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怪化物  作者: 平生
第二章
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第十六話

 ジャックはあれからも化物を狩り続けた。その惨状は凄まじいの一言に尽きた。ジャックはひたすらに化物を狩ることに徹した。何も考えずに。

 

 いや、自ら考えることを閉ざしてひたすらに己の力を振るった。そうでもしなければ余計なことを考えてしまうから、ピエロと阿修羅に対して生まれた疑念が膨らんでしまう。唯一の友達とジャック自身の生きる意味を作ってくれた恩人を疑うことはジャックの良心によってはばかられた。


 だから、仕事に打ち込むように、何も考えなくてもいいようにするために日々化物を狩るようになったのだ。それも一人で。


 今の彼ならば化物が何十いようが関係ない。先日のリッパーの現世へ出たことにより霧の扱いが上手くなっている。それはもう格段に。だから、以前のようにピエロや阿修羅、その他のメンバーと一緒にバディを組んで行動することがなくなった。本来あるべき形に戻ったと言えるだろう。狩人は年中を通して人員不足に陥っている。だから、バディで行動するという非効率的なことは好まれない。なので一人で行動していても実力があれば問題ない。


 そして、今も化物を狩った。必要以上に本来化物のある場所を攻撃し続けた。何かに取り憑かれたように。ジャックの目を見た人がいれば恐怖心を煽られるだろう。目に光がなく、かと言って感情が宿っていないかと言えばそうではない。目の周囲にある筋肉が強張っていて怒りをあらわにしているように見える。不気味で潜在的恐怖心を煽るような目をしていたのだ。


 彼は一人で行動している。その状況を怪物が狙わないわけがないだろう。だが、彼は結果としてメタルを殺してから一度も怪物に襲われたことはなかった。


 理由は二つある。一つはジャックが覚醒したメタルを殺したということが怪物の間で情報が出回っている。そもそも怪物因子が覚醒した存在などは極めて稀有である。怪物の中で悪名高き三顔、阿修羅ですら未だ覚醒には至っていない。それを一塊の下っ端怪物がやってのけたのだ。そんな男を一発で殺したジャックのことを知ったら手が出せなくなるのは当然の帰結だ。


 二つ目が、そもそも、怪物は積極的に狩人を襲ったりしないのだ。もし、狩人VS怪物のように単純な構図であったら怪物は徒党を組み何度でも戦いを挑むだろう。だが、実際はそんなことはない。怪物は一枚岩ではないのだ。それは複雑に入り組んでいる。だから、もし、狩人を襲い勝った怪物がいたとしたらそいつは相応に疲弊している。それを襲う怪物がいないわけがないだろう。別の派閥に所属する怪物は商売敵のようなものだ。一般社会に無垢として潜り込んでいる怪物ならば、仲間ではない同じような存在は厄介なことにはなっても得することはない。


 そのようなことになるのは怪物の就く職業が裏社会のものばかりだということなのだが、それを知る狩人は少ない。知っていてもしょうがないからだ。裏社会の捜査を専門としているのは警察だ。そこに狩人が土足で上がり込むことはできない。


 当然、新米狩人のジャックも知るわけがないし、知ったところで特に何もしないだろう。


 そんな彼はまたもや化物を狩った。同じような現場がいくつも見られるだろう。それも今日のみでも。コンクリートは剥がれ地面が剥き出しになり、その地面ですら無数の斬撃の跡が残っている。


 ジャックは今日の仕事を終え、安田と初めて出会った狩人連合組合本部へと戻った。その時の彼の両手には3人分のコンビニスイーツがあった。


◇◇◇


「へ?」


「ちゃんと聞いていましたか?」


「聞いていたからへ?って言ったんですよ。なんで急に学校へ行く許可を出すんですか?なんか裏があります?」


「ないですよ。貴方はまだ若いです。それに学生時代は人格形成においてとても大事なものです。まぁ年齢的に既に手遅れかもしれませんが。行っておくことに損はありません。行ってきてください」


 ジャックは突如として安田から学校に行く許可を与えられた。それはジャックの働きを組織側が認めていることに他ならないのだがジャックはそのことには気づかなかった。


 ジャックとしては裏があることを疑わずにはいられない。他者からものを与えられるのだ。相応に疑わなければならないだろう。


「安田さん。それは他の狩人の人達もそうだったんですか?」


「いいえ。そもそもこの組織が設立されたのは10年前です。今いる狩人は貴方を抜いて当時のメンバーばかりです。唯一、5年前に狩人になられた人は年齢が年齢でしたから。なので、狩人でありながら学校に通うのは貴方が初ということになりますね」


 そもそも学校に何かがあると疑う方がおかしいのだが、疑念に満ち満ちているジャックは何事にも疑ってかからなければ気が済まなかった。


 だが、いくら疑っても仕方がない、ジャックはそう思い次の質問をすることにした。


「学校に行っている間はパトロール、どうすればいいんですか?」


「夜勤でやっていただきます」


「夜勤って……学業とそれ、両立不可能だと思うんですが?」


「大丈夫だと思いますよ。それなりに時間は空くと思いますしその内に休息をとるなりすればいいのではないでしょうか?」


 無茶を言っていることは安田も承知の上だ。宿題に取り組みつつ仕事をする。これは容易にこなせることではない。だが、学校に行くことが今のジャックには必要に思えた。それは漠然と。だから行くことを勧めるのだ。


「ですが、最終的に行くか行かないか決めるのは貴方自身です。どうしますか?」


「……学校に行きます」


「そうですか。それは良かったです。では、貴方にこれらを」


 何かが詰められた大きい箱をジャックへと渡した。


「これは?」


「以前通っていた高校では貴方は転校したことにしています。なので、貴方からはこれから東京都立第一高等学校に通ってもらいます。それは、この学校での必需品です。現文、古典は以前と全く同じ教科書も持ってくる必要があるそうなので気をつけてくださいね」


「は、はぁ」


 こうしてジャックは東京都立第一高等学校へ通うこととなった。


◇◇◇


「死者1082名。重傷者58名。軽傷者1名ですか。凄まじい戦いが起こっていたのですね。それを制した彼は……まさしく怪物と言えるでしょうね。ハァァ……。こちらの対応もそれ相応にしなければないのは面倒ですねまったく」


 再び安田からため息が溢れた。

 書いていて思ったことをここで述べたいと思う。


 急展開過ぎないか!?何やってんだァァァ!へいせいィィィ!(グズママジリスペクト)

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