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宇宙漂流記  作者: 夜神 颯冶
時は遡ること数時間まえ
9/17

 

放心(ほうしん)した(よう)にただその中で、(すぺ)てを忘れ()かされてゆく。


どれくらいそうしてたか、

ふっと誰かに見られているような、

不気味(ぶきみ)感覚ふあん(おぼ)えた。


それは潜在的(せんざいてき)()もった不安の(あらわ)れだろうが、

それでもキャロンドはその不安が(ぬぐ)えず、

曇ったガラスを()いて部屋(へや)(のぞ)き見た。


室内は何も変わらず簡素(かんそ)で静まり返っていた。


気のせいかとほっとして目をそらした瞬間、

目の(はし)に何かの異質(いしつ)(とら)えた。


一瞬、写った違和感(いわかん)を思い返す。


ポッドの前に脱ぎ捨てられた衣服。


それ以外は何も変わらず部屋は簡素(かんそ)であった。


そして部屋の外に続く入り口のドアは・・・

開いていた。


えっドアが開いている!?


見間違(みまちが)いだろうとは思うが、

なかなか確認(かくにん)する勇気がもてなかった。


キャロンドはしばし思い(なや)んだ(すえ)

恐る恐る(ふたた)(すり)りガラスの(ドア)(ほほ)をつけ、

外を(のぞ)きみた。


(ほほ)から伝わる()やりとした硬質(こうしつ)感触(かんしょく)が、

恐怖を(あお)る。



室内のドアは閉まっていた。



途端(とたん)安堵(あんど)と同時に、

気恥(きは)ずかしさが()()げた。


何をしてるんだ自分はと言う自(じかい)羞恥(しゅうち)

目を(つむ)る。


そしてガラス()からゆっくり頬を外した瞬間、

キャロンドはその影を(とら)えた。


ポッドの前に立つ人の形をした影を。


恐怖と同時にやっぱりと言った考えが(よぎ)った。


やっぱりこれは夢なんだと。


自分がこんな分不相応(ぶんふそうおう)な事に、

(えら)ばれる(わけ)がないと。


ただその都合(つごう)の良い夢は今、

悪夢となって()めようとしていると。


影はゆっくりと()りガラスに近付き、

中を(のぞ)き見る目と目があった。


影はガラスに人の輪郭(りんかく)(シルエット)を(かた)どり、

それが男だとわかった。


だが人物が特定できるほど鮮明(せんめい)ではなかった。


キャロンドは本能的にバストを隠し、

それを見つめた。


人影はポッドの外で何かを操作していた。


「誰?」


その言葉に外の人物は初めて声を発した。


「扉をロックした」


その内容に、

この人物は会話するつもりがないと気づいた。


ポッドの中で噴出(ふんしゅつ)し続けるシャワーの温度が、

急速に上がり熱湯(ねっとう)に変わっていくのを感じた。



「開けて、お願い、開けなさい」



自分でも(わけ)(わか)らず思考停止(パニック)になりかけていた。


 

 

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