表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙漂流記  作者: 夜神 颯冶
タイムクライム  
16/17

12:45

 

僕は少女にうながされるまま、

その優雅ゆうが浮遊ふゆうするリボンの蝶を追いかけた。



コローニー内は基本、

かく区画くかく区切くぎられた構造こうぞうになっている。



万一まんいち隔壁かくふき破損はそんして、

空気が流出りゅうしゅつするような事態じたいが起きたときに、

その区画だけ閉鎖へいさすれば、

空気の流出を防げるようにするためだ。



他のフロアーに移動される前に見つけないと。



この吹き抜けのフロアーにはほとんど柱がない。



景観けいかんを良くするためだが、

地球上では重力があるためこうはいかない。



重力の低いコロニー内ならではの建造だ。



そして柱のほとんどない吹き抜けのこのフロアーを、

チェンバーで移動するのにはむいていない。



ほどなくして宙を舞う泥棒少年を発見した。



宙を見上げる人々の視線の先に少年はいた。



その先には閉鎖区画を区切る壁が鎮座ちんざしていた。



追い詰めたぞ少年。



閉鎖区画を渡り次の区画に行くには、

壁に備えられた扉から抜けなければいけない。



地上に降りてきた時が捕まえるチャンスだ。


そう思った矢先、少年はおもむろに、

近くの柱にチェンバーのワイヤーを打ち込む。



そのままワイヤーを巻かず、

柱を基点に180度回転していた。



そしてワイヤーを外しこちらに飛んでくる。



そのまま飛んでくれば、

ちょうど着地地点で捕まえられるが、

それは少年もわかっている。



再び方向転換するために少年は、

チェンバーを撃ち出していた。


だがその撃ち出されたワイヤは、

違う角度から撃ち出されたチェンバーの

ワイヤーと空中でぶつかり、

目標を見失い落下していった。



違う角度から飛んできたワイヤーの先には、

空中に向けチェンバーをこまえたままの、

全身をフードでおおった人物がたたずんでいた。



まさかねらったのか!?



相当な射撃訓練をつんでなければ不可能だが。



空中でバランスを失った泥棒少年は、

慌てて巻き戻そうとするが間に合わず、

したたかに床に激突し、

そのままバウンドしながら僕の足元まで

転がって来て、ようやく止まった。



自業自得じごうじとくとはいえお気の毒に。


僕は転がったままの少年の腕から、

チェンバーを取り上げ自分の腰に戻した。



その間も少年は動かない。



まあ重力が稀薄きはくなコロニー内では、

怪我ケガはしてないだろうが。


一応声をかけた。



「大丈夫か?」



少年は小さくうめきこちらをにらんだ。



「敵の情けは受けねえ」



敵って・・・



チェンバー盗んどいて勝手に敵対視てきたいしされるとはね。



そんな僕たちの元に、

先ほどチェンバーを撃ち落とした、

全身フードの人物が歩いて来た。



その人物がフードの頭を脱ぐような素振そぶりをすると、

映像のフードが外れその素顔が見えた。



見えたと言っても、

口元はベールで隠されたままだったが。



小麦色の顔立ち、卵型の輪郭、

ひたいに赤い点をつけた女性だった。


その服装と顔立ちから、

すぐにインド人だとわかった。



『廊下を走るのは感心しませんよ』



彼女の一声は実にまの抜けたものだった。



ここは廊下じゃないし、

走ると言うか飛んでたんだけど。


いやそれ以前に、

俺のチェンバー盗んで逃げてたんだけど。



突っ込みどころが多過ぎて対処できないでいると、足下の少年が先にそれにこたえた。



「誰が決めたんだよ!」



『あなたの国には交通機関がありませんでしたか。

 これは失礼しました。

 まさかジャングル出身のおサル様だったとは、

 思わなかったもので」



どこまで本気なのかわからない口調でそう言う彼女。



不思議な事に彼女がしゃべつど

口元を隠すように空中に浮かんだベールが、

彼女の吐き出す息に呼応こうおうして揺れていた。

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ