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怪化物  作者: 平生
第一章
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第四話

「うわぁァァァァァァ!!!!!」


 黒い霧で覆われた中でジャックは意識を手放しつつも絶叫していた。時間が経つにつれて霧の範囲は広がっていく。しかし、ジャックは倒れる素振りを見せなかった。


「あらら、カイブツインシがぼうそうしちゃったじゃん。かどなせいしんてきひろうをあたえることはダメってあれほどいったのに。これでジャックがしょくいんでもころしたりしたらかんぜんにトリコシグロウにおわるよ?」


「大丈夫だ!問題ない!我が攻撃全て受け止める!」

「それと取り越し苦労の使い方間違ってるわよ」


「あれ?そうだっけ?」


「あぁ。取り越し苦労の意味は無駄な心配をするとかそんな意味だ。この場合適切なのは骨折り損とかそんな感じだな」


「ほへ〜」


 こんな時にも狩人である2人は暢気に会話を楽しんでいた。まるで、施設内にいる無垢のことなどどうでも良いようだ。

 だが、ジャックが職員を1人でも殺せばそのまま処分されることになるだろう。しかし、阿修羅とピエロにとってジャックは殺されても特に問題はない存在だ。


「まぁ面倒だがしっかり暴走は止めてやるよ。こうなったのは僕が原因だからな」


「そうだね〜」


 考える素振りを入れず、阿修羅の自嘲を即座に肯定したピエロのことを半目で見た後、片手を前にかざした。


「我の本気をとくと見るがいい!怨霊!」


 阿修羅がそう叫ぶと至る所に空間の歪みが出来た。そしてそこから異形の存在である化物とは似て非なる怨霊と呼ばれる化物が無数に現れた。


「下級しか出してないからどれくらい効果あるか分かんないけど、まぁ《防衛》」


 阿修羅が命令を発すると現れた数百体にも及ぶ怨霊はそこから更に分裂し数千体まで数が膨れ上がると東京特殊留置所施設内の広範囲の箇所に分布するべく動き出した。


「さて、配置が終わったしどうなるかあぐらかいて観てる?」

「ま、そうね。ジャック君の出方も分かんないものね変に刺激して攻撃されたら面倒よ」

「うむ!我も賛成である!」

「ってことです」


「は〜いわかった〜」


 次の瞬間、ジャックは右手を振り翳し(ふりかざし)そのまま下ろした。すると、阿修羅に向かって無数の斬撃が飛んできた、しかし、その時には阿修羅の前に彼の怨霊と思われる存在が貫禄の仁王立ちをしており手に持った(しゃく)を前に突き出すと半透明な巨大な円盾が現れた。


「頼んだよ、後鳥羽」


「……分かった」


 後鳥羽と呼ばれた怨霊が作り出した円盾はジャックの黒い霧による無数の斬撃を無傷で耐え切った。そんな後鳥羽は阿修羅が命令したことに気に食わなさそうな表情をしたが少し間を開けて一応の肯定を示した。


「流石、僕の怨霊の中で最強の霊力を持っているだけあるね」


「……褒め言葉と受け取っておこう」


「別に皮肉じゃないよ。格闘がからっきしダメなことを言っているわけじゃないからね?」


「……フン」


「扱いづらー、さてと、凄い勢いで怨霊が減っているからさっさと肩付けないとね。西郷、《不殺》」


 阿修羅は後鳥羽と会話している間にも次々と怨霊を出していった。その中には後鳥羽のように時代外れでコスプレのようにも見える着物を着、刀を腰に引っ提げた大男がいた。


「御意」


 西郷と呼ばれた大男は空を蹴って霧の斬撃を避けつつ、ジャックの元までたどり着いた。それと同時に手甲を手に嵌め、ジャックに向かって打撃技を放った。だが、霧を翼状にして飛行できるジャックと空を蹴ってでしか宙を動くことが出来ない西郷とでは機動力の差があり、上手く交わされている。しかし、ジャックは西郷の相手の為に霧の斬撃を放つことが出来なくなり止んだ。


「あれ本当に気を失っているの?空飛べるからって西郷の攻撃を避けるのはマジでヤバいんだけど。ジャックって強すぎじゃない?」


「う〜ん……どちらかというとホンノウでよけてるようなうごきをしているね。ほらこうげきをみてからよけてる。そらがとべればうえにとぶだけでもじゅうぶんかいひできるからね。でも、カイブツインシガめざめてからすこししかたっていないこがここまでつよいとジシンなくすよ」


「ふーん、私には近接のことは分からないわね。それは彼の領分だったもの」


「カレねぇ。ピエロのまえのあいぼう(バディ)だよね?くわしくきいたことがないからききたいなぁ、なんて」


「そんなことより今は、戦闘に集中!」


「あ、はなしそらした」


 阿修羅は西郷だけでは足りないため、飛行可能な下級怨霊をジャックを取り囲むように出現させた。だが、ジャックはそれを霧と一体化することで包囲網をすり抜け、西郷の背後で霧化を解き、鎌を降った。だが、歴戦の猛者である西郷は霧化の前の視線で狙いを察知し、あらかじめ拳に霊力を練っておき、攻撃に対して腹部にカウンターを叩き込んだ。


「グハァ……ア゛ァァァァァァァァァァ!!!!!」


「まだ倒れないか、しぶといな。仕方ない、疲れるけどやるか。後鳥羽念のため《死守》だ」


「……ほう、あれをやるのか」


 後鳥羽が命令を受け、先程から展開されていた円盾は厚さも増し、何より力強さが増す、そんな錯覚をピエロは覚えた。


「《闇夜より出し 解放し顕現せよ その黒き穢れを祓い落とせ》」

「《地獄より囚われし肉体よ! 解放せんとする時! 肉体を朽ち果てたもう!》」

「《地獄より囚われし穢れなき魂よ 解放せんとする時 制限を取り払い給え》」

「《死朽発駆(しくはっく)》!!!」


 《死朽発駆(しくはっく)》を発動すると西郷の体が光に包まれた。だが、光が解けたらそこには以前と変わりない西郷の姿があった。


 《死朽発駆(しくはっく)》は普段、制限している力を制限時間付きで強制的に解放する技だ。その強化は凄まじく、発動前と発動後では別次元の強さへと至る。しかし、その代償は大きく、使われた怨霊は1分後に朽ち果てる。だからこの技はここぞという時にしか使われない。だが、阿修羅は高速移動する相手への対策は後鳥羽で敵からの攻撃をいなし、体力を使わせ、怪物化を解かせる耐久以外に行っていない。だから、体力が果てしなく多い暴走したジャックには奥の手を切らざる終えなかった。


「せきにんをとるってだけでふつうはそこまでするかな〜」


「いいんだよ。それより、ピエロ。捕縛用の縄持ってこい」


「は〜い」


 ピエロは阿修羅からの命令を素直の聞き、その場を離れて器具庫へ怪物因子を持つ存在用の縄を取りに走った。


「西郷、速攻で無力化をしてくれ」


「御意」


 西郷はこれまでで一度も《死朽発駆(しくはっく)》を使われたことがない。つまり、1分フルで活動が出来るのだが、いざという時に西郷のような強力な怨霊を失うのは困る。西郷は将棋に置き換えると飛車的存在だ。しかし、将棋と現実世界は違う。盤上であれば歩でも下剋上ができる将棋と違い、下級怨霊では強力な敵を倒すことは出来ない。


 だから、阿修羅は西郷に多少傷ついてでもいいからスピードを重視させる願いを出した。それを西郷も了承した。


 その結果、西郷は空を蹴って背後に回り螺旋抜手を放った。この技は周りの空気をも巻き込み放つ抜き手で左右のどちらに逃げても、巻き込まれた風によって体勢を崩される。


 それは、ジャックも一緒で右に移動することで辛うじて回避したにも関わらず体勢を崩された。その隙は決定的で強化された西郷は空中で軌道を180度変えてジャックの脳天に踵落としを叩き込み地へと落とした。


「良くやった西郷。戻っていいぞ」


「御意」


「で、ジャッくんをほばくすればいいんだよね?」


「あぁ、やっといてくれ。ちょっと寝てくる」


「わかったよ〜ジャッくんが起きたら起こせばいいよね?」


「それで問題ない」


 怪物因子、ジャック・リッパーは二度目の敗北を喫した。


ふっふっふ……連続投稿中だよ

4/8

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