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怪化物  作者: 平生
第二章
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第二十二話

 その後無事にジャック達の班は合流することができた。その時はお互いに苦笑し合うと言う中々にカオスな空間ができていた。ジャック達は特別仲が良いわけではない。ましてやお互い避け合っているため友達ですらない。だから時間がなくなり散策する時間がなくなったため奇しくも蔦根を除く班員は以心伝心したように安心し、宿場に戻ることを嬉しく思っていた。蔦根の心境はお察しの通りである。


 そしてその後も勉強、集団行動の練習、そしてキャンプファイヤーを行い校外研修の3日間がもう過ぎ去り日常が戻ってきた。だが、ジャックの日常は以前とは違い友人が一人増えていた。


◇◇◇


「僕は……どうすれば……良かったんだ……。

 なぜ……

 なぜ……

 なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ、

 

 なぜ!?


 どうして……僕は……僕は……人を殺したんだ!?


 再起不能にすれば良かったのか?


 アイツを出さなければ良かったのか?


 そうだ、アイツを、僕の体に眠るもう一つの魂を呼び出さなければ良かった。


 でも、


 それなら僕は


 死ぬってことじゃないのか?


 嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……嫌だ!


 死ぬのは痛い!

 

 死ぬのは辛い!


 死ぬのは悲しい!


 僕は幸せになりたいんだ!


 なのになんで悲しまなければならないのか!?


 お母さんを失い、お父さんも失い、お姉ちゃんも失い、新しいお義母さんまで失った僕なんだ!そんな僕が悲しむ世界などあっていいのか!?いや、良くない!だってそうだろう!?


 この世界には失った悲しみを知らない奴らが大勢いる!


 この世界には他者から生を奪っておきながら報いを受けない奴らが大勢いる!


 なのに……なんで僕だけ……。


 確かに世界は平等ではない。ましてや公平ですらない。力のある者が力のない者を虐げる、そんな世の中だ。そして、僕は以前までは無力だった。そして力を手に入れた今でも僕は社会的には未だに無力だ。そして力も決して最強なのではない。無垢より多少強いだけだ。


 力を手に入れても何も変わらないのならいっそんなことなら力なんて、怪物因子なんかいらなかったのに!


 それでも……そんないらない力で僕は一人救うことが出来たんだ。ほとんどアイツのおかげだけれど。でもそれは事実だ。


 僕にそこまでの力があれば、僕が最強であれば誰も死なずに済んだのかも知れない。でも僕にはそんな力はない。運命を呪ったところで何も変わらない。僕にはやるべきことがある。中途半端な力でも他の人にはないんだ。そんな僕が化物を狩らなければいけないんだ。


 だから今日も僕は精一杯頑張らなければ」


「ジャッくん……がんばってね」


 そんな会話を聞いていた一人の道化師はジャックに向かってエールを送った。だが、扉の外から漏れ出でいた声を盗み聞きしていた道化師の立ち位置からの応援はジャックには届かなかった。


◇◇◇


「先輩。よろしくお願いします」


「はい?」


「嫌だなぁ先輩。安田さんの話聞いてなかったんですか?」


「ん?」


 ジャックは先輩という言葉に違和感を感じていた。今まで自分は新参者でジャックより遅く狩人へとなった人はここ東京にはいないからだ。そしてその響きを地味に噛み締めていたことは顔を見れば分かるだろう。そしてそんな顔をしたジャックを不思議そうに眺める長身の男がいた。


「先輩ってどういう事?」


 心当たりがあった。しかし、それを本人の口から聞かなければ済まなかったのだ。この昂った気持ちに期待を込めてそう聞いた。


「先輩は先輩じゃないですか。僕はここでまだ新人なんですよ。コードネームはギーンって言います」


 ギーンから再度先輩と呼ばれたジャックは顔に出さずとも内心では大喜びしていた。だが、しばらくして落ち着くとギーンがなぜこんなところにいるのか疑問に思えた。


 今は校外研修から帰ってきており時間は20時過ぎ時だ。そんな時間に居るのは普通ありえない事だ。ギーンはジャックの代わりに狩人として務めを果たしてきた。それは今日も例外ではない。まぁ今日の場合代わりと言う言い方は間違いではあるが。


「そう言えばもう20時過ぎているよ。行かなくて良いのかい?」


「はい。安田さんに先輩を待つように言われましたから」


「安田さんが?」


「はい!」


 安田の真意は分からないが2人で化物を狩る方が負担は少ない。少々疑問は残るがとりあえず仕事をしなければと思った。


◇◇◇


 ジャックはギーンの能力に驚いていた。単体性能はジャックよりも弱い。だが、ギーンの真価はそこではない。ギーンの怪物因子は無垢、ないしは怪物を操ることにある。生きたものを降伏させるか気絶させるかして頭部を触れることによって発動する。それによりマニュアルではあるものの能力が使えたり数の暴力で袋叩きに出来たりする。


 だが、普段から怪物とは遭遇することはない。さらに、街の無垢を使うなどもっての外だ。だから、ギーンは捕虜の怪物を連れている。ただし国からの制限により3体までとされている。


 しかし、その3体はとても強力だ。

 一体はライフルと呼ばれる怪物だ。遠距離攻撃は当然強力だが両手足、さらに胸部に頭部にまである銃口による攻撃回数も恐ろしい。弱点といえば一つ一つは連射が不可能であるという点だろう。

 次はコードネーム異非だ。傷の回復が出来る。それによって仲間の回復をすることで継戦能力の底上げにも繋がるがこいつの恐ろしいところは回復には制限がないと言う点だ。具体的に言えば全快の者に回復をしても回復され続ける。それによって殺すことが可能だ。ただし、怪物因子には修復能力があるため怪物にはダメージを与える程度に止まる。

 最後はピエロが捕らえた覚醒済みの怪物、ブレード。女であるブレードはメタルが覚醒したのと同時に示し合わせたように覚醒した。だが、それまでのダメージが大き過ぎて覚醒するも一瞬で沈められた。しかし、覚醒しているから当然とてつもなく強い。メタルまでとは行かないが阿修羅を足止めできるほどには強い。


 それを同時に使うことが出来る。これならば〈死朽発駆〉を使った阿修羅に対して善戦出来る。最高のコンディションで挑めばの話だが。


 なのだが、その状態の阿修羅を相手に善戦出来る怪物など1人しか存在しない。それと匹敵するのだから化物の駆逐にジャックの出る幕はなかった。


「ね……ねぇ……僕って何かした方がいいかな?」


「先輩かぁ……まぁ僕がいるから大丈夫ですよ。ゆっくり休んでいて下さい」


 ますますなぜ2人で行動している意味が分からなくなった。だが、考えたら負けだと思いそのままギーンの三歩後ろを歩いていた。


 そうして狩っている間に夜が明け朝日が昇った。


「それじゃあ僕そろそろ学校へ行くね」


「はい。先輩頑張ってきてくださいね!」


「うん。今日はありがとうね。全部やって貰っちゃってごめんね?」


「いえいえ!これも後輩の務めですよ!」


 ギーンはジャックに向かって朗らかに笑いそう言ってのけた。


「本当にありがとうね。それとしっかり休むんだよ」


「はい!わかりました!」


 そうしてジャックは学校へと向かって行った。その後ろ姿を見届けたギーンの顔は終始笑みを浮かべていた仕事時間とは対象的にまるで汚物を見るそんな目をして表情が死んでいた。


◇◇◇


 学校に着いたジャックは早速教材を広げ勉強をしようと考えたがそれを妨げる者が来た。


「ねぇねぇ波山君。来月に何があるか知っている?」


「なんだよ狼讐。急にどうした?」


 普段と違いジャックが悪態を吐かなかったことに目を丸くし驚いていたがやがて口を緩ませ笑みを浮かべるとこう言った。


「文化祭だよ!リア充の活動が年内でも特に活発化するイベントの一つだよ」


 実に下らない。素直に付き合ってくださいと言えば良いものをわざわざ超遠回しな言い方で言った。当然そのことに気づくジャックではなかった。

 


 

 ギーンの元ネタが分かった人はスゴイと思う。あ、初見でだよ。名前はそのままだけど能力はだいぶいじったしなぁ……これは流石に分からないでしょ。


 阿修羅は阿修羅だしピエロはアレだけど。ギーンの元ネタは日本でそこまで有名じゃないですからね(私は調べるまで知らなかった)

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