第一話
別にエタってなどいない。ただ、最初にこれを投稿する予定だったのだ。順番がズレただけだ。本当だからな?
それとあらずしはネタバレを避けるためだ。タイトルもそうだ。良いタイトルが思いつかなかったのもある。
(僕は生きていてはいけないんだ。僕は死ぬべきだったんだ)
「悲痛な顔をしているね」
「そう見えますか。お願いします。僕を殺してください」
「不可! 貴様を殺すことなど我にはできん!」
「何故ですか?」
「貴方は怪物でしょう?怪物を殺すには怪物の力が必要なのよ」
「それに、お前はこれから僕の同僚になるんだから。殺す理由なんかあるわけないんだよ」
「オェェ……」
彼は胃の中が空っぽになるほど吐いた。
◇◇◇
「であるからして皆さんには本校では勉学に励み、未来を掴み取って欲しいのです」
長いので定番な校長先生の話もようやく終わりを迎えた。彼、黒崎霧嗣は退屈をしていた。それは一概に校長が原因だとは言えない。人生そのものに退屈を感じていた。しかし、彼には自分の境遇を変えるだけの行動力がなく、今の人生で諦めていた。
◇◇◇
「では自己紹介をしてもらう」
入学式も終わり、これから1年間クラスメイトとなる生徒たちと、担任との顔合わせをするために各クラスに別れてホームルームを行っていた。そして、これまた定番の自己紹介を担任は生徒達に命じていた。
彼の家族は母親の一人しかいない。前は四人家族で暮らしていたが父親、姉ともに変死したが為に母親がシングルマザーとして彼を養っている。高校を卒業したら母親に少しでも楽をして欲しいと思い就職することを心に秘めている。というのも彼の母親は大学に進学することを願っている。だからまだ彼は母親には言っていない。言う勇気を持てていないのだ。
「では次、7番……おい、7番、早く返事しろ」
「先生。この子気絶しています」
「あ゛?仕方ねぇ。放っておけ。はい次、8番」
高校一年生の彼の担任は体育会系の学校を出ている。無理に起こす程野蛮ではないにしろ、保健室へ行くことを恥だと思っている節があり、生徒には極力、保健室を使わせようとしないことで有名だ。校長に苦言を呈されることもしばしばあるのだが、根性論でなんとかなると本気で思っている。
そのせいで彼は病弱で倒れてしまったのにそのままスルーされてしまった。
◇◇◇
ぶっ倒れて担任に目をつけられた入学式から早一ヶ月が経過した。その間も彼は一度も休まず学校に来続けたのだが、病弱故に体育は全て見学し、時々、倒れては保健室に運ばれるのだが担任が途中で止めると言ったことがあった。そんな今日も
「病弱〜今日は倒れるんじゃないぞ〜ガハハハハハ!」
「は、はい!」
笑えないジョークを担任が言う。なにがそんなにわらえるのかが彼を含めたクラス全員に分からなかった。それでも、今日も懲りずに担任は彼を弄った。彼は、毎日のように弄られており時々虐待まで受ける始末だ。クラスメイトはそんな彼に対して同情しているが、虐待に関して教育委員会に告げ口をするとどうなるか分からない為行動には移れない。それに、このクラスには委員長キャラが居なかったのも理由の一つであろう。
「……今日は倒れずに済んだ。でも、明日からまた学校か……嫌だ……死なないかなアイツ……」
「……だけど、僕の手は、汚したくない……」
そんな1日を今日も終えた彼は下校中に愚痴を独り言で終始こぼし続ける程に病んでしまった彼は家に着くといつもとは違い早帰りの母親に対して、普段誰もいない家に対して言っているようにルーティーンとなっている文言を言った。
「ただいま……」
「おかえり、ねぇ元気ないけど、どうしたの?学校で何かあった?」
「別に……それより母さん、部屋で寝ているから、ご飯ができたら起こして」
「ちょっと。本当のことを教えて!」
(母さんに迷惑をかけたくない。だから僕は……言わない)
母親の悲痛な叫びも彼には届かず、無視をして部屋に入りベッドに突っ伏した。
◇◇◇
5時間ほど経った頃。既に日はすっかり落ちて夜となっていた。しかし、母親は彼のことを起こしに来なかった。
「あれ?もうこんな時間だ。なんで母さんは起こしに来ないんだろう?」
「……まさか……僕のことが嫌になって……出て行っちゃったの?」
そう思った彼はすぐに階段を降り、リビングに出た。
「……嘘だろ……オエェ」
そこに広がっていた光景は。
「母さん、なんで……なんでだよォォォォォ!」
何者かに惨殺された母親の死体とそれに群がる、異形の形をした生物だった。
「離れろ!母さんから離れろ!」
「グルルルルル……ガウ!」
「う、腕がァァァァ!!!」
彼は必死に異形の存在を母親の死体から引き剥がそうとしたが、一向に離れることなく、逆に腕を噛みちぎられた。
「ぼ、僕の腕がァァァァ……」
「……」
彼は腕が噛みちぎられた痛みと、母親が殺されたその死体を食いちぎられている光景を目にしたショックによって倒れた。
だが、刹那の瞬間、気絶し倒れた彼の肉体が起き上がり溜息をついたと思ったらケタケタ笑い出した。
「ハァァァァ、またかヨォ。先程まで15年ぶりの現実世界を味わった余韻に浸ってたって言うのにヨォ〜。まぁいい。また戻って来れたことに感謝ヲォ」
「カカカカカァ!こりゃあ化け物じゃねぇカァ!」
「グルルルルル……クゥーン」
「ん?降参の意を示しているのかァ? ホォ、コイツァ驚いたァ。化け物の癖にそれなりに知能を持っているタァ……そろそろコイツにも怪物因子が宿るってことカァ? カカカ!こりゃあもうちっと待つとするかァ。そこの女の肢体でも食えば何かしらの因子が宿るだろウ」
「うンゥ?なんダァ? 懐いてんのカァ? 撫でて欲しいのカァ……」
男は恭順の意を示した異形に何か変化が起こるのを待った。そんな男に異形の犬のような頭部を持つものは擦り寄り、撫でることを頼んだ。すると男は
ザクッ!
突如、霧が発生したかと思えば次の瞬間には食われたはずの右腕と漆黒の巨大な鎌を振りかぶっており、そのまま異形の首へと振り下ろされた。
「誰が獣のやることを信じるというのダァ。大方、俺が油断したところを食おうとしたのだろウゥ」
霧を纏う男の姿はまるで死神のように恐ろしく不気味だった。異形の存在を抹消した男の元へ突如全く似ても似つかない二人組が現れた。
「ピエロとうちゃーく! ってひどいことになってんなぁ。ってあれ? カイブツがいるっていったほうこくきいてないんだけどぉ」
白塗りペイント、右目の周囲に青い星マーク、唇は口紅を塗ったように赤く頭髪も赤色、いわゆるピエロのような場違いな格好をした幼児が現れた。その子は愉快だという感情を押し殺さず、表面に表していた。死体があるのを知っていながら。
「コイツは大方今誕生した怪物ってところだろうな。おい、ピエロ。殺しちゃダメだよ。生きて捕縛して事情聴取と行こうじゃないか」
「りょうかーい! セーンパイ!」
ピエロと呼ばれた幼児は腰を落とし臨戦体制を取ると不敵な笑みを浮かべた。
初日中に七話分投稿します。一応日を跨いで一話投稿します、0時に。
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