第五話
暗闇の中でジャックは三度、意識を覚醒した。
「ここは……東京特殊留置所?」
「お、めざめたね〜ちょっとまっててね。アシュラをよんでくるから」
「あ、はい。分かりました」
ジャックは暴走をしていたため自分がやったことについて気づいていなかった。さらに、暴走した原因さえも起きたばかりで意識が未だ覚醒しきっていないがために覚えていなかった。
「待たせたね。で、どこまで覚えてる?」
「どこまでとは……狩人の話ですか?」
「覚えているみたいだね。それで、狩人になる?ならない?とりあえず3分間待つよ」
「ピエロ!我と話をしよう!」
「はいは〜い」
ピエロと阿修羅は退出してジャックが部屋で1人でいることとなった。
(そう言えば、阿修羅さんは僕のことをジャックって呼んでいたよね?僕の名前じゃないし、ここはおそらく国の施設だから僕の名前くらい簡単に調べられると思うんだけど……狩人になると名前を名乗れなくなるのかな?それって人権がないんじゃないかな?……いや、そんなことを考えても仕方がない。僕が生き残るためには狩人になるしかないんだ。そう言えば、僕の怪物因子は何かな?使いやすくて強いのがいいんだけど世の中そんなに上手くはいかないよね。それに、僕は虚弱体質だからそんなに強い能力じゃないだろうしなぁ。でも工夫をすれば強くなれるはずだから頑張らないとね)
(阿修羅さんって口調とか一人称がブレブレだよね。それも怪物因子の影響かな?でも、なんで怪物因子って呼ぶんだろう?狩人と怪物は別物だから狩人因子でも良いんじゃないかな?いや、怪物にはマイナスの意味以外も含まれているからわざわざ言い換える必要がないってことかな?実際は違うけど似ているからそう呼んでいるのかも。ま、考えても仕方ないか)
(それより、強くならなきゃ。僕が仕事をこなせればお金もたくさん入ってくるだろうし、長生きすることは親孝行だからね。母さんを楽にしてあげるためにいっぱい仕事しなきゃ……母さん、母さんか……そう言えば母さんはどうなったんだっけ?僕がここに居ることを知っているのかな?知らないとしたら早く伝えないと心配をかけちゃう。でも、国の機関だろうからそういうところはしっかりしているだろうし大丈夫……人権が保障されていない可能性があるのを忘れてた。後で阿修羅さんに聞こうかな)
(それと、体が上手く動かせないな。なんで縄で縛られているんだろう?さっきはそんなことをされていなかったのに。なんか上から言われたのかな。確かに、僕はまだ狩人じゃないから国も安心できないのは当然だよね。これも阿修羅さんに聞かないと)
◇◇◇
「ピエロ、どうする?」
「どうするってなにを?そしてなにが?」
「ジャックの母親のことについて話すかどうかについてよ。ちゃんと捕縛用の縄で縛っているのだから暴走することはないわよ」
「???あんなことがおきてまだはなすつもりだったの?それこそ、ジャッくんカリュウドにならなくなっちゃうでしょ。イワヌガホトケってやつだよ」
「でも、いつか知るわけだしそれなら早めに言った方が良いんじゃないの?」
「いまはじょうほうかたでのうのしょりがおいついていないだろうしそのなかでショッキングなことをおしえたらこんどこそこころがこわれちゃうかもしれないよ?」
「うむ……ならば本人が聞いてこない限りは母親の件については言わない!それで良いか?」
「「うん」」
「ピエロもさんせいだよ〜」
◇◇◇
阿修羅とピエロは話し終えると
「さぁ答えを聞こう」
「別にもう少し待ってもいいからその場合は教えてね」
「あ、あの……その前に一つ聞きたいんですが……」
「いいだろう!言ってみよ!」
「はい、ありがとうございます。なんで僕は縛られているんですか?それと、母さんは……僕の母さんには僕の今の状況をどう伝えているんですか?」
「ちょっと待ってくれ。ピエロ、部屋を出ろ」
「え〜、さっききめたじゃん。それでいいんじゃないの?」
ピエロは明らかめんどくさそうに顔を歪めた。だが、阿修羅はそんな顔をされたぐらいでは引かなかった。
「想定より早いのよ。私が考えていたのは任務中に聞かれるって感じだったの!」
「はいは〜い。しょうがないな〜。ジャッくん、ちょっとまっててね〜」
そう言って2人は再度部屋から退出した。
「あ、はい。分かりました」
◇◇◇
「でさ、どうするつもりなの?」
「わかんねー。だけどここで言わなかったら信頼されないよなぁ」
「う〜ん、どうだろう?ピエロにはジャッくんのきもちがわからないからなぁ。ま、いったほうがいいんじゃないの?」
「いや、お前さっき言うの否定派だったじゃん。どう言う心境の移り変わり?」
「しょうじきどっちでもいいとおもったんだよね〜いってもいわなくてもそこまでかわんないんじゃないかなぁって」
「じゃあ言わなくても良いk」
「否!どれほど考えても言うが正し!是非言うべきだ!」
「そうよ〜言った方が彼のためになるもの。心が強くなければ狩人は務まらないから。だから言うべきよ」
阿修羅が人間の姿で人格をコロコロ変えて話すのはとてもシュールだ。それに加えて怪物因子の力を使っていないため声質も変わらず女の口調で喋るのは気持ちが悪い。そして、自問自答を繰り返した結果
「仕方ねぇ……分かったよ。話すよ、全部。話した結果精神が崩壊しても知らないからな」
「うむ!その時は処分をせざる終えん!」
「そうよ〜、せっかく新たな狩人候補を失うのは痛いけれど、仕方ないものね。使えない人材を置いておく程暇じゃないもの」
「よしきまったね。さっそくジャッくんにはなしにいこう!」
◇◇◇
「で、さっきの話だが本当に聞くのか?」
「はい……どんな結果でこんな風に縛られているとしても……聞かなければいけませんから」
阿修羅は首を傾げた。何を言っているんだと思っていたのだ。普通ならばここで心配すべきは自分の母親のことだろう。精神が少し狂っている阿修羅でも分かることだ。分かるだけで自分はそうであるとは言っていないのが肝だが。
それにジャックは暴走した時に聞いた時には母親が重症を負っていることは知っていた様子だった。大方、目覚めた時に異形の存在が母親を喰らっていたのを見て止めようとしたが叶わず、右腕が重症を負い気絶した時にリッパーが目覚め、怪物化し体を治したものだと思っている。だが、それなら今覚えていないのは何故だ?阿修羅は疑問を抱いていたがそれを頭の片隅に追いやり話す決意を再度固めた。
「じゃあ話すぞ。お前は今自分が縛られていることに疑問を持っているようだがそのためにはお前の母親の話をしなければならない」
「分かりました。でもなんでそこで母さんが出てくるんですか?」
「お前に母親は異形の存在……化物に喰われて殺された」
「え?」
ジャックは阿修羅が言った意味を理解できなかった。そんな突拍子もないことが聞かされるとは普通思わない。昨日まで元気だった母が今日急に体調が悪くなるなど思いつくわけがない。ましてや、ファンタジー的存在がこの世界にいてそれによって殺されたなどと考える人間は絶対数が圧倒的に少ないだろう。
「つまり死んだ」
「は!?」
「続けるぞ。お前の母親が死んだことによりお前は一度気絶した。そこで怪物因子によって植え付けられた人格、通称リッパーが目覚めて化物は殺したのだろう。そしてそこで僕達はリッパーとなったお前と初めて出会った。そこで規定により何があったのか聞こうとしたがリッパーが急に襲ってきてそれに僕達は応戦した。結果倒すことに成功し、ここに連れてきた。そこでお前が一度母親のことについて聞いてきたからそれに答えたらお前は暴走して再び僕達を襲ってきたから、また応戦し撃退。三度起こすとなった時に母親のことを教えて怪物因子が暴走でもされたら困るから能力を封じる縄で縛っていると言うわけだ。理解したか?」
阿修羅が包みさず話した。それはとても残酷なことだ。だが言わぬも酷。だから心を鬼にして阿修羅はジャックへと告げた。内心は苦痛でしかなかったのだろう。だが、同胞のような存在のことを思えば言わざるおえなかった。
「ウ゛ア゛ァァァァァァァァァァ!!!!!」
ジャックは精神状態が不安定となり絶叫した結果三度気絶をした。だが、二度目とは違い縄で捕縛されている影響で霧は少しも出なかった。
処女作も更新しないと
5/8