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怪化物  作者: 平生
第二章
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第十九話

 次の日、ジャックはいつも通りギリギリまで仕事をする。それから学校に行く。


 だが8時ちょうどになると安田から以前、狩人になる時に渡された首輪の効果が追加され、怪物因子の力を強制的に抑え込む。


 しかし、ジャックは当然、首輪を破ろうなどと試したことはない。やってみたところでその情報が届くということを分かっているからだ。そんなものが届いてしまったら自分はどうなるかは分かったものではない。だから何がなんでもやらないだろう。


 それに、ジャック達の活動は首輪だけでなく、対怪物因子第一課、通称怪因課が常に監察している。怪しい行動を取れば沈静化が図られそのまま狩人連合組合に直行だろう。


 この前のメタルとの戦闘でも当然見張っていた。遠くからではあるが。そして、あそこまでの被害を出しておきながらお咎めなしだったのはジャックの能力が原因でないことを怪因課の人間が理解していたからだ。それに、ただでさえ人員不足な狩人を減らしたくないという思惑もある。


 怪物因子が8時から使用不可能なため、ジャックは間に合わせるために出来るだけ学校の近くで終わるようにしている。と言ってもそもそも狩人と無垢では通常の状態でも圧倒的な力の差があるわけだから、よほど遠くへさえ行かなければ間に合うだろう。


 そうして、ジャックは今日も社畜根性から優等生へと心身を鞍替えして校門を通るのだった。


◇◇◇


「さて来週は校外研修だが今からしおりの読み合わせをしたいと思う」


 ジャック達の担任が生徒達に向かってそう言った。高校生にもなれば忘れ物をしても基本無視。義務教育ではないのだから自分の尻は自分で拭えと言う社会に似たような感覚だと思う。


 まぁ、大人が一応何かとフォローしてくれるので社会とはそこまで似ていないと思うが。


「波山君。ごめん!忘れた!見して」


 ジャックが昨日不真面目でどうしようもないクズ認定した蔦根がそう頼み込んできた。正直、ジャックは内心では貸したくないなと思いつつも、貸さなかったら貸さなかったで何かと面倒だと思い、仕方なく机をくっつける。その時の顔と言えば酷いもので蔦根は苦笑いしていた。


「ありがとう。波山君」


 前髪が長く根暗気味の蔦根でも顔は可愛い方である。そんな蔦根に感謝をされれば嬉しくないはずがなかった。だが、それを隠すためにジャックは窓の外の景色を眺めた。といってもすぐに思考を元に戻すと、蔦根が不真面目だと言うことを思い出し、冷静になった。そしてやや軽蔑した目で一瞥した。


「さてそれじゃあ読み合わせをして行くぞ」


 担任が蔦根とジャックのやり取りが終わったのを見るや、読み合わせを開始した。それに気付いたジャックは担任が前の虐待野郎と違い親切で優しい人だと思った。事実、担任はこの学校でも生徒思いの良い教師として人気であり、同じ先生からも慕われている。まぁヘビースモーかであるのが玉に瑕なのだがそれすらもネタにされ愛されていると言えるだろう。


 読み合わせでは目的、行先、持ち物、時間割、そしてバスで行くために座席発表とグループ発表があった。


 座席は男女別であった。蔦根は心底残念がったが当然だろう。今の世の中、不純異性交遊とかには厳しくなっている。そんな中で男女混合など非難される可能性があるかも知れない。少しでもあればそのような可能性の芽は摘んでおく、それが学校の無難なやり方だ。

 頭髪、服装に制限をかけることと似ているだろう。


 だが、代わりに班は同じとなった。それを見るや、2人の反応は対象的でジャックは苦虫を踏み潰したような顔をし蔦根はと言えば出来るだけ無表情でいようとしているが口の端が地味に吊り上がっており普段、長い前髪で生まれた不気味さが増していた。


◇◇◇


「僕って1週間後の研修に行けますかね?」


 ジャックが聞いたのは当たり前のことだ。校外研修の実情は宿泊研修だ。そして場所は長野県だ。つまり、仕事ができない。それを認めてくれるかは分からないから安田に聞きにきたのだ。


「ふむ……行けますよ。2日後に狩人の研修生が規定年齢を満たすので貴方の補完をするように命じておきます」


 狩人研修生。それは怪物因子を生まれながらに持つ子供のことを指す。と言っても怪物因子を先天的に持つものは全体の半数ほどだろう。だが、その中でも怪物因子を自覚することが不可能な生後3年までに保護され訓練されたもののことを指す。


 だが、怪物因子を見つけ出すのはいまだに不可能であるが、怪物因子を所持する遺伝子を持った子供は必ず怪物因子が存在する。それは、既に証明されていることだ。


 安田が返答を渋ったのは狩人研修生制度が適用されたのが今回が初めてだからだ。そんな貴重なテスターに危険がつきまとう位置につけることはどうかと思ったが今のジャックを無碍に扱うことより必要性が高いのかと言われればそうではなかった。だから、ジャックの県外行きを認めたのだ。当然、現地の狩人や怪因課の監視は常時付くがそれでも他の狩人よりも破格の待遇だった。


「……ありがとうございます」


 出来れば校外研修は行きたかったので許可されたことは嬉しかったものの蔦根のことを思い出したためジャックの心境は複雑であった。

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