させたくなかったからだ。

 先ほどの「凶悪」な姿を見せれば、いずれは俺が抱く計画も全て悟られかねない。

 「大天使」たちへの復讐ーーそして、上級貴族への復讐。

 いつかは全てを打ち明けるつもりだが、そのいつかは今じゃない。

 だから何としてでも隠し通さなければならなかった。

 

 そんな俺の目の前に突如現れた母さんは慌てたような、取り乱したような、そんな雰囲気を漂わせながら震える唇をゆっくりと開き始めた。


 「・・・ま、魔人王様・・・が・・・お亡くなりに・・・」



 

 そして現在に至るわけだが、正直なところ腑に落ちない点があった。

 それは無論「なぜこのタイミングで魔人王(オヤジ)が亡くなったのか」だ。

 急死することは珍しい話でも何でもないから、別に誰かを疑っているわけではない。

 だが、俺の中で何かがストンと落ちて行かないのだ。

 それが何なのかもわからないから、こんなにもスッキリしないのだろう。


 ーーにしても、これは復讐する絶好のチャンス・・・と言いたいところなんだけどなー。


 正直、彼らには会いたくない。

 ここでいう彼らとは、同じ魔人王(オヤジ)の血を受け継ぐ兄姉たちのことだ。

 何回か顔合わせしたことはあるが、まるで俺と相性が悪い。

 その傲慢さが、彼らの弱さの源なのだろうと毎度のように思う。

 魔人王(オヤジ)の血を継いでいるせいか、俺の兄姉たちはそんな奴しかいないのだ。

 そんな奴らを『次世代魔人王』にするわけにはいかない。

 それに、この機を逃せば復讐する機会は二度と訪れないかもしれない。

 だからこそ、俺はならねばならない。


 この俺がーー『次世代魔人王』になるのだ。


 その決意を胸に俺は『魔人王の玉座』へと足を運んでいき、辿り着くなり母さんが俺に心配そうな視線を向けてくるが言いたいことは概ね見当がついている。


 「俺は大丈夫だから、母さんは母さんの心配だけしてくれればいいから」

 

 それから、この「玉座」から退室するまで母さんの顔を見ていない。見なくてもわかるから。

 恐らく、母さんは優しいから自分の身を捨ててでも俺のことを心配してくれているだろう。

 そんな母さんが安心してできるような「息子」にならなければならない。


 そのためにもーーーーー


 俺は重さを感じさせる扉をゆっくりと開けた。

 すると、そこには俺以外の魔人王(オヤジ)の血を継ぐ貴族服のようなものを着服した九人の男女が横一列に並んでいた。


 そうーー魔神王(オヤジ)の血を分けた醜い「兄姉」たちだ。

 

 



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