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怪化物  作者: 平生
第二章
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第十七話

 ジャックが部屋に戻る途中、憩いの場においてスマホと睨めっこをし、何故か急に叫ぶ阿修羅と眉を顰めつつも黙々と本を読んでいるピエロがいた。


「あの……今日はコンビニで何か買ってきたんですが……一緒に食べませんか?」


 ジャックは自分の方からここ3週間、疎遠になってしまった二人と距離を縮めることを目的として買ってきた。だが、心の奥底では疑念を晴らすことを目的とした、話を聞こうとしたのだ。


「ジャッくん!ありがとう!」


「我、感無量!ありがたくいただきますぞ!」

「大袈裟ねぇ。でもありがと」

「あ〜あ〜、ピエロはこんな風に買ってきてくれなかったなぁ。同じ後輩なのにどんな差?」


 阿修羅はピエロをチラ見しながらそのようなことを愚痴った。


 だが等のピエロと言えばそんな視線を一瞥すらせずどれにするか選んでいた。


「じゃあピエロこれにするね?いいよね?ジャッくん」


 ピエロが選んだのはキャラメルクレープだった。相当迷っていたが最終的にはそれにした。疎遠になる前はよく2人でご飯を食べていたからジャックにはピエロが実は甘党であり辛党であることを知っている。


 それってなんでもいけるってことではと思った読者もいるだろう。だが、ピエロは苦いだけの食べ物は食べれないのだ。ゴーヤやピーマンが全くもって食えないのだ。そしてニンニクは臭いから食べれないというより食わない。


「あ、ズルいぞ!なら僕はこれだ」


 阿修羅はロールケーキのチョコレート味を選んだ。ピエロのようにジャックに一応の許可を取ることもせず再度画面を睨みつけながら苦々しい顔でカキン!という澄んだ音を画面から発しさせると忙しなく清々しいような顔をした。


 そして残ったショートケーキはジャックが食べた。


「阿修羅さんって何をしてるんですか?」


「ん?あぁガチャ引いてるんだよ。僕はAUOが欲しいんだよ。だから回している。一応無課金だからな?」


 嘘だ。先程のカキンという音はなんだったのだろう?だが、ジャックはソシャゲをやったことがない。だからカキンというiPhone特有の音を出させたこともないのだ。


 ソシャゲはやったことがなくてもゲームはやったことがある。と言ってもまだ幼かった時友達の家で遊んだことが一度だけあるくらいだ。


 2人でレースを走っていて友達の子がレインボールートを選んでそれを2人で走っているとジャックは1位、その友達は12位だった。それ以来、その子と遊んだことはない。


「そうなんですね。ピエロ君は何を読んでいるの?」


 そんな苦い記憶を思い出しつつよく分からなかったのでジャックはピエロに話を振ることにした。


「え!?えっとね……ハナビだよ!ハナビ!」


「どんな内容なんですか?」


「えぇっとぉ……ふたりでコンビをくんでいるゲイニンさんのおはなしだよ」


 嘘だ。そんな文学賞に選ばれる本をピエロが読むわけがない。読んでも良く分からないし途中で飽きてしまうからだ。それより内容も軽いライトノベルを読むに決まっているし、なんなら漫画の方を読む。


 だが、ピエロが今読んでいた本はそんなものではない。ピエロが今読んでいた本はそんな高尚なものではない。とっても薄い本だった。それは本当に。本をピエロと似たような容姿をする技術者によって大きさを文庫本にし彼の手作りのブックカバーをつけていつも持ち歩いている。

 

 その本でピエロは絵と文字を楽しんでいた。それはもう。


「そうですか。そういえば、明日から僕学校に通うことになったんです」


 突然自分語りを始めたジャック。そんなジャックを2人は「嘘だろ。まぁ嘘トークで盛り上がるのも悪くはない。最初に嘘ついたの(ピエロ)だしね」というクズい想いで聞き流していた。


 だが本気だ。ジャックの話は始めから終わりまで全て本当の話だ。その中で日々の心配や無茶振りをする阿修羅への愚痴、ピエロには戦いの時のモーニングスターの扱いが前衛の僕に当たりそうで怖いなど2週間前までの心境を語っていたのだがそれすらも聞き流した。


 というより途中から全く聞いていなかったので突然話が変わったことなど知る由もない。


 なぜ話が変わったのかと言えば、実は気付かず阿修羅が飲んでいた飲み物を気づかずに喉に流し込んでしまったのが原因だ。話して行くうちにヒートアップし気づいた時には既に飲み終わり缶を投げ入れていた。


 だが阿修羅も既に2本飲み干している。つまり、出来上がっていた。だから、ないことに気づかず、先程からスマホはカキンカキンうるさくなっている。


 ピエロはと言えばもう自室に戻っている。満足したような顔をして部屋に戻っていった。読み終わったため次の本を手にしにいったのだが、わざわざ戻ってくるようなことはしないだろう。


 ジャックの思惑は外れたが、心の距離を縮めることはできたような気がし、満足そうな顔で酔い潰れた。


◇◇◇


「え!?あのはなしマジだったの!?」


「うんそうだけど……まぁいっか」


 ピエロに疑われていたことにジャックはショックだったが、どうでもいいと思いその思考を切り替えた。


「じゃあきょうからしごとはどうするのさ?」


「阿修羅さんが3年間、シフトが僕のところを補う形になるみたい。それとしばらくはそれで固定だって安田さんが言ってたよ」


「ガビーん……」


 ジャックと一緒にいる時間が限りなくゼロに近くなるためピエロはとてもショックを受けることとなった。2人の信頼関係は昨日のことで高まっていた。というのも、ジャックが勝手の避けていただけなのだが、そんなことをジャックは気づかない。


「それじゃ行ってくるね」


「いってらっしゃい……じゃなかった!いってらっしゃい!」


◇◇◇


「じゃあ転校生の紹介をするぞ」


 クラスは騒然としていた。それもそうだ。このクラスの情報通が今日はろくに仕事をしなかったのだから。いやこれは少し語弊がある。あえて仕事をしなかったのだ。


「誰が来るんだろうな?」


「誰だろうな。でも女の子じゃねぇらしいぞ」


「えぇ〜マジ〜?それどこ情報?」


「通太郎だよ。通太郎。だから信憑性が高いぜ」


「そんなの聞いてねぇよ!仕事してくれよ通太郎!」


「いやぁこれを伝えたら伝えたで面倒なことになりそうですからね〜だから伝えなかったんですよ〜」


 こんな頭の悪そうな会話がポツポツ起きていた。だが仕方ないだろう。転校生が来るなどそうそうないのだ。それも梅雨であるこんな時期に来る転校生など珍しすぎるであろう。そんな今日も雨が降っていた。


「静かにしろよ〜それじゃ転校生入ってきていいぞ〜」


 ジャックはぎこちなく入ってきた。


「じゃあ自己紹介頼むわ」


「えっと……波山霧嗣です。よろしくお願いします」


 ちなみにピエロが持っている本は児童用の絵本だったりする。

 当初の予定だと読者の皆様が思い浮かべたであろう、うっすい本の予定だったのだがキャラ崩壊してんなぁと思いこうした。

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